1 長野原町による鉄鋼スラグの撤去工事
 (株)大同特殊鋼渋川工場から排出された有害スラグに関する長野原町の調査結果を同町が今月1日にホームページで公開しました。
 「鉄鋼スラグを含む砕石を使用した工事箇所について」
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大同特殊鋼(株)より排出された鉄鋼スラグを含む砕石について、環境基準を超えていることが判明した問題で、長野原町では町が事業主体である工事について使用調査を行ってまいりました。
その結果を別添のとおりお知らせいたします。

鉄鋼スラグを含む砕石使用一覧(右の画像をクリックすると拡大します。)
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(株)大同特殊鋼のホームページにもこのことが掲載されています。
http://www.daido.co.jp/event/160301.html

川原畑大戸線 上記の「鉄鋼スラグを含む砕石使用一覧」の中で、長野原町が撤去することが決まった県道「川原畑大戸線」の水道配水管敷設工事の場所は、八ッ場大橋と直角に交わる打越代替地の谷川の県道約250メートルの直線距離の歩道部分です。
(写真右=県道「川原畑大戸線」の直線部分。左手に八ッ場ダム本体工事を行っている共同事業体のプレハブ事務所や「なるほど!やんば資料館」が立ち並び、右手にダム湖の湖面橋となる八ッ場大橋が架かっている。2016年3月21日)

 県道「川原畑・大戸線」は写真手前でカーブして、山沿いを走る県道「林・岩下線」に接続していますが、長野原町によればカーブ箇所から先は今回の撤去箇所には含まれておらず、撤去工事の実施は5月頃までを目途に検討しているとのことです。

 県道「川原畑・大戸線」は県道「林・岩下線」と同様、八ッ場ダムの補償事業によって建設された道路です。群馬県がホームページに掲載している資料にもある通り、ダムで水没する川原湯地区と川原畑地区の移転代替地を結び、川原畑地区の代替地を走る国道から川原湯温泉へのアクセスとなる八ッ場大橋(湖面1号橋)を架橋することがこの県道建設の目的でした。

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2 群馬県による鉄鋼スラグの調査
 県道「川原畑・大戸線」に有害スラグを埋めたのは、長野原町の水道工事だけではありません。
 群馬県の公式ホームページには、群馬県が(株)大同特殊鋼に聞き取り調査を実施した結果、鉄鋼スラグの使用が確認された工事リストが2014年1月26日付で載っています。リストの中で、八ッ場ダム事業の工事は22,23の県道「川原畑・大戸線」、24の県道「林・岩下線」、25の付け替え国道145号です。

【1月26日】大同特殊鋼(株)への聞き取り調査の結果について(建設企画課)
http://www.pref.gunma.jp/06/h8000236.html
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 上記の発表後、群馬県は大同特殊鋼からの聞き取りで鉄鋼スラグの使用が確認された27工事のうち、6工事を抽出して分析試験を行った結果を2014年5月に公表しています。
【5月9日】大同特殊鋼(株)のスラグ砕石に係る調査結果について(建設企画課)
 https://www.pref.gunma.jp/06/h8000248.html
 
 上記の公表資料によれば、「27工事から、使用年度、使用量、使用地域、使用形態などを勘案して、代表的な6工事を抽出し分析試験を実施」したということです。抽出された「代表的な6工事」の具体的な工事名は群馬県のホームページには掲載されていませんが、市民オンブズマン群馬による情報公開手続きにより以下の6工事であることが判明しています。

①(主)大間々白井線 渋川市赤城町溝呂木地内
②(一)下久屋渋川線 渋川市赤城町津久田地内
③(国)353号・祖母島箱島BP 渋川市祖母島地内
④(主)中之条東吾妻線 吾妻郡東吾妻町大字大戸地内
⑤(国)291号・小川工事工区 利根郡みなかみ町小川地内
⑥ 県営萩生川西地内 ほ場整備 東吾妻町大字萩生地内

 群馬県は代表的な6工事を抽出するにあたって、使用地域などを勘案したとしていますが、八ッ場ダム事業の4工事はなぜか除外されました。
 この4工事についてよく見ると、さらに不可解なことがあります。
付け替え国道法面(石畑)shuku 群馬県が2014年1月26日に公表したリストによれば、八ッ場ダム事業によって建設された付替え国道145号でスラグ混合砕石が使用された箇所は東吾妻町のみとなっていますが、川原畑地区の代替地を走る付替え国道は、吾妻渓谷のトンネル上流側(長野原町)、八ッ場ダム本体工事現場の脇付近で路面が波打っており、有害スラグの使用が従来から指摘されている場所です。ここでは路面の凹凸を直すための補修工事が繰り返されていることはよく知られていることです。
 国道145号付替えの事業主体は、長野原町区間が国交省、東吾妻町区間が群馬県でした。国交省が2014年に公表した記者発表資料「鉄鋼スラグに関する材料の分析試験結果」(4~5ページ)には、分析試験を実施した工事の施工箇所のリストに「付替国道145号(川原畑地区その2)改良他工事」の工事名でこの道路区間が含まれていますが、有害物質の含有量が基準値を下回ったとされています。(写真右上=ダム本体工事現場の脇を走る付替え国道145号、長野原町川原畑地区)

林岩下線の歩道 また、川原湯地区の代替地には、県道「川原畑大戸線」と県道「林岩下線」が走っていますが、これら県道の歩道の路面には錆色のシミや亀裂が多くみられ、アスファルトが車道より薄い歩道でスラグの影響が早くに出てきた可能性が指摘されています。(県道「林岩下線の歩道」川原湯地区 2015年12月22日)

 路盤材に混合砕石として使用されたスラグは土壌汚染や地下水汚染を引き起こす可能性があり、観光を主体として再生をめざす川原湯地区にとって重要な問題です。
 水道管や温泉管の埋め戻し材に使用されたスラグ撤去を率先して進めるのは、水を含むと膨張するスラグの性質への懸念からでしょうか。
 八ッ場ダム事業において、群馬県は水没予定地域の生活再建に責任を持つ立場にあります。地元住民にスラグの使用を明らかにせず、スラグを使用したことが明らかになっている工事箇所の分析試験を実施してこなかった群馬県の姿勢が問われます。

3 国交省による鉄鋼スラグの撤去状況
 冒頭でお伝えした長野原町の公表資料には、国交省が実施することになっているスラグの撤去状況の表も載っています。
 2014年12月に国交省が発表した「鉄鋼スラグに関する材料の分析試験結果」で明らかにされた大同スラグの使用箇所のうち、分析試験の結果、八ッ場ダム事業用地で環境基準を超えるフッ素や六価クロムが検出された国交省による8工事の撤去の進捗状況を示したものです。
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◆国交省記者発表資料「鉄鋼スラグに関する材料の分析試験結果」5ページ
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丸岩と工事看板 長野原町が国交省のスラグの撤去状況を伝えた表を見ると、8工事のうち6工事は「撤去済み」、残る林地区・下田の2工事も「撤去作業中」となっており、八ッ場ダム事業用地における有害スラグはほとんど撤去されたかのように見えます。しかし、実際にはいまだにダム予定地域には大量のスラグが残されています。

 撤去作業中とされている林地区・下田の現場は、八ッ場ダムが完成すると水没する吾妻川右岸の河川敷です。撤去作業中の2工事の一つ、「下田残土置場整備工事」は、ダム事業で架橋された丸岩大橋の上流側に位置し、吾妻川の対岸には横壁地区の東・中村代替地があり、その背後には丸岩が聳えています。

スラグの塊 「下田残土置場整備工事」は国交省が2014年12月の記者発表で分析結果を発表した56工事の中で最も六価クロムの溶出量が高い数値を示した工事で、この時の発表によれば六価クロムが環境基準の四倍を超えていました。現場には今も大きなスラグの塊が大量に残されています。

 現場に掲げられている工事看板にある工事名「H27八ッ場ダム管内工事用道路補修工事」の入札調書と入札公告は、以下をクリックするとご覧いただけます。掘削土砂は約7,000立方メートル、落札価格2,680万円と大規模な工事で、工期は平成28年3月25日となっています。
H27八ッ場ダム管内工事用道路補修工事入札公告
H27八ッ場ダム管内工事用道路補修工事入札調書

 下田の残土置き場は、八ッ場ダム予定地内で撤去されたスラグの仮置き場としても使用されてきました。現在の工事が始まる前には、産業廃棄物保管場所の看板も立っていました。
 下田の残土置き場は、地元が八ッ場ダム計画を受け入れたのち、ダム事業の補償金を目当てにした地域外の人々がプレハブ小屋を建てた場所です。”ダム屋”によるこれらのプレハブ小屋は2001年に補償基準が調印されると撤去されましたが、地元住民らによれば、プレハブ小屋があった当時から大量の土砂がダンプカーで運搬され、河川敷の地形が変わるほどであったということです。当時、(株)大同特殊鋼渋川工場の排出したスラグが大量に八ッ場ダム予定地に運び込まれたという証言もあります。(写真下=2015年10月30日)

下田の土捨て場
スラグの仮置き場の看板
下田の土捨て場の青いカバー