東京新聞の特報面に、過大な水需要予測に関する記事が掲載されていましたので、転載します。この記事で取り上げられている、水需要予測と実際の水道の給水量との乖離を示すグラフを以下のページに掲載しています。
 http://yamba-net.org/?p=8778
「水道の一日最大給水量(全国・利根川流域・東京)のグラフ」

◆2014年10月6日 東京新聞特報面
ー減る首都圈の水需要 進む八ッ場ダム事業 国や自治体 推進目的に過大予測ー

 首都圏での水需要の低下傾向が鮮明だ。一方で、関係自治体は実績より高い水需要を見込む。水の供給と洪水調節が目的の八ッ場ダム(群馬県長野原町)は関連工事が進み、本体工事も着工が迫る。在野の研究者は、ダム事業推進のため、水需要を高く予測した可能性を指摘している。 (篠ケ瀬祐司)

 社団法人「日本水道協会」の二〇一二年度「水道統計」が九月に発行された。年度で最も多く水を供給した日の量を示す「一日最大給水量」を、二十年間さかのぽって調べると、八ツ場ダム事業に参加する東京都と茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉各県の上水道の需要減少煩向が確認された。
 六都県の一日最大給水量の合計は、一九九二年度に干四百十八万立方㍍だったのが〇二年度には千三百三万立方㍍に、一二年度は千百九十万立方㍍に減った。給水量と使用量は完全に一致しないが、水需要をはかる数字だ。

 水需要減少の要因には、水道事業者の漏水防止対策や、社会的な節水への取り組みなどがあるとされる。国土交通省の国土審議会は四月に出した「今後の水資源政策のあり方について」で、漏水防止能力を「世界でも極めて高い水準」だと評価。全自動洗濯機が使う水量は九〇年の四分の一に、水洗トイレは七五年の三分の一近くになったと指摘する。

 人口も減る。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、北関東や千葉県は一〇年と比べて一五年から減り続ける。東京都も二五年までは一〇年と同程度だが、三〇年以降は減少する。

 それでも各都県は一〇年の八ッ場ダム事業の是非検証で、水需要は増加か横ぱい程度だとし、ダムの必要性を訴えた。民主政権は一一年に建設再開を決めた。
 東京都は一二年発表の基本構想でも、実績より大きな予測を出した。一日最大給水量は、九二年度の六百三十六万立㍍から一二年度には四百七十一万立方㍍に減ったが、基本構想は今後も六百万立方㍍を見込む。

 民間団体「水源開発問題全国連絡会」の嶋津暉之共同代表が情報公開で入手した都の資料によれぱ、一五年度が五百九十二万立方㍍、二五年度は五百七十二万立方㍍との予測だ。
 都水道局は「施設の老朽化や、日々の配水(給水)量の変動率、社会の変化や政策転換の可能性を配慮した」と説明する。これに対して嶋津氏は「都が採用した漏水率や変動率は、需要が大きくなる恣意的な設定だ。国も都県も過大な水需要予測を根拠にダム事業を推進している。水需要縮小の時代に、新規の利水ダムは不要だ」と強調する。

 八ッ場ダム以外でも、水需要予測とダムの関係が取りざたされている。
 今年出された札幌市の水需要予測素案では、三五年の一日最大給水量が、八十七万立方㍍から八十二万立方㍍に修正された。一二年に札幌市に水道用水を供給する当別ダム(北海道当別町)が完成している。
 市水道局は「人口減少幅が大きく、増加するとみていた生活用水量が横ぱいだと判断した。経済成長を見込まない市の計画も考慮した。ダムは予測に影響していない」という。
 だが在野のダム研究者の見方は厳しい。「戦後河川行政とダム開発」の著者の梶原健嗣氏は「人口減少や節水の進み具合は分かっていた。状況的にみれぱ、ダム完成までは実績と異なる水需要予測をしていた可能性がある」と指摘する。