八ッ場ダム事業における「生活再建事業」は、道路や住民の移転代替地の整備などの土木工事が目立ちますが、本来の「生活再建」の柱は「補償」と「雇用対策」です。このうち、「雇用対策」の最重要課題とされた水源地域振興公社についての記事が今朝の上毛新聞に掲載されました。

◆2014年2月13日 上毛新聞社会面より転載(ネット記事は紙面記事の冒頭のみが掲載されています。)
http://www.jomo-news.co.jp/ns/7013922503728607/news.html
ー振興公社設立を断念 八ッ場で県が説明ー

 長野原町の八ッ場ダム建設事業で県は12日、生活再建施設の運営・維持管理を行うとした県水源地域振興公社について設立を断念する考えを「八ッ場ダム水没関係5地区連合対策委員会」(萩原昭朗委員長)の会合で伝えた。
 県によると、公社は1980年、県が町に示した生活再建策で設立を提案。92年の基金事業計画素案の中で、公社が施設の運営と維持管理を担当し、下流都県から基金を受け入れ、施設の委託費として公社に支出するーなどとしていた。
 県は当時、基金の積み立てによる利子運用で公社運営が可能としていたが、低金利の現状や行政改革で公社を削減していることなどを設立断念の理由として説明した。下流都県が維持管理費まで負担できないとしていることも挙げた。
 県は2010年度から、水源地域対策特別措置法に基づき町が進める生活再建事業で工事費の5%が下流都県の負担になったことに触れ、「費用面で公社に代わる策を進めてきた。今後も地元に有利になる支援を交渉したい」と話した。
 一方、この日の会合に参加した住民からは「説明が足りない」「公社に代わる対策を示せ」などの意見が続出した。同委員会の篠原憲一事務局長は「今後、委員長会議を開いて、対応を協議したい」と話した。

~~~転載終わり~~~

 八ッ場ダム予定地の住民は、ダム事業によって土地を提供したり、仕事を失うなどの犠牲を強いられてきましたので、生活再建対策は非常に重要です。「補償」については地元住民と国、群馬県との間で2001年に補償基準が締結され、これにのっとって補償金が支払われてきました。しかし、「雇用対策」については、地元がダム計画を受け入れてから30年近くたった今も実現せず、多くの住民が転出していった原因ともなっています。

 1985年、地元が八ッ場ダム計画反対から受け入れへ転じるきっかけとなった「生活再建に関する覚書」(群馬県と長野原町が締結)では、200人の雇用を創出する「水源地域振興公社」を設立し、八ッ場ダム関係都県の支出により、これを運営するという説明がなされていました。これは当時の川原湯地区の世帯数に匹敵します。ダム事業によって雇用の場である川原湯温泉街がなくなってしまうという不安にさいなまれる住民にとって、公社ができれば公務員と同じように報酬が得られるという安心感は大きな拠り所となりました。

 ところが、2007年、群馬県は地元に対して、下流都県が公社の維持管理費を負担する気がないことを明らかにしました。当初から下流都県には負担の意思はなかったとの説明に、住民らは激しく反発し、それまで情報を伏せてきた群馬県の不誠実な態度を非難しました。
 さらに群馬県は、2009年1月には、生活再建のための基金事業の予算を249億円から178億円に三割削減すると説明しました。長野原町はこれに同意しませんでしたが、この間、長野原町の町長をつとめてきた高山欣也氏は、国と群馬県の意に沿う言動に終始し、この問題はうやむやのうちに5年が経過しました。

 高山町長は14日の町議会で、4月の町長選に出馬しないことを表明すると見られており、群馬県が12日に公社について地元に「断念」を伝えたのは、これを見据えての動きと考えられます。

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 群馬県議会における水源地域振興公社についての質疑の内容が、群馬県公式ホームページの以下のページにまとめられていますので、参考までに転載します。
 http://www.pref.gunma.jp/gikai/s0700414.html

 八ッ場ダム対策特別委員会(平成24年度関係)平成24年3月13日
(9)水源地域整備公社について

質問:公社構想の代替案である水源地域活性化事業の具体的な中身及び事業実施のためのランニングコストの負担についてどうようになっているか。

答弁:公社は基金を積み立て、その金利で運営していく計画であったが、現在は低金利であり、いろいろな意味で難しいということを町や町議会に説明している。県としては様々な施設に対し、経営相談等の各種サポートを行い、身の丈に合い、採算が成り立つ、なおかつ地域振興・生活再建に役立つ施策を基金事業だけではなく、全体として取り組んでいくという姿勢で、道の駅、クラインガルテン等の事業を進めている。

質問:維持管理費については国が一定期間維持管理費を負担するような説明があったと思うが、その後の進捗状況はどうか。

答弁:川原湯温泉代替地の配湯施設については、国が今年5月の暫定配湯開始に向けて配湯管の工事を実施中である。維持管理費については国と地元で補償協定締結に向けて協議を進めている。

質問:生活再建事業のランニングコストについては、国、下流都県と率直に話し合うべきではないか。

答弁:下流都県の基本的なスタンスは地域振興・生活再建に資する事業については協力するとしている。維持管理費についてはいろいろな要素から難しいという回答を得ている。群馬県としては、採算性の検討を含めて施設が維持できるような方策を地元と相談しながら進めている。

質問:維持管理費について下流都県は厳しいということであれば、資金面のサポートについて国と県で協議して、新たなサポート案について論議を進めないといけない状況であると思うがどうか。

答弁:資金面ではなく、経営相談、採算性検討、下流都県からの誘客等のソフト面について、今後検討を進めていく。