国交省八ッ場ダム工事事務所はさる11月17日、「本体掘削50%達成」との記者発表を行い、19日に報道関係者を工事現場に案内しました。
 http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000636098.pdf

 翌20日、群馬版各紙が関連記事を掲載しました。(ページ末尾に転載)
 今回の記者発表で国交省八ッ場ダム工事事務所が強調したかったのは、タイトルにもなっている「本体掘削50%達成」、つまり本体工事の第一段階である基礎岩盤の掘削工事が半分まで進んだということだと思われますが、50%という数字については不可解なところがあります。
 各紙が報じているように、「基礎掘削」の合計が60万立方メートルで、これまでに30万立方メートル掘削したから50%達成ということなのですが、「基礎掘削」の合計は正確には68万立方メートルです。30万立方メートルではまだ50%に達していません。八ッ場ダム工事事務所はなぜ68万立方メートルを60万立方メートルと説明したのでしょうか?

写真下=八ッ場ダム本体右岸(川原湯地区)の基礎岩盤の掘削 2015年11月16日 展望台「やんば見放台」より撮影
本体右岸の基礎掘削 (2)

 八ッ場ダム事業では、これまで計画変更が繰り返されてきました。「基礎掘削量」も計画変更に伴って縮小してきましたが、2008年の第三回計画変更で68万立方メートルとなってからは変化していません。

 最初の八ッ場ダムの基本計画(1986年)では、基礎掘削量は149万立方メートルでした。ところが、2008年の計画変更により、八ッ場ダムの堤体規模は大幅に縮小され、基礎掘削量は68万立方メートルに減らされました。当初の計画ではダム堤体を造るために18メートルの深度まで掘削して基礎を造ることになっていましたが、設計変更によってダム本体の基礎は3メートルまで縮小、これに伴いダム高は130メートルから116メートルに縮小、ダム本体コンクリート量も160万立方メートルから91万立方メートルに縮小することになりました。

 ダム本体の設計変更の理由について、八ッ場ダムの起業者である国交省関東地方整備局は、、ダムサイト予定地の地質が当初の予想より良好であるなどと説明し、コスト縮減効果のアピールに努めてきました。

2007年12月21日 事業評価監視委員会 (再評価)八ッ場ダム建設事業 国交省関東地方整備局資料 
21ページおよび23ページ
キャプチャコスト縮減の取り組み
キャプチャ堤体縮小

キャプチャ1 実際、このダム堤体規模の縮小は、2007年9月10日に開催された「八ッ場ダム・湯西川ダムコスト縮減技術委員会」で初めて「概略設計に基づく縮減効果」として提起され、翌年の計画変更(第3回)で決定しました。
右=第8回「八ッ場ダム・湯西川ダムコスト縮減技術委員会」の資料の表紙

 コスト縮減技術委員会は国交省関東地方整備局によって2004年7月に設置されました。
 当時、関東地方整備局は八ッ場ダムの事業費をこれまでのわが国のダム事業では前例のない4600億円に倍増するダム計画変更案を関係都県に諮っており、これ以上の事業費増額には応じられないとする関係都県の要望にこたえる必要が生じていました。2ヶ月後の9月、事業費を倍増する八ッ場ダムの計画変更は関係都県の了承を得て決定しました。

第8回「八ッ場ダム・湯西川ダムコスト縮減技術委員会」の資料ー「コスト縮減委員会方針一覧表」(1/7)よりキャプチャ2

キャプチャ事業費の内訳 その後、2007年、第8回コスト縮減技術委員会が本体規模の縮小を提起し(上記の資料参照)、本体工事費の削減が決定。翌2008年度、八ッ場ダムの計画変更(第三回)が行われ、それに伴う関連事業費の増額分を埋めるために、本体工事費の削減が利用されました。
 関連工事の肥大化が残されたダム本体工事費の縮小というシワ寄せをもたらしたといえます。
(右の画像をクリックすると、2008年に行われた八ッ場ダムの第三回計画変更によって事業費の内訳がどのように変わったかを示す表が二枚表示されます。第三回計画変更の主目的は八ッ場ダム事業の工期を2010年度から2015年度に延長することでしたが、この表を見ると本体工事関連の事業費が大きく減額されていることがわかります。)

キャプチャ本体左岸 名勝・吾妻渓谷にあるダムサイト予定地は地質が脆弱なことで知られ、高透水帯、熱水変質帯などが分布しています。コスト縮減の必要性が安全性の軽視につながることが懸念されます。

 6月の八ッ場ダムの公聴会では、ダム堤体の再度の設計変更の可能性について、関東地方整備局は「基礎掘削を行って、実際に現れた岩盤の状況によっては、設計内容を照査することを考えております」と説明しており、今後の行方は依然として混沌としています。 

写真右=八ッ場ダム本体工事現場 工事のために河床が干しあげられ、吾妻川の水は左手の地中に掘られた仮排水路を流れている。作業ヤード(川原畑地区)が右手の上方に見える。 
2015年11月21日 吾妻渓谷の見晴らし台より撮影

◆2015年11月20日 上毛新聞 (ネット記事は紙面記事の冒頭部分です。)
http://www.jomo-news.co.jp/ns/2314479456828422/news.html
ー基礎掘削5割完了 八ツ場ダム本体工事 ー

 八ツ場ダム(群馬県長野原町)の本体工事で19日、堤体と接する地表を露出するための基礎掘削が工程の5割を完了した。国土交通省八ツ場ダム工事事務所は同日、報道機関向けの現場説明会を開き、計画通り来年5月末までに基礎掘削を終え、6月から24時間態勢でのコンクリート打設に入る見通しを明らかにした。

 計60万立方メートルの岩盤を掘り出す基礎掘削のうち、19日までの作業で計30万立方メートルを掘り終えた。初公開されたダム右岸側の最上部「天端」から見ると、大型の重機が土砂を搬出したり、作業員がのり面を補修している状況が分かる。

 掘削現場から山を越えた南西側の東吾妻町内では、ダム本体に骨材を送り出すプラントヤードを建設している。来年1月に試運転し、4月から総延長10キロのベルトコンベヤーでダム建設地近くまで骨材を運び、水やセメントと混ぜて堤体を形成する。

 本体工事全体の契約金の出来高ベースでは、約1割が終わったという。一方、8月に始めた一般向けの現場見学会への参加者は年内に千人に達する見通しだ。同事務所は「より多くの人にダム事業への理解を深めてほしい」としている。

◆2015年11月20日 毎日新聞群馬版
http://mainichi.jp/select/news/20151120k0000e040175000c.html
ー八ッ場ダム:建設現場 掘削工事進み露出山肌が倍にー

 国が群馬県長野原町で建設中の八ッ場ダムは、ダム10+件本体造成のための掘削工事が50%まで進んだという。国土交通省が19日、報道関係者に建設現場を公開した。7月末の公開時に比べ、削り取られて露出した山肌が2倍近くに広がっていた。
 国交省八ッ場ダム工事事務所によると、1月の本体工事着工後、除去予定の土石量60万立方メートルの半分の30万立方メートルを掘削したことになる。ダム建設に用いる石を切り出す採石場では、砕石機やベルトコンベヤー(総延長約10キロ)の軌道がほぼ完成し、来年4月に本格稼働する予定。

 掘削工事は今年度中に完了し、コンクリートのダム堤体を築く「打設工事」が来年6月に始まる見通しという。【高橋努】

◆2015年11月20日 朝日新聞群馬版
http://digital.asahi.com/articles/ASHCM5HP1HCMUHNB00T.html
ー八ツ場ダム、巨大な輪郭出現 現場を報道陣に公開ー

 国土交通省が長野原町で建設中の八ツ場ダムは、ダム本体工事の前提となる「基礎掘削」をほぼ半分終え、19日、現場が報道陣に公開された。木々に覆われていた吾妻川両岸は高さ約70メートルの岩肌がむき出しになり、ダムの巨大な輪郭が見えてきた。工事は予定通り進んでいるという。

 基礎掘削は今年1月に始まり、ダム本体(高さ116メートル、最上部の幅約291メートル)の形に合わせて、両岸の山肌や地盤を発破などで削る作業が続いている。すでに予定の半分、約30万立方メートルの土砂や岩を撤去し、上層部の工事はほぼ終えた。むき出しになった岩肌には、本体を据える溝も掘られている。

 作業は昼夜二交代で、この日は約200人が大型ダンプやショベルカーを使って作業していた。基礎掘削は来年5月で完了し、翌月からコンクリートを打ち込む「打設」工事に入る。

 一方、この現場の上流にある工事用の大柏木トンネル(全長約3キロ)を抜けた東吾妻町側では、山を切り開いた3ヘクタールの敷地に本体工事用の石や砂を送り出す「プラントヤード」の建設が進んでいた。

 1・3キロ離れた山で採掘した安山岩の原石を40トンダンプでプラントヤードに運び、細かく砕く。使用される石や砂の総量は約90万立方メートル。当初は大型ダンプで本体工事の現場まで運ぶ予定だったが、コスト削減と環境への配慮から全長10キロのベルトコンベヤーで運ぶことにしたという。プラントはすでに7割方でき、来春から搬出作業を始める。
     ◇
 国交省八ツ場ダム工事事務所は、一般向け現場見学会を開催している。問い合わせは同事務所(0279・82・2311)へ。(土屋弘)

◆2015年11月20日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/local/gunma/news/20151119-OYTNT50447.html
ー八ッ場の掘削 半分終了ー

 国土交通省八ッ場ダム工事事務所は19日、長野原町で進めている八ッ場ダム本体工事の報道機関向け見学会を行った。今年1月に始まった掘削工事の進捗(しんちょく)率は50%に達し、来年6月に始まる予定のコンクリート打設に向けて順調に進んでいることが報告された。

 掘削工事は、コンクリートを流し込むのに適した岩盤を露出させる工事。ほぼ毎日、ダイナマイトなどで岩盤を崩し、重機を使って土砂を搬出している。集まった報道関係者は、発破作業を対岸から見学した。同事務所によると、約60万立方メートルのうち約30万立方メートルの掘削を終了。小島宏一工事課長は「工程通りに進んでいる」と話した。

 コンクリートの材料となる骨材を作る施設「骨材プラントヤード」も公開された。約7割が完成し、来年1月には試運転を始める予定という。

 同ヤードでは、原石山から運んで来た石を砕き、直径5ミリ以下~8センチの4種類の骨材を作る。できた骨材は、ヤードから本体工事の現場へ続く全長約10キロのベルトコンベヤーでコンクリート製造施設に運ぶ。小島課長は「トラックで搬送するよりも効率良く、環境にも優しい」と説明した。八ッ場ダムは、2019年度中の完成を目指している。