国交省近畿地方整備局は淀川水系の大戸川ダムについて、凍結から事業継続へ、大きく舵を切ろうとしています。

 国土交通省近畿地方整備局 大戸川ダム工事事務所 http://www.kkr.mlit.go.jp/daido/what/jigyo.html

 半世紀前から計画されてきた大戸川ダムは、水没予定地の住民が移転を完了し、関連工事に着手していながら、2005年、近畿地方整備局によって事業凍結の方針が発表されました。(「淀川水系5ダムについての方針」平成17年7月1日、国交省近畿地方整備局
  
 近畿地方整備局のこの時の方針転換は、同局が2001年に設置した淀川水系流域委員会による提言を受けたものでしたが、大戸川ダム事業に参画していた京都府と大阪府が「利水」(都市用水の開発)からの撤退を表明したことが大きな要因でした。
 地元を抱える滋賀県では脱ダム派の嘉田由紀子知事が翌2006年に誕生し、流域の山田啓二京都府知事、橋下徹大阪府知事もダムへの消極姿勢をとってきたため、大戸川ダム事業は早晩中止されると言われてきました。

 2年前の2014年、滋賀県知事は嘉田氏から三日月大造氏へバトンタッチされました。
 三日月氏は民主党政権時代、ダム事業担当の国交大臣政務官として、全国のダム事業の見直しに取り組む立場にありながら、ダム推進を目指す河川官僚の言いなりになった経緯があります。今回の近畿地方整備局の方針転換は、三日月氏が国交大臣政務官の時に決定したダム推進に有利な、形ばかりの「ダム事業の見直し」を踏まえたものです。
 滋賀県、大阪府、京都府の中で、ダム中止方針を支持した知事は、今や山田京都府知事のみとなり、山田知事の今後の対応が注目されます。

 関連記事を紹介します。

◆2016年7月29日 日経コンストラクション
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/atcl/cntnews/15/072800471/
ー大戸川ダムは凍結から事業継続へ、近畿地整ー

 国交省近畿地整の事業評価監視委員会は7月27日、建設凍結されている大戸川ダム(大津市)の再評価で、近畿地整の「事業継続」とする対応方針の原案を妥当と判断した。 

 大戸川ダムは、1989年に事業着手した淀川水系のダム。当初は治水と利水、発電を目的にしていた。
 同ダムを巡っては2008年、淀川水系河川整備計画を策定する案の段階で、流域の三重県、滋賀県、京都府、大阪府の4知事が、一定の治水効果はあるものの、優先順位は低いと指摘。「河川整備計画に位置付ける必要はない」と共同で意見した。

 これに対し、2009年に策定した河川整備計画では、利水を目的から外し、治水専用の流水型ダムと位置付けた。ただし、「ダム本体工事については、中・上流部の河川改修の進捗状況とその影響を検証しながら実施時期を検討する」として事実上、本体工事を凍結した。

 その後、民主党政権下の2010年から、全国83のダム事業を対象に妥当性の検証が始まった。大戸川ダム建設事業は、その検証対象の一つだ。
 近畿地整は検証で、河道改修、放水路などの治水施設の整備、既存のダム堤体のかさ上げなど13案を比較。大戸川ダムによる治水が最も有利であると評価した。

(以下、記事要旨)

 流域自治体の首長の意見ー

・大阪府の松井一郎知事「ダム案が最も有利とする国の検討結果は尊重しながらも、ダム本体工事の着工について、関係自治体の意見を聴取するよう近畿地整に求めた。」

・滋賀県の三日月大造知事「同様に意見聴取を要望。」

・京都府の山田啓二知事「緊急的に着手すべき事業ではないという立場を変えていない。」

 ダム本体の工事を再開するには河川整備計画の変更が必要。
 河川整備計画は通常、20~30年間を対象とする。淀川水系の河川整備計画は策定から7年ほど経過したばかりだ。
 近畿地整では、国が大戸川ダムの事業を継続する方針を決めても、整備計画を直ちに変更するわけではないとしている。