国交省九州地方整備局1月14日、「城原川ダム事業の関係地方公共団体からなる検討の場 」 (第3回)を開き、ダム案が最も有利という素案を公表しました。

★国交省九州地方整備局のホームページより 「城原川ダム事業の検証に係る検討について」
 http://www.qsr.mlit.go.jp/n-kawa/kensyo/05-jyoubarugawa/kensyo-jyoubarugawa.html
 
 八ッ場ダムをはじめとする全国のダム事業の見直し政策は、2009年、民主党政権によって打ち出されましたが、2010年、国交省が選んだ「有識者」によって見直し方法が決定され、それ以降、本来の目的である「見直し」とは程遠い、ダム事業にお墨付きを与えるための「検討」作業が全国各地のダム事業で繰り返されています。
 この「検討」作業の最大の問題は、作業を行うのがダム事業を行う行政自体(八ッ場ダムであれば国交省関東地方整備局)であること、作業方法が既存のダム事業による便益をそのまま認め、この便益を満たす代替案をダム事業者が策定し、ダム事業者がダム事業と代替案を比較して、いずれが優れているかを決定することです。

 この手法では、ダム事業者がダム計画の便益に実際は問題があること(八ッ場ダムであれば、利根川の洪水調節に大きな力を発揮するとする起業者の説明に科学的根拠がないこと、利根川流域では水道用水、工業用水ともに水余りの状態であることなど)、ダム事業によって破壊される地域社会や自然、失われる文化等を取り上げることはありませんから、既存のダム事業は代替案より優れているという結論に達し、起業者が事業を中止したいと考える事業以外は「継続」が決定するということが繰り返されることになります。実際、2009年以降の河川行政は、改革されるどころか、ダム事業だけでなく検討作業も税金の無駄遣いという無残な状況です。

 八ッ場ダムの見直しでも同じ手法がとられ、代替案として富士川から関東に導水するという荒唐無稽な代替案などと比較した結果、八ッ場ダム推進の結論が導き出されました。
 城原川ダムの検討でも、同じことが繰り返されました。「治水」におけるダムと代替案との比較の資料が以下に掲載されています。

★国交省九州地方整備局のホームページより 「城原川ダム事業の関係地方公共団体からなる検討の場」
資料-3(治水対策案の評価軸ごとの評価
http://www.qsr.mlit.go.jp/n-kawa/kensyo/05-jyoubarugawa/160114-daisankai-kentounoba(jyoubarugawa)/4siryou3-dai3kai-jyoubarugawa.pdf

 しかし、実際は過大な目標流量を見直し、河道の流下能力を正しく評価すれば、伝統的な治水工法「野越」の活用だけで済み、これから510億円もかかる城原川ダムを建設する必要はありません。詳しくは水源開発問題全国連絡会の解説をご覧ください。
 http://suigenren.jp/news/2015/10/11/7969/

 関連記事を転載します。

◆2016年1月15日 佐賀新聞
 http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/268817
 -城原川ダム 九地整「最も有利」な案示す「検討の場」会合ー

 国の事業見直し対象になっている城原川ダム(神埼市)をめぐり国土交通省九州地方整備局(九地整)と流域自治体が協議する「検討の場」の第3回会合が佐賀市で開かれた。事業主体の九地整が流水型ダム(穴あきダム)案と代替6案の総合評価結果を報告し、ダム案を「最も有利」とする素案をまとめた。コストや実現性が重視される検証で有利とされたダム案を学識者や住民がどう評価するか、今後の焦点になる。

 九地整が7項目にわたり評価した。河道改修と組み合わせた流水型ダム案の2016年度以降にかかる概算事業費は約510億円で、610億~700億円と試算している代替6案より100億円以上少なく、維持管理費を勘案してもコストが最少だった。

 筑後川水系の河川整備計画で想定している毎秒540立方メートルの目標流量を上回る洪水が発生した場合の安全度でも有利と捉えた。ダムは河川整備基本方針で大洪水時の最大流量(基本高水)を毎秒690立方メートルに設定しており、他案は同レベルの洪水が発生した場合、堤防決壊などの可能性が生じると指摘した。

 時間的な観点から見た実現性では、10年後に完全な効果が表れる案はないものの、ダムの本体工事は13年と試算しており、15年後には「最も効果を発現していると想定される」とした。持続性や柔軟性などに関する評価は、コストや実現性を「覆すほどの要素はない」と位置付けた。

 会合には佐賀県の和泉惠之県土づくり本部長、松本茂幸神埼市長、赤司邦昭佐賀市副市長が出席した。和泉本部長との質疑で九地整側は水没予定地の約30種の動植物に関し「配慮や動かすことが必要」と述べ、九年庵や仁比山公園からの眺望では「ダムの堤体が視界に入ることはない」と答えた。松本市長はダム案の早期実現や本体のかさ上げを求めた。

 ダムは洪水調節だけを目的とし、高さ約60メートル、幅約330メートル、総貯水容量355万立方メートル。自然放流する放流口1門を計画している。本体工事は16年度以降に439億円かかり、本年度までにかかった測量設計費などを含めると484億3千万円と試算している。

 九地整は2月にかけて学識者7人からの意見聴取や流域住民らを対象にした公聴会を実施する。

■市民団体「野越し」の評価に不満

 地元住民「ダム実現見えてきた」

 事業見直し対象の城原川ダム建設(神埼市)をめぐり14日に開かれた「検討の場」で、国土交通省は流水型ダムを最善の治水案として評価した。水没予定地区の住民は理解を示すが、流域住民の市民グループは江戸初期の洪水対策の名残とされる越流堤「野越し」について「機能をきちんと評価していない」と不満をあらわにした。

 国交省九州地方整備局は3回目の会合で、山口祥義知事が昨年11月に求めた野越しの技術的な検証結果を示した。現存する9カ所のうち5カ所で家屋に影響が及ばないように受け堤を設ければ毎秒約50立方メートルを調節できるが、「河川整備計画流量を安全に流すためには他の治水方策との組み合わせが必要」と説明した。

 ダムによらない治水対策を探る「城原川を考える会」の佐藤悦子代表=神埼市千代田町=は「水をためる視点でしか野越しを捉えていない」とため息をついた。「流域全体で雨水を受け止めるもの。離れた場所に遊水させ、下流に安全に流す越水機能を理解していない」と指摘した。

 野越しの代替案の事業費が620億円~660億円に膨らむ概算にも「現存する受け堤は小さく、建設費がほとんどかからない。城原川に詳しい専門家は220億円と試算する。国は巨大な堤で算定していないか」と疑問を投げ掛けた。

 水没地区の住民でつくる城原川ダム対策委員会の眞島修会長=神埼市脊振町=は「野越しは後世に残すべき事業と理解しているが、今の時代に通用する技術かは分からない」と国や専門家に判断を任せる見解を示した。国の流水型ダム案について「長年待ち望んできた。実現がやっと見えてきた」と手応えを口にした。

◆2016年1月15日 読売新聞佐賀版
 http://www.yomiuri.co.jp/local/saga/news/20160114-OYTNT50133.html
ー「城原川ダム」最も有利 治水対策巡り九地整検証ー

 国土交通省が建設の是非を再検証している城原川ダム(神埼市)を巡り、国交省九州地方整備局は14日、ダム建設案と、ダムに頼らない治水対策の6案について被害軽減効果やコストなどを検証した結果、

洪水時のみに水をためる「流水型ダム」(穴あきダム)の建設が最も有利な治水案だと提示した。河川改修を含めた流水型ダムの総事業費は、7案の中で最も安い約510億円とした。 

14日に佐賀市で開かれた県や神埼、佐賀の両市の関係自治体が、治水対策の方針などを協議する「検討の場」で示された。

 流水型ダムはほかの6案の約610億~700億円に比べて最も安価とされたうえ、ダムのみが15年後に全工事の完了が可能などとして、「総合的な評価の結果として、最も有利な案はダム」との結論を提示した。自治体関係者からは、速やかな整備を求める声が相次いだ。

 九地整は今後、環境工学などが専門の有識者や、県民を対象にした公聴会を2月頃に開き、山口知事の意見を聞くなどして、対応方針の原案をとりまとめる。

 一方、ダム以外の対策を訴える市民団体の佐藤悦子代表(63)は会合を傍聴した後、「コストの算出方法の根拠も分からず、全てがダムありきで進んだように見える」と批判した。