2013年5月16日  

 当会東京支部では、さる4月26日に八ッ場ダム問題に関して猪瀬東京都知事に面談を求める手紙を届けました。 

 猪瀬都知事への手紙 
 http://yamba-net.org/wp/?p=2793  

 手紙への回答期限を5月10日としたところ、5月13日、知事本局の渡辺氏より、以下の内容のお電話がありました。  

 「知事からは面談の指示がなく所管で対応するようにとのことでしたのでご了承ください。都市整備局に伝えてあり、手紙のコピーも行ってますので、そちらに連絡してください」  

 そこで、知事本局で紹介された都市整備局の池内氏に対応を問い合わせたところ、次のようなお返事がありました。  

 「東京都では、石原前知事の強い推進の意見があり、猪瀬知事もそれに続いている。手紙の答えは、ホームページなどでも都の方針を出しているので、特に回答はするつもりはありません」  東京都都市整備局による八ッ場ダムに関するホームページの説明はこちらです。
  http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/seisaku/yanba/  

 なお、5月10日の猪瀬都知事定例会見で八ッ場ダムと猪瀬都知事への手紙に関する質疑がありました。 その内容は、あしたの会が手紙で投げかけた疑問とも重なっており、直接は回答しなかった猪瀬都知事の考えをうかがい知ることができます。
http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/TEXT/2013/130510.htm

 人口減少時代を迎えるに当たり、人口増による水需要の増加を前提としている八ッ場ダムは社会の要請に合わないのではないか、という記者の質問に対して、猪瀬都知事は次のように答えています。

 -東京都の方針の中でずっと計画されてきたことであり、本来は国の事業でありまして、東京都は負担金を払うということでやってまいりました。ですから、それはその負担金を払って、その完成を待つということになると思います。」

 -(民主党の前原国交大臣が)多目的ダム法を無視した形で中止と言ったので、みんな混乱が生じて、それは、だからちゃんともとに戻すべきであるということでありまして、それがごく普通の常識だというふうに考えていいと思います。

 残念ながら、ここには「日本国の研究」において、公共事業の問題を鋭くえぐり出した当時の作家、猪瀬氏の視点が見られません。行政は組織として事業の継続をめざしますが、その事業が都民の求めているものとかけ離れている場合、知事は行政の代弁ではなく、一般都民の意見を代表することが期待されます。

 八ッ場ダムは事業費の増額、工期の延長が必至とされ、そのために早晩必要となるダム計画の変更には、知事の見解が求められることになります。
 記者会見でののやり取りの中で、猪瀬都知事は東京都の水需給について「現在は十分に、今年は足りている。」、「データときちんと向き合っていきたい」と語っています。計画構想から実に61年、事業が開始されてからでも46年目となる八ッ場ダム事業の問題について、猪瀬都知事がさらに真摯に向き合うよう、働きかけを続けてゆきたいと思います。

 記者会見の質疑から関連個所を転載します。

 【記者】フリーのヨコタハジメですけれども。ニューヨークタイムズの問題発言が出た前段の質問がですね、トルコで若い人が多いから五輪に熱狂して有利だという、人口構成とですね、五輪招致の関連性を指摘した質問をして、まさにこれは本質論だと思うんですが、というのは、トルコのような若い世代が多くて、開発途上で、これから成長していく国にとっては、インフラ整備を伴う五輪招致というのは非常にメリットが多くて意義があると思うのですが、かつての東京五輪のようにですね、今、日本は人口減社会で高齢者が増えてる時代にインフラ整備を五輪に、招致に伴ってやっても、あまり意義がない、むしろ医療、介護、福祉に予算を投じる状況なんじゃないかと思うんですが、その五輪招致に伴って、三環状を含めて道路整備をするとかですね、という政策が時代ミスマッチじゃないかということと、その五輪招致と人口構成の関連性、トルコのほうが客観的に見て有利じゃないかというふうに思われなかったのかどうかお聞きしたいんですが。

【知事】他都市については、行動基準違反になりますので触れません。あなたのご質問は、三環状道路かオリンピックかというご質問かと思って、今、お答えいたしますが、三環状道路はオリンピック計画と直接、もちろんオリンピックのためにあったほうがいい。その前から計画されているものですから、その計画されているものがオリンピックにちょうどできる、オリンピック、もし開催できたら、2020年オリンピック・パラリンピックが開催できるまでに完成してると、僕は、してることが望ましいと思っております。はい。

【記者】人口、東京都が、高齢者が増えて、人口減にまさにこれから差しかかろうとしているのが不利な条件かどうかというのをご自覚、自覚なさってるかどうか、東京についての客観的認識についてお伺いしたいんですが。

【知事】生涯スポーツをやっていく、そういうスポーツを楽しむ、そういう世界をつくっていきたい、それが2020年オリンピック・パラリンピックの1つの目標であります。スポーツを楽しむような、生涯楽しんでいきたい、そういう中でオリンピックが開催されることは、僕はすごく望ましいことだというふうに、僕は思っています。

【記者】道路のご専門の作家活動、ジャーナリズム活動をされたという見地から再確認したいんですが、人口減で高齢者が増えて、道路の必要性が乏しくなっている中で、それでも三環状を見直さない理由とですね、八ツ場ダムを含めて、同じように水需要がだんだん下がっているのに八ツ場ダムも見直さないと。大型公共事業を見直さない姿勢に、何で当時の、猪瀬さん、作家活動で活躍された時代から立場が変わっちゃったような気がするんですが、その辺の整合性についてはどうお考えなんでしょうか。

【知事】あの、外環については費用対効果があるということで、やるべきであるという考え方は一貫しております。

【記者】八ツ場ダムも、人口減で水需要が減っているのに、それでもやるべきだというお考えなんですか。

【知事】それは、これまでの東京都の方針の中でずっと計画されてきたことであり、本来は国の事業でありまして、東京都は負担金を払うということでやってまいりました。ですから、それはその負担金を払って、その完成を待つということになると思います。はい。

   (中略)

【記者】朝日新聞の菅野と申します。先ほどの八ツ場ダムのご質問、質問のちょっと関連なんですが、知事、『日本国の研究』で長良川河口堰のお話を、15年以上前ですか、書かれていたと思います。私、ちょうどこの仕事を始めたばかりのころで、非常に感銘を受けた記憶があるんですが、で、最近読み返したんですけども、先ほどのお答えとちょっと矛盾するかとは思うんですが、文庫版のですね、68ページになるんですけども、「地方分権とは地方自治体の自決の論理のはずである。情勢に変化が生じて水が余るという地元自治体の判断があれば、無理に公共事業をやることはない。地元が自決できないのは補助金のせいである。やれば補助金がもらえる。一度補助金を断れば次にもらえなくなるから、無駄な工事と知っていても参加する」。このように書かれているんですけれども、私とはまた違う立場ですが、市民団体の方がですね、やはりこの本に感銘を受けて活動されている方たちなんですけども、先日、知事に八ツ場ダムのことについて、ぜひお話を聞いてほしいということで要請書、4月の26日に出されていまして、きょうが回答期限なんですが、知事、この『日本国の研究』を書かれたときのお気持ちと今のお気持ちというのは変わりないと考えてよろしいんでしょうか。

【知事】基本的に変わっていません。なぜかというと、地方分権の立場で物を考えるということで、民主党の前原、当時の大臣が多目的ダム法に基づいて行動したのかというとそうではなくて、突然やめると言った。それは、それまでそれなりに税金を投資してきた事業であり、地元の合意も取り付けた事業であったわけですが、多目的ダム法、ご存じのように、地元の、つまり県知事とか県議会とか、東京も含めてですが、そういう首長なり民意を代表する、制度的に代表する議会との話し合い、その確認をとるという手続きが必要であると多目的ダム法に書いてあるわけです。
 これまでは多目的ダム法に基づいて進展してきたものですから、これも実際には60年ぐらい前から始まっている話ですので、そういう流れの中で突然、多目的ダム法を無視した形で中止と言ったので、みんな混乱が生じて、それは、だからちゃんともとに戻すべきであるということでありまして、それがごく普通の常識だというふうに考えていいと思います。はい。

【記者】そこの認識は私も全く同意するところなんですけども、ただ、東京は今、水余りの状況にあるとはお考えになっていないということなんでしょうか。

【知事】それはわからない。水余りとは言えないかもしれない。渇水というのがありますので、それは、ただ、節水をするとか、あるいは環境技術が向上してきたとか、そういう意味で水の考え方、水に対する考え方が変わってきているということであって、水そのものが余るかどうかというのは、これはやっぱりそんな簡単に言えません、はい。

【記者】ただ、現状で1日600万トン、東京都の使える水としてはあるわけですけど、実際使っているのは400万トンぐらいという状況ではあるんですが、その現状についてはどうお考えでしょう。

【知事】渇水というのがありますので、それは現在は十分に、今年は足りている。しかし、長期的な見通しの中で、減ってきたとしたら、それはさまざまな技術、あるいは工場の、あるいはビルのつくり方が変わってきたりとか、そういうことであって、基本的には人口が減っているわけではなくて、東京都の人口増えていますので、そう軽々に発言できないと思って、データときちんと向き合っていきたいと思っています。以上です、はい。同じ、あんまり1人だけやっちゃうとあれだから。

【記者】いやいや、もう1点。その市民団体の方のお話を聞くお考えもないということでしょうか。

【知事】さまざまな方々の意見は寄せられております。それは、寄せられておりますから、そういう意見をいつもできるだけ見ております。はい。