Exif_JPEG_PICTURE 「このガラス瓶に入っている4つの小さな直径4ミリほどの塊、黒いやつ、なんだか分かりますか?」
 こんなクイズから、講師のネイチャーガイド・新津紅(あらつ べに)さんのお話が始まりました。
 新津さんが吾妻渓谷に通い始めたのは5年前から、渓谷独特の美しさと渓谷の不思議に魅せられたんだそうです。

写真2・カフェ入口243kb 新津さんは高尾山のネイチャーガイドを15年務め、同時に都内の川の資料館にも勤務していました。首都圏の川と上下水道にくわしくて、「このカフェで使った水はどこへ流れて、どこで処理されているか知っていますか? 三河島の下水処理場で処理されて、墨田川に流れていくんですよ」

 第3回目の「やんばカフェ」が開かれたのは3月20日、池袋の「としまエコミューゼタウン」の4階にある「Cafeふれあい」。
 参加者20名ほどが「へ~え、そうなんだ」と感心しているうちに、「実は東京都で使われている水の多くは荒川や利根川の水なんですよ」と利根川を遡り、いつの間にやら吾妻渓谷に案内されていました。(写真はカフェ入口に貼られたチラシ)

写真3・熱弁の新津さん 350kb 「さきほど、みなさんにまわしたガラス瓶の中身、なんだか分かりました? あれ、ムササビのフンです。吾妻渓谷にはムササビ、カモシカ、サル、テン、クマもいます。クマのフンもよくみますよ。で、この時期のムササビは何を食べていると思います? 木の皮、木の芽、葉っぱ、それにスギ花粉。杉の雄花の咲き始めを食べて、満開になるともう食べません。美味しくないみたい。(写真=講師の新津紅さん)
 カモシカは良く出会います。カモシカは好奇心が強いのか、逃げません。
ず~とこっちを見ています。こっちが歩き出すと姿を消すんですけどね。」

 新津さんは、高尾山と標高が同じなのに吾妻渓谷には不思議がいっぱいある、と不思議のいくつかをあげました。

「夏でも蚊がいません。昆虫も少ないんです。V字渓谷で谷が深くて陽が射さない処が多いからかもしれません。特にクモがいない。女郎蜘蛛のような巣をはるクモがいないんです。不思議な渓谷です。
 それなのにこの吾妻渓谷には希少な花が沢山自生しているんです。最近、大木の樹林も発見されています。
 とにかく、皆さん、吾妻渓谷を訪ねてください。そして地元の方にこんな花が咲いていたよ、とかこんな動物見ましたって、報告してください。
 地元の方たちが吾妻渓谷の魅力や価値に気がついていないところがあるんです。」

フォト6・秋本さんのビデオ解説 301kb 新津さんの吾妻ガイドに続いて、地元・群馬の方が編集したダム工事現場の動画が20分にわたって紹介されました。

 映像には、はぎ取られた名勝・吾妻渓谷の緑、トラックや重機が行きかう様子、吾妻渓谷の中で行われている八ッ場ダム本体工事現場の荒涼とした風景。
 映像と共に、熱変質帯という地すべりを起こすかもしれない危険な地層のこと、現場で使われた違法な鉄鋼スラグの危険性などが淡々とリポートされます。

写真4カザグルマ白356kb (2) 水没予定地では、希少なカザグルマの自生地が水没してしまうこと、ムササビ君は木から木へ滑空して移動するために広い森が必要、ムササビ君はじめ多くの生物の生存が危ぶまれる、などの補足説明もありました。

 この日、初めてこの「やんばカフェ」で現在進行している吾妻渓谷のことを知った参加者から、まず、飛び出した言葉は、
「これ、止められないんですか!?」
「最高裁まで行ってダメだったって、ほかに訴訟の方法ないの?」
「なんとか、止めましょうよ」
「止められなくても、なかなかダムは出来ないとおもいます」と新津さん。
「止めたいですよね」とスタッフ。

写真7・会場全景 -302kb

 シンポジウムなどと違って、講師と参加者の距離が短いカフェならではの、素朴な疑問と素直な感想が行きかいました。
 カフェには、もろもろの理論武装で臨む講演会とは違ったやわらかな空間が生まれます。貴重な空間です。
 初めて参加した4名の方が、吾妻渓谷を訪ねてみるそうです。
 まだ、耳に響いています。

 「これ、止めらないんですか?」