八ッ場ダム事業ではダム本体のコンクリート打設が進み、マスコミ報道ではダムが抱える問題はほとんど報じられなくなりました。
 むろん、八ッ場ダムが不要であるという意見が取り上げられることはなく、ダム本体の見学会が盛んにPRされ、住民の移転代替地やダム湖周辺ではダム事業による地域振興が軌道に乗っているように書かれています。

DSCF0741 (2) 実際に現地を歩いてみると、水没予定地では遺跡の発掘調査が大規模に実施されており、樹木の伐採作業が進む荒涼とした風景が広がっています。人口減少と高齢化に歯止めがかからない中、ダム湖周辺の地すべりの危険性、有害な鉄鋼スラグの不法投棄など、これまで指摘されてきた問題は解決に程遠い状況です。八ッ場ダムによって開発された水が供給されることになっている首都圏でも、ダム完成予定の2020年代には、人口減少傾向に拍車がかかり、今よりさらに水余りが顕著になると予想されます。
写真右=吾妻渓谷の本体工事現場。2017年7月5日、下流側の小蓬莱山頂より撮影。

 この数日の地元紙・上毛新聞の関連記事を転載します。

◆2017年7月11日 上毛新聞
ー上州百景 山あいに”巨大要塞” 八ッ場ダム 夜の顔ー (連載シリーズ「上州百景」の21回)

 山あいに日が沈み、工事現場に明るいライトがともると、巨大なコンクリートの壁が浮かび上がった。
 国土交通省が進める八ッ場ダム(長野原町)の本体工事現場。ダムは1952年の計画発表から65年の歳月を経て、いよいよ完成が見えてきた。工事は24時間態勢で行われ、夜の姿を見ると、まるでコンクリートの城塞を演出しているようだ。
 団体向けに、毎週金曜に国交省が実施しているダム夜間工事見学会「プレミアムフライデー限定 ヤンバナイトツアー」が人気だ。問い合わせは八ッ場ダム工事事務所へ。

◆2017年7月12日 上毛新聞
ー代替地 振興策に力 八ッ場ダムー  (連載シリーズ「水と生きる」1章の4回)

 ためられる水量は1億750万立方㍍。東京ドーム87個分に当たる。建設が大詰めを迎えている長野原町の八ッ場ダム。水は生活用水、工業用水に活用され、首都圏の人々の生活を潤す。
 長野県境の鳥居峠(嬬恋村)を源流とし、渋川市で利根川に合流する吾妻川。1947年のカスリーン台風を契機に、この水を治水・利水に活用しようと、52年に計画が浮上したのが八ッ場ダムだ。

 「民主党政権になって中止表明された時、県や下流都県が建設継続を要望したことで、本当に必要なのだとあらためて実感した」。水没関係5地区連合対策委員会の野口貞夫委員長(73)は振り返る。
 2009年、政権交代に伴う方針転換。半世紀にわたり翻弄され続けた地元は、再び混乱に陥る。ただ、それ以上にダム建設による水を必要と考える人が多いとの認識を新たにしたという。

 ダム建設が進む地元では92軒がすでに代替地で新たな生活を始めている。水没5地区は、各地区に計画された地域振興施設を核に活性化へ力を入れている。
 水没5地区の一つ、林地区は地元住民の出資により株式会社を設立、道の駅八ッ場ふるさと館を2013年4月に開業。草津温泉への中継地点としてにぎわい、昨年度利用者は40万人となった。「八ッ場ダムカレー」「塩あま納豆」とヒット商品もあり、売り上げは4億円に迫る。篠原茂社長(66)は「地元が運営する形でうまくいっており、雇用も生み出している」と手応えを語る。今後は加工品に力を入れるなどして売り上げを伸ばしたい考えだ。

 川原畑地区では滞在型市民農園「クラインガルテン」、長野原地区では長野原草津口駅の売店と休憩所を兼ねた「長野原・草津・六合ステーション」が完成。横壁地区でも屋内スポーツ施設の計画が明らかになっている。

 川原湯地区はダム湖、グランピング施設で新たな魅力創出を目指す。高崎経済大を卒業し、今春に老舗旅館の山木館に後継ぎとして入った樋田勇人さん(22)は「川原湯が持つ歴史と自然に加え、ダムとダム湖、地域振興施設を売り出し、多くの人に知られる温泉地にしたい」と、水で潤う温泉地を心に描く。

 7月上旬、ダム建設を観光に活用する「やんばツアーズ」に参加した埼玉県本庄市の堀口功一さん(60)、道子さん(51)夫妻は、闇に浮かぶホタルを楽しむとともに「我々の生活のためのダムという認識はある」と語った。受益者の理解と魅力ある地域づくりを通じて、どれだけ誘客が図れるか。ダムのまちの行方が注目される。

◆2017年7月13日 上毛新聞
ーダムの役割を理解 長野原一小 やんばの現場見学ー

 長野原一小(篠原彰仁校長)の全児童21人は12日、長野原町で本体工事が進む八ッ場ダム建設現場を見学し、移り変わる故郷の姿を目に焼き付けた。
 児童は「なるほど!やんば資料館」で国土交通省八ッ場ダム工事事務所職員から治水や利水などダムの役割の説明を受けた。展示される建設現場の模型にも興味を示した。
 その後、工事現場を訪れ、完成するとダムの最高地点となる付近から100㍍ほど下にコンクリート打設が進められる現場を見下ろし、「高い」「人や車がミニチュアみたい」と驚きの声を上げた。
 
 やんばダムの模型作りにも取り組んだ。セメントと水を混ぜ、型に流し込んで30分ほどすると、実物の2500分の1の八ッ場ダムが完成した。
 丸山優結さん(4年生)は「セメントを固める作業が楽しかった。現場からの眺めもきれいだった」、篠原碧斗君(同)は「現場がよく見えた。模型もきれいに完成してうれしかった」と話した。

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●名勝・吾妻渓谷の八ッ場ダム本体工事現場。コンクリート打設の進捗度は2割を超えているという。工事現場の下流側に聳える小蓬莱より2017年7月5日撮影。
小蓬莱より7月5日

●川原湯地区と横壁地区の境に聳える堂岩山の麓では、樹木が伐採され、地すべり対策工事が始まることになっている。2017年7月11日撮影。
堂岩山と地すべり対策

◆林地区の水没予定地では、中棚Ⅱ遺跡、下原遺跡で縄文時代、平安時代、江戸時代の遺構、遺物の発掘調査が広範に進められている。2017年7月11日撮影。
中棚Ⅱ遺跡

◆川原畑地区の二社平では、押さえ盛り土と排土工による地すべり対策を行うことになっている。左手のコンクリート壁面は、穴山沢の大規模盛り土箇所。7月12日付の上毛新聞記事にある川原畑地区のクラインガルテンは穴山沢にある。ダム湛水後は湖面橋となる八ッ場大橋より2017年7月11日撮影。
二社平と穴山沢