国土交通省がこのほど、全国のダムの堆砂データの最新版(平成26年度末現在)を開示しました。
 右の表をクリックしていただくと、開示資料が開きます。(全8ページ)
キャプチャ 
 堆砂はダムの寿命に関わる問題です。ダム事業では100年分の堆砂容量を見込んでおり、少なくとも100年はダムが使えることになっています。八ッ場ダムは構想からすでに64年目を迎えていますが、完成すればその後100年間は使えるというわけです。
  
 右の表には、全国の959基のダムの総貯水容量、堆砂容量、平成26年度の堆砂量と共に、これらのダムのある水系、河川名、管理者名、流域面積、竣工年月が載っています。
 ダム事業で示される総貯水容量は、堆砂容量、利水容量、洪水調節容量などの合計です。このうち堆砂容量は、100年間に上流から流れ込んでダム湖に溜まると予想される土砂量です。

 しかし、全国のダムでは、見込みよりはるかに早く堆砂が進んでいるダムが少なくありません。八ッ場ダムにも堆砂容量が見込まれていますが、見込みが過小であるという問題が指摘されています。
 下の図は、国交省八ッ場ダム工事事務所のホームページに掲載されている八ッ場ダムの「貯水池容量配分図」です。
 ダム湖の一番底の標高536.3mから470mのところに「計画堆砂容量」という文字が書かれています。

キャプチャ八ッ場ダム
 
 このように、ダム計画において堆砂容量を机上で考える時は、土砂はダム湖の底の方から平らに貯まっていくことになっています。しかし実際には、上流から流れてくる土砂は川の流れが急速に落ちるダム湖の上流端から貯まり始めますので、たとえ計画堆砂容量通りであったとしても、早い時期からダムの利水機能、治水機能は徐々に低下していきます。ダム湖上流側の堆砂の進行は、河床を上昇させ、ダム湖予定地上流で氾濫が起きる可能性を生じさせます。
 ダムに貯まった土砂を浚渫することにより、ダムの寿命を多少先延ばしすることは可能ですが、浚渫費用、浚渫土砂の捨て場が必要となり、ダムの維持管理費が嵩むことになります。
 
 八ッ場ダムの堆砂見込みが過小に設定されている問題については、こちらのページで解説しています。
 http://yamba-net.org/genjou/saikai/datayomi/datayomi4/

 以下の表は、このほど開示された全国のダムの堆砂データから、堆砂量が堆砂容量を超えているダムと、堆砂容量はまだ超えていないものの問題を抱えているダムの一部を抜き出したリストです。(クリックすると拡大表示されます。)
キャプチャ

 平成26年度調査堆砂量の欄(表の一番右側)が赤く表示されているダムがすでに計画堆砂容量を超えているダムで、167基あります。この中には、古くなった発電専用ダムや農業用ため池などの小規模ダムと共に、巨大ダムも含まれています。電力ダムの中には、計画堆砂容量が見込まれていなかったのか、該当箇所が空欄になっているダムも多数ありました。

 表の左側の欄をオレンジ色に表示したダムを見てみます。
 表のトップにある北海道の二風谷ダム(1997年竣工)は、堆砂量が多いことで知られるダムです。この表では、平成26年度の堆砂量が計画堆砂容量1,430万立方メートルを少し下回っていますが、当初の計画堆砂容量は550万立方メートルでした。ところが堆砂量がわずか7年で550万立方メートルを突破してしまったため、2007年、計画堆砂量を1,430万立方メートル(総量比45%)に引き上げています(参照「二風谷ダム・平取ダムの堆砂について – 室蘭開発建設部」)。それでも平成24年度調査ですでに堆砂量が1,667.7万立方メートルと計画堆砂容量を超えていました。平成26年度は浚渫により堆砂量が減っていると考えられますが、それだけ維持管理費用が嵩んでいることになります。

 巨大ダムの代名詞ともいえる佐久間ダムは1956年竣工、60年前に完成したダムです。堆砂量は100年で貯まる筈の堆砂容量の倍近くになってしまっています。黒部ダム(1960年)、御母衣ダム(1961年)の堆砂量は、昨年開示された平成25年度末の国交省資料ではすでに計画堆砂容量を超えていましたが、浚渫によるものか今回の調査結果ではかろうじて下回っています。しかしいずれにしろ、50余年で100年分の土砂を貯め込んでしまったことになります。

下久保ダム7月 利根川水系のダムとして八ッ場ダムと同時期に計画された下久保ダム(1968年)は、堆砂量が平成25年度末の調査では997.8万立方メートルでしたが、これも浚渫作業によって893.3立方メートルに減りました。しかし、堆砂容量は1,000万立方メートルですから、堆砂の見込みが非常に甘かったことは明らかです。渇水年の今年は、下久保ダムの水位が下がり、ダム湖が大量の土砂を貯め込んでいる状況がよく見えます。
(右写真=群馬県藤岡市の下久保ダム 2016年7月)

 利根川上流の巨大ダムでは、矢木沢ダム、薗原ダム、相俣ダム、藤原ダムが表に載っていますが、なぜか草木ダムと奈良俣ダムが載っていません。
 八ッ場ダムを建設するために、吾妻川の中和事業の一環として造られた品木ダム(1965年)は、土砂に加えて中和生成物がダム湖に貯まるせいで、堆砂量が計画の3倍以上、総貯水容量の85%以上に達しています。酸性河川の吾妻川に建設する八ッ場ダムは、中和事業を前提として成り立っているため、中和事業の核である品木ダムの寿命は、八ッ場ダムに直接影響する問題です。

 このほか、首都圏では相模ダム(1947年)の堆砂量が堆砂容量の約5倍となっており、総貯水容量の三分の一近くが土砂で埋まっています。
 同じく相模川水系の宮ヶ瀬ダムは、15年前に八ッ場ダムに次ぐ事業費をかけて国交省関東地方整備局が建設した巨大ダムですが、平成26年度の調査で、100年間で溜めることになっている堆砂容量の三分の一近くが埋まってしまいました。

 四国の早明浦ダム長安口ダムも堆砂が進行しています。熊本県の球磨川では荒瀬ダム撤去に続き、流域住民が撤去を要望している瀬戸石ダムの堆砂が進行しており、河川環境の悪化、洪水被害の拡大が危惧されています。

 堆砂の進む速度は流域の地理的な特性によって大きく異なります。火山性の脆い地質や急峻な地形に富んだわが国では、大量の土砂を運ぶ川が少なくありませんが、堆砂容量を決定するダム計画策定時には、ダムの効果を強調するために堆砂の予測は甘く見積もられがちです。
 第二次大戦後、大量に建設されたダムが老朽化し、堆砂が進行していく中、ダムの維持管理費が河川行政にとって大きな負担となっていくと考えられます。

 6~7月にかけて下久保ダム(利根川水系の巨大ダムの一つ、群馬県藤岡市)の堆砂の状況を撮影した”哲ちゃん”より写真を提供していただきましたので、掲載します。全て「法久」(ほっく)バス停付近、ダム湖中央より若干上流寄りで撮影されたとのことです。ダムに沈んだ旧十石街道旧道跡や石橋が土砂に埋もれています。

 6月14日撮影
6月ー3

 7月6日撮影。貯まった土砂に草が生えている。堆砂はダムの機能を低下させると同時に、豊かな栄養分もダムに貯め込んでしまう。
7月6日ー3(2)
7月6日ー2