2013年4月23日

 八ッ場ダム予定地に間もなく開業する「道の駅」について詳しい記事が群馬版に掲載されています。
 「道の駅」ができた林地区は、吾妻川沿いの一部の家屋や田畑が水没する「一部水没予定地」です。1960~70年代には川原湯温泉街と共にダム反対闘争を担った地域です。群馬県の調査によれば、ダムを受け入れる前の1979年、林地区の人口は424人でしたが、現在は275人に減少しています(2012年10月現在)。それでも、人口が四分の一に減少した川原湯地区、川原畑地区などの全水没予定地にくらべれば、ダム計画の犠牲は少ないといえます。

 「道の駅」に隣接する不動大橋からは、水没予定地が見渡せます。芽吹きの季節を迎えた今、落葉樹が多い八ッ場ダムの水没予定地は目の覚めるような景観が広がっています。
 この自然も八ッ場ダムができれば、濁ったダムの水で覆われることになります。観光客はダム湖より自然の里山が残ることを望むでしょう。

 記事を転載します。

◆2013年4月23日 朝日新聞群馬版
 http://p.tl/zsAh

 -八ツ場道の駅オープン間近ー

 八ツ場ダム建設で水没する地区の生活再建施設として整備された長野原町林の道の駅「八ツ場ふるさと館」が、27日正午に開業する。21、22の両日、地元住民や関係者向けの内覧会があり、最終準備に駆け回った地区住民は「必ず成功させる」と改めて誓った。

 水没する5地区では、4600億円のダム建設事業費と別に、下流都県の基金で生活再建施設が整備される。内容や立地をめぐって難航している地区もあり、八ツ場ふるさと館が完成第1号となる。八ツ場バイパス(国道145号)に面し、不動大橋(湖面2号橋)のたもとにある。

 町民ら約130人が出品する農産物市場のほか、地元食材を使った焼きたてパンも買えるコンビニエンスストアやレストラン、ダムと観光の情報コーナーも。駐車場は94台分。ダム湖が望める位置に、地区の温泉「かたくりの湯」の源泉を引いた足湯も設けた。

 運営するのは林地区の住民代表9人が昨年5月に設立した株式会社。地区のダム対策委員長、篠原茂さん(62)が社長に就き、地元住民ら約60人が株主になった。水没地区の約10人を含む約35人が働く。

 百貨店で勤務経験がある篠原社長は「八ツ場の知名度は全国区。10年ぐらいダムはできないかもしれないが、ニュースで取り上げられるたびに宣伝になる」と、悩まされてきたダム問題を逆手にとる考えだ。

 接客業は初めてという住民も多く、あいさつから練習を重ねているという。
 元町職員の篠原忠秋さん(65)も取締役に就き、コンビニの店長などを任された。今月上旬、山崎製パンで管理とパン焼きの研修を1週間受けた。「退職後は農業をしていたので不安」というが、「お客さんが来てくれたらうれしい」。

 同じく運営会社の取締役になった造園業篠原久之さん(60)は、「林地区はまとまりが良く、約2年間、準備してきた。景色も良いし、地元のうまいものがある。絶対に成功させたい」と意気込んだ。

 国土交通省八ツ場ダム工事事務所は、長野原町林の広報センター「やんば館」を26日で閉め、27日から道の駅「八ツ場ふるさと館」に機能を移す。ダムができれば水没する旧来の国道145号沿いにあり、2011年12月の八ツ場バイパス開通で交通量が激減。入館者も減っていたという。

 事務所によると、ダム建設で恩恵を受ける下流都県も視野に、地元の苦労や歴史を伝えようと1999年に開館し、昨年度までの来館者は60万人を超える。09年に政権についた民主党の「中止表明」で注目され、10年度はピークの約13万人が訪れたが、国道145号の通行車両はバイパス開通前の約10分の1になったとされ、入館者も昨年度は約5万人に減っていた。

 ふるさと館での展示スペースは5分の1程度。事務所は、やんば館の跡地と資料の活用法は検討中だとしている。(小林誠一)

◆2013年4月25日 読売新聞群馬版
 http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20130425-OYT8T00007.htm

 -進まぬ「八ッ場」不満の住民ー

 八ッ場(やんば)ダム(長野原町)建設予定地の住民の生活再建事業で、初めての本格的な地域振興施設「道の駅 八ッ場ふるさと館」の開業が27日に迫り、大型連休に向けた観光拠点として住民らの期待を集めている。住民らは、民主党政権で八ッ場ダムが「無駄な公共事業」とされ、建設中止騒動に振り回された。建設推進を掲げる自民党政権に移行しても本体着工の動きが進まないことから、不満も募っている。

 道の駅は、長野原町がダム下流都県の基金を活用し、水没する林地区の高台に整備した国道沿いに建設した。ダムが完成すれば湖面を見下ろす立地となるほか、関越自動車道から草津温泉(草津町)に向かう途中の施設となり、観光客の利用も見込んでいる。

 住民の篠原茂さん(62)らが設立した株式会社が指定管理者として運営する。食堂やコンビニ店、野菜の直売所などが入り、住民約30人の雇用につながった。町の人口は約6200人と、約10年で1000人以上減少しており、町職員は「もうダムで衰退する町とは言わせない」と意気込む。21、22日の内覧会は買い物客でにぎわった。

 だが、ダム着工の見通しはいまだに立っていない。政権交代後の政府予算案にもダム本体工事費は盛り込まれず、民主党政権下と同様、工事用道路など関連事業費18億円が計上されただけ。基本計画が目標とする2015年度完成は絶望的だ。

 道の駅の食堂で働く水出耕一さん(58)は、水没する川原湯温泉で30年近く営んだ食堂を昨年3月末に閉じた。「いつになればダムに水がたまるのか」と不満を漏らす。高台移転を目指す旅館経営者も「自民党政権は参院選を前に反対派の反発を恐れ、だんまりを決め込んでいる」といらだちを隠さない。

 篠原さんは「道の駅は水没地域の励みになるので、必ず成功させたい。国土交通相は早くダム建設の道筋を示し、地元を安心させてほしい」と求めている。

 ~~~転載終わり~~~

 地元の上毛新聞に同様のテーマで掲載された社説をこちらに転載しています。
 » 上毛新聞の論説記事「八ッ場に道の駅」

 八ッ場ダムの本体工事が開始されないことについて、自民党政権は参院選を前に反対派の反発を恐れて着手を遅らせているという報道が最近、しばしば流れます。
 八ッ場ダムに反対するのは、自民党や行政によれば、一部の市民や学識者、つまり”反対派”だけで、一般の関東地方の住民はダムの早期完成を望んでいることになっています。首都圏6都県の知事らが都県民の意見を代表して、ダムの早期完成を求めているのも、そのような前提があるからです。
 市民団体や学者が八ッ場ダムの本体着工に反対しても、行政は無視できます。”反対派”とは一般国民のことなのでしょうか。

 八ッ場ダム事業では、地元民と利根川下流域住民とが分断され、しばしば対立の構図に落とし込まれてきました。「自民党政権は参院選を前に反対派の反発を恐れ」本体着工を遅らせているという最近の報道も、対立を助長するものです。
 TPP参加、消費税増税など、多くの国民が反対する政策を推し進める安倍政権が八ッ場ダムの”反対派”を恐れて、本体着手をためらうことなどあるでしょうか? ダムの本体着手が遅れているのは、”反対派”のせいではなく、起業者である国交省の都合によるものと考えるのが自然でしょう。
 1952年に計画が発表され、2000年に完成する筈だった八ッ場ダムが、2015年の完成も「絶望的」とされ、その責任は民主党政権とダム反対派にあるという論法です。国交省と自民党の責任はどこにいってしまったのでしょう?