熊本県阿蘇に計画された国直轄の立野ダムの予定地は、本体工事着工直前の状況にありながら、熊本地震で大きな被害を受けました。
 国交省はこれまで、立野ダム予定地には断層はないと説明してきており、熊本地震以降も「建設に影響はない」(国交省九州地方整備局・坂井佑介河川計画課長)としていますが、本当に大丈夫なのでしょうか。
 立野ダムに反対する市民団体「立野ダムによらない自然と生活を守る会」によれば、国交省は大規模な土砂崩壊があったダム本体予定地周辺に重機を入れて土砂搬出を始めているとのことです。
 最新の情報は、同会のフェイスブックでご確認ください。
 https://www.facebook.com/Stop.Aso.Tateno.Dam/?rc=p

 立野ダムの問題を取り上げた朝日新聞の記事をお送りします。

◆2016年5月24日 朝日新聞
 http://digital.asahi.com/articles/ASJ5M7QWBJ5MPTIL03Z.html?rm=637
ー南阿蘇のダム、計画は続行? 一帯で土砂崩れに不安の声ー

 熊本地震で大きな被害が出た熊本県南阿蘇村には、本体着工間近の国土交通省の立野(たての)ダムがある。一帯では土砂崩れが起きており、国交省は土砂を撤去して安全性を確認し、本体工事の着手について再検討する、と説明する。だが、不安を訴える人たちもいる。

 立野ダム建設予定地は、崩落した阿蘇大橋から約2キロ南西にある。阿蘇山のカルデラから有明海へ注ぐ白川沿いの崖は崩れ、川床は土砂で覆われている。遠隔操作できる無人の重機が土砂を取り除いていた。

 国交省によると、本体着工に向け、川床に仮排水路を掘削していた。4月16日の本震で、工事用道路や建設機械が埋まった。工事事務所の担当者は「余震や雨の度に作業を止めざるを得ず、先行きが見えない。梅雨入りまでには終わらせたいが」とため息をつく。

 熊本地震では布田川(ふたがわ)断層帯が活動し、マグニチュード(M)7・3を観測した。断層帯の北端、北向山(きたむきやま)断層はダム建設地の約500メートル南東を走る。国交省はこれまで「断層は建設地へは向かっておらず、考慮すべき活断層はない」としてきた。

■安全性に疑問の声

 地震後、ダムの安全性をめぐって疑問の声が上がる。

 自然破壊などの観点から建設に反対してきた市民ら約300人でつくる「立野ダムによらない自然と生活を守る会」は4月末、国交省に建設中止を要請した。中島康代表は「多くの崩落が起き、完成後であればダムの地盤が崩れていた可能性もある。危険な場所に造るべきではない」と話す。

 阿蘇火山博物館の須藤靖明・学術顧問も「建設地周辺は地質的に弱く、近くに活断層があることを考えれば、建設には非常に危険が伴う」と指摘する。

 地震や活断層を研究する産業技術総合研究所(茨城県)の吉見雅行・主任研究員は現地調査をし、布田川断層帯に並行する地表のずれを益城町などで確認。「北向山断層に並行するずれがダム付近にないか、調査した方が良い」と話す。

 国交省九州地方整備局の調査では、建設地から約500メートル南東の道路上に70センチほどの横ずれを確認したが、坂井佑介・河川計画課長は「設計時に調査済みの北向山断層の一部とみられ、建設に影響はない」。土砂崩れについても「表層の崩落であり、ダム本体を支える岩盤に異常はない」と説明する。

 坂井課長によると、耐震設計上、現場の地質や過去にあった地震記録から地震は想定していたというが、工事用道路の土砂を取り除いた後、空中写真の判読で地形のずれを調べ、岩盤も改めて調べる方針。坂井課長は「今回の地震を調査対象に加えて安全性を確認し、本体着工について再度検討する」としている。(玉置太郎)

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 〈立野ダム〉 熊本市など下流域で氾濫(はんらん)を繰り返してきた白川の洪水被害を防ぐため、国土交通省が1983年に事業を始めた治水ダム。総事業費約917億円で、2022年完成予定。堤の高さ約90メートル、長さ約200メートル、総貯水量は約1千万立方メートルで、豪雨時に一時的に貯水し、下流へ流す水量を調整。今年度は約42億円を計上し、本体工事に着手する計画だった。