八ッ場ダムの水没地にあった川原湯温泉は、国交省が大規模造成した移転代替地で再生を目指していますが、住民の多くはダム事業による地域振興に希望を見いだせず、川原湯から転出していきました。
旧温泉街への道立ち入り禁止 川原湯地区の水没世帯は、ダム事業が本格的に始まる前の群馬県資料(1979年、『生活再建案』)によれば201世帯でしたが、国交省がダム湖予定地周辺に造成した二か所の代替地へ移転したのは、2017年3月末時点でわずか31世帯です。
(写真右=水没地に残る旧温泉街の坂道は、工事のため立ち入り禁止。)

 代替地では現在、5軒の宿泊施設が営業しており、かつての温泉街の賑わいを取り戻すことが課題となっています。
 老舗旅館の山木館と丸木屋旅館では若い後継者がいます。川原湯温泉は行政主導の地域振興策に振り回されてきた経緯があるため、年配の住民はダム事業を滞りなく進めるために新たに繰り出される「観光振興」に冷めた見方がありますが、若い住民は東京の女子大との連携に前向きだと報じられています。

川原湯温泉新駅 八ッ場ダム予定地を走っていたJR吾妻線は、標高の高い山中への付け替え工事に370億円超が投じられ、川原湯温泉駅も代替地に移転しましたが、JR東日本がこのほど公表した2016年度の乗車人数のデータによれば、同駅の乗車人数は27人となっており、過去10年間の減少率は群馬県内で最大となっています。
(写真右=八ッ場ダム事業で移転・建設された川原湯温泉の新駅。) 

 地元紙に最近掲載された関連記事を転載します。

◆2017年8月11日 上毛新聞
http://www.jomo-news.co.jp/ns/4815023803585745/news.html
ー川原湯に再び活気を 山木館、丸木屋 老舗旅館に後継者ー

 八ツ場ダム建設に伴い代替地に移転した群馬県の川原湯温泉(長野原町)の老舗旅館に後継者が相次いで誕生した。350年の伝統がある山木館の樋田勇人さん(22)と創業約80年の丸木屋の樋田泰彦さん(30)。2人は「川原湯の魅力を多くの人に知ってもらえるようにPRして活気ある温泉地にしたい」と話している。

 高崎経済大を今春卒業した勇人さんは、15代目当主として旅館を継ぐため養子となり山木館に入った。山木館は祖母の実家で、幼い頃から親戚で集まった思い出のある場所。高校生の時には「後継ぎにならないか」と樋田洋二社長に誘われていたという。気軽に受け止めていたが、アルバイトで手伝うようになると旅館の業務や経営に興味が出てきて、大学3年の時に継ぐことを決めた。

 旅館に入って4カ月たち業務や生活に慣れてきた。ほかの旅館経営者と川原湯温泉の将来について意見を交わすようになったといい、「引き継いだものを大事にしたい。歴史や自然など魅力を前面に出し、他の旅館と協力して活気ある温泉地にしたい」と言葉に力を込める。

 泰彦さんは昨年9月、実家の丸木屋に戻った。大学を卒業してから伊香保の大規模旅館で勤務し、知識を深め経験を積んだ。6室だけの丸木屋はアットホームな雰囲気が売り。「お客さんと距離が近く、親しんでもらえる」と伊香保とは異なるやりがいを感じている。

 2人は跡見学園女子大が提示する川原湯温泉の活性化策や、今後建設される地域振興施設について議論する協議会のメンバーに選ばれており、「ダムに興味を持って来てくれる人を取り込むなど集客に力を入れたい」と意気込んでいる。

◆2017年8月17日 上毛新聞 (ネット記事は紙面記事の冒頭のみ)
http://www.jomo-news.co.jp/ns/2615029325088011/news.html
ーJR駅乗車 10年前比で高崎問屋町は倍増ー

キャプチャ 群馬県内JR各駅の2016年度の1日平均乗車人数を10年前と比較すると、駅周辺の開発が進むなど人の流れが生まれた都市部は利用が増える傾向にあったが、人口減が進む中山間地は減少が顕著だったことがJR東日本が公表したデータで分かった。

 駅員がいるなど乗車人数の把握が可能な32駅で比較した。増加駅、減少駅数はちょうど16駅ずつ。増加率が最大だったのが高崎問屋町駅(高崎市)で、1549人(06年度)から3514人(16年度)と126.9%増えた。

 これに対し、減少率最大は川原湯温泉駅(長野原町)で、46人(06年度)から27人(16年度)と41.3%減った。

 高崎問屋町駅は近くに群馬バース大がキャンパスを開設したり、高崎経済大付属高行きの民間バス運行が始まったことなどが背景にあるとみられる。一方、川原湯温泉駅は、八ッ場ダム建設に伴い2014年に高台に駅舎が移ったが、観光客らの利用が減ったと見られる。

 同駅は実乗車人数でも32駅で最も少なかった。次いで減少率が大きかったのは33.4%減の水上駅(みなかみ町)で、温泉地の苦戦が際立った。

 16年度の実乗車人数が、県内で最も多かったのは高崎駅(2万9960人)で、06年度より5.9%、15年度より0.7%増えた。前橋駅(1万353人)、新前橋駅(6055人)、伊勢崎駅(5825人)ーと続いた。

 鉄道駅の利用増加策について、高崎経済大地域科学研究所の西野寿章所長は「鉄道利用者への特典や、駅から観光地までの交通アクセスの利便性を高めることが重要。欧州が進めるパークアンドライドが実現できるような駅周辺の開発も考えるべきだ」と指摘した。

 JR東日本はIC乗車券での入場記録や切符何倍実績などを基に、1日平均乗車人数をまとめ、公表している。

*JR東日本が公表した各駅乗車人数のデータはこちらです。➡http://www.jreast.co.jp/passenger/2016_09.html