2月14日から15日にかけての大雪は、群馬県では死者が8名出るなど、大きな被害をもたらしました。  川原湯アーケード下「全面通行止め」看板(縮小) 

 八ッ場ダム予定地でも、吾妻渓谷や川原湯温泉で雪崩が発生したり、水道管が壊れるなど、観光に支障をきたしました。ダム事業によってつくられた付け替え国道の除雪が優先されたこともあって渓谷沿いの国道の除雪は特に遅れ、通行可能となったのは大雪から一週間以上たった26日でした。
 右の写真は、川原湯温泉街の入り口に立てられた国道の全面通行止めを知らせる看板です。

 
 吾妻渓谷は四季折々に美しい景観を見せてくれますが、雪景色も格別です。下の写真は、最も川幅が狭まる「鹿飛(しかとび)」付近です。気温が低下すると川面も凍りつきます。2雪の吾妻渓谷(縮小)

 吾妻渓谷の上流端、「八ッ場大橋」から下流側にある「滝見橋」を見下ろした景色です。北向きの右岸側(川原湯地区)は雪が多く、南向きの左岸側(川原畑地区)は雪がとけるのが早いのが写真でもわかります。川原湯地区では今回の大雪で1メートル近くも雪が積もりました。
 これより下流に八ッ場ダムのダム堤ができる予定ですので、ダムができれば周辺一帯が水底に沈みます。
雪の滝見橋(縮小)2

 吾妻渓谷の左岸(川原畑地区)では、八ッ場ダム本体左岸上部掘削工事が始まっています。対岸の川原湯地区から撮ったのが下の写真です。黒と白の墨絵のような山並みの中に一か所だけ、茶色く三日月を伏せたような形の、地肌がむき出しになっている所があります。これが工事現場です。
 この工事は、昨年5月、「本体準備工事」の一つ、「作業ヤード造成」として記者発表されました。山を掘削して平らにした場所に、八ッ場ダム本体工事のための作業ヤードがつくられることになります。工事は昨年12月に始まり、工期は今年10月末までです。
 本体左岸掘削を対岸よりのぞむ(縮小)2

 
 「本体左岸上部掘削工事」は雪の中でも続いています。下の写真は、工事現場を横から撮りました。用地の周りに囲いをして、山を掘削しています。掘削土量は約10万立方メートル。右下の吾妻渓谷ではJR吾妻線が今も走っていますので、網をはって落石を防止することになっています。若築建設(東京都)が3億600万円で落札したこの工事は、来年10月末まで行われることになっています。
本体左岸掘削工事3(縮小)

 以下の写真は、昨年12月13日に撮った同じ工事現場の写真です。周りに囲いがなく、掘削した山の斜面の地層がよく見えます。地質の専門家によれば、白や灰色に変色しているのは、地下のマグマの影響で熱水変質している地層ということです。
 本体左岸上部掘削工事(縮小)

川原湯温泉新旧(縮小)こちらは川原湯地区です。中央に白く見える三角形が雪に覆われた付け替え県道の法面(のりめん)で、その左側に台地のように見えるのが川原湯地区の打越(うちこし)代替地です。もともとの温泉街は、右下の林の中にあります。撮影の翌日、気温が上昇し、法面を覆っていた大量の雪が雪崩のように落ちました。
 川原湯温泉街は八ッ場ダムで水没するため、山の中腹を切り開いて人工造成地として打越代替地を整備しています。これまでの山懐に抱かれた温泉街ではムササビや野鳥が旅館からよく見えましたが、代替地は大木がなく、鳥の飛来も少ないようです。

王湯と丸木屋2縮小
雪の王湯(縮小)現在の川原湯温泉街です。左側が共同湯の王湯です。水没予定地での営業は3月末で終わる予定でしたが、移転予定の代替地の整備が遅れているため、もうしばらくは現温泉街での営業が続きます。川原湯温泉のもともとの泉源に隣接する王湯は、自然湧出の温泉を格安(300円!)で堪能できるとあって、閉鎖を惜しむ多くの観光客が訪れています。

 王湯の向かい側では、老舗の丸木屋旅館の解体作業が進んでいます。丸木屋旅館の代替地への移転により、現温泉街での営業は、やまきぼし旅館とホテルゆうあいの二軒のみとなりました。

  王湯会館(縮小)
 左の写真の奥に見えるのが、代替地に建設中の王湯会館です。建物は間もなく完成の予定ですが、道路や駐車場が未整備のため、代替地での王湯の開業は遅れそうです。

 代替地での温泉の配湯は、現温泉街で使われてきた泉源から引き湯することになっています。今のところ、ダム事業によってボーリングで掘り当てた新源泉のみが引き湯されており、自然湧出の旧源泉の引き湯の見通しは不透明です。
 川原湯温泉の泉源はもとは群馬県の所有でしたが、2010年に県が所有権を地元に譲渡しました。泉源から遠い代替地への引き湯は、泉質、湯量の安定など多くの難題を抱えています。県有泉でなくなったことから群馬県はこれらの問題解決を地元にゆだねていますが、生活再建問題は群馬県の責任において行われているのですから、川原湯温泉再建の要となる温泉の問題解決に県は正面から取り組むべきです。

 最後に、川原湯地区と川原畑地区の水没予定地を結ぶ千歳橋周辺の景色です。
 手前の赤い橋がJR吾妻線の鉄橋、後方の大きな橋が建設中の湖面1号橋です。この湖面橋は正式名称が「八ッ場大橋」となりました。吾妻渓谷の現国道にある橋の名称と同じですので、今は「八ッ場大橋」が二つあることになります。
 雪の千歳橋(縮小)

 千歳橋へはJR吾妻線の「川原湯温泉」駅から徒歩5分ほど。八ッ場ダムができると、千歳橋はもちろん水に沈み、湖面1号橋の橋脚の上の方まで水がたまることになります。

 本当にこの土地がダムに沈んでしまうのでしょうか。

(雪景色の写真撮影:2/25~26)