日本経済新聞の北関東版に八ッ場ダムの計画変更について、Q&A形式で解説記事が載っていました。
 国交省が計画変更をなぜ、今の時点で提示したのか、という質問に対して、年末の来年度予算に八ッ場ダムの本体工事費を盛り込むためには、関係都県の同意手続きを9月議会で行ってもらわなければならないので、ギリギリのタイミングであると説明されています。関係都県の中では、これまで東京都議会のみがダム反対勢力が優勢でしたが、7月の都議選で民主党議員の多くが落選したため、関係都県すべてでダム推進派が優勢となったため、都議選と参院選を経て、国交省としては本体工事費を要求する条件が整ったと判断したものとみられます。

 また、地滑り対策費などの事業費増額を計画変更に盛り込まなかった理由として、国交省は「検証では最悪の場合、8カ所で(地すべり対策が)必要としているが、実際に8カ所とも必要なのかゼロで済むのか現時点ではわからない」と説明している、と解説しています。
 現時点では地すべり対策の具体的な内容がわからないことは事実です。これから地すべり対策のために現地で詳細調査を行うことになっているからです。水没予定地住民の移転代替地の安全対策についても同様です。
 これらの安全対策は、民主党政権下の検証作業で必要とされたものです。しかしその安全対策ですら、地質の専門家らから不十分との指摘があり、ダム湖湛水による災害誘発の危険性を根本的に解決するものとはいえないという指摘があります。Q&Aに書かれた国交省の説明が事実であるのなら、事業費増額は必至です。
 国交省の当座の目的は財務省に本体工事の予算をつけてもらうことであり、本質的な問題は先送りというわけです。

◆2013年8月29日 日本経済新聞北関東版

 -なるほど北関東 八ッ場ダム 概算要求計上直前に計画変更 事業推進 世論に配慮? -

 国土交通省は凍結している八ッ場ダム(群馬県長野原町)の本体工事を2014年度予算の概算要求に盛り込んだ。昨年の政権交代以降、着々と地ならしをしてきたが、わかりにくいことも多い。
 
Q 概算要求への計上は何を意味するのか。
A 国交省が本体着工の方針を示したことになる。財務省などとの調整を経て、政府として本体着工を決定、年末の予算案に盛り込む見通しだ。

Q 要求に向け、国交省は準備を進めてきた。
A 一番のポイントはダムの基本計画の変更だ。現行計画では完成時期は15年度。関係者からも「2年で完成は無理だ」との声が出ていた。実現不可能な基本計画では、ダム本体の予算計上は難しいといわれており、群馬県の大沢正明知事はかねて早期見直しを求めていた。国交省は8月初め、完成時期を19年度とする計画変更の手続きを開始した。

Q 手続き開始がこの時期だったのはなぜ。
A 政治的な思惑も透けて見える。大型公共事業については依然、国民の抵抗は強く、八ッ場ダムはその象徴といえる。基本計画の見直しは「事業推進」を意味するため、世論に配慮し、参院選後に持ち越したとの見方が有力だ。ただ、計画変更には下流都県の知事の意見と議会の議決が必要になる。年末の予算編成を考えるとギリギリのタイミングといえる。

Q 変更した内容でわかりにくさも指摘されている。
A 国交省は民主党政権時代の11年に同ダムの検証をしている。このなかで本体の入札手続きの開始から完成まで87カ月程度必要としている。この通りなら即座に手続きを始めても19年度中には完成しない計算だ。
 事業費では地滑り対策などで149億円、工期遅れに伴い52億円の追加が必要と指摘しているが、今回の見直しでは事業費は約4600億円のまま添え置いた。

Q 国交省はどう説明しているの。
A 工期の87カ月は最長を想定したものとしている。すでに本体関連の入札手続きを5月に開始しており、「工期短縮で対応可能」という。
 地滑り対策では「検証で必要としているが、実際に8カ所とも必要なのかゼロで済むのか現時点ではわからない」と事業費を追加しなかった理由を説明する。工事の遅れに伴う費用増も「工期短縮やコスト圧縮で吸収できる」という。
 下流都県は事業費の一部を負担しており。費用が膨らみ負担が増えることを警戒している。これに配慮し、基本計画では事業費を据え置いたとの見方もできる。最終的に事業費が膨らむ可能性は否定できない。