国交省関東地方整備局が八ッ場ダムの定礎式を3月4日に開催するとの記者発表を行いました。

★国交省関東地方整備局のホームページより
 http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/yanba_00000063.html
 八ッ場ダム建設事業に伴うダム堤体の本格的な築造にあたり、関係者各位への謝意を表すとともに、礎石を添えてダムの永久堅固と安泰を祈願するために、「八ッ場ダム定礎式」を下記のとおり開催しますのでお知らせ致します。(以下略)

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 関連記事を転載します。

◆2017年2月9日 上毛新聞
ー八ッ場工事本格化 来月4日に定礎式ー

 八ッ場ダム(長野原)の本体工事が本格化するとして、国土交通省八ッ場ダム工事事務所は8日、ダムの「定礎式」を3月4日に行うと発表した。国や県などから関係者が出席する見通し。
 式ではダム堤体に礎石を埋め、安全を祈願する。同ダム事業は昨年6月にダム本体のコンクリート打設が始まり、24時間態勢で堤体を造っている。試験湛水などを経て、2019年度中の完成を見込んでいる。

—転載終わり—

DSCF9587 八ッ場ダムの本体工事は2015年1月に開始されました。ダムの工期は2020年3月末(2019年度)です。
 国交省によれば、八ッ場ダムの本体工事は順調に進んでいるとのことですが、実際はどうなのでしょうか。
写真右=水没予定地を流れる吾妻川のかなたで八ッ場ダム本体工事が進められている。八ッ場大橋の影が十字架のように見える。2017年1月31日撮影

 八ッ場ダムと同様、国交省関東地方整備局が事業主体となって2012年に完成させた湯西川ダム(栃木県)は、堤体工が約100万立方メートルでした。八ッ場ダムのコンクリート量は、国交省関東地方整備局の説明によれば、Ⅰ期工事が101万立法メートル、その他にⅡ期工事などで15万6,754立方メートルが予定されています。(参考記事)八ッ場ダムの方がコンクリート量は多いですが、湯西川ダム本体工事の進捗の経過は八ッ場ダム本体工事の今後を考える上で参考になるかもしれません。

 湯西川ダム本体工事の受注業者は鹿島・清水建設共同企業体(JV)でした。八ッ場ダムの入札の際も、同JVが本命でしたが、入札期間の2014年3月に鹿島建設が東京湾トンネル工事で死亡事故を発生させたため、八ッ場ダムの入札参加資格を失いました。その結果、清水建設が鉄建、IHIと新たにJVを組んで落札したのですが、工期短縮を最大課題としている八ッ場ダムでは、鹿島建設の技術が採用されています。(参考記事

 湯西川ダムは完成後の2015年9月、ダム下流の水害で甚大な被害が発生し、巨大ダムの建設より中流域の河川改修を優先すべきだったと批判されてきましたが、本体工事は順調に進められたとされています。
 湯西川ダムと八ッ場ダムの工程を比較してみます。

キャプチャ 

 八ッ場ダム本体工事は当初公表された予定より遅れてきています。
 湯西川ダムでは本体工事の契約が締結されてから3か月足らずで起工式が行われましたが、八ッ場ダムでは6か月近くかかっています。これは八ッ場ダムの本体工事予定地をJR吾妻線と国道が走っていたからです。2014年10月にJR吾妻線が付け替えられ、同年11月に国道が廃線化されて初めて本体工事に着手する準備が始まりました。
 起工式から定礎式まで湯西川ダムでは1年7ヶ月でしたが、八ッ場ダムでは1年11ヶ月です。八ッ場ダムの本体工事現場は地質が悪く、基礎岩盤の掘削量が増加したことなどにより、当初の想定より掘削工事が遅れ、その結果、本体コンクリートの打設工事開始が予定より半年程度遅れ、2016年10月からとなりました。

DSCF9590 この先、八ッ場ダムの本体工事はどうなるのでしょうか。
 湯西川ダムでは定礎式からわずか1年4ヶ月でコンクリート打設が完了し、その2ヶ月後には試験湛水が始まっていますが、八ッ場ダムでは試験湛水まで2年7ヶ月が見込まれています。八ッ場ダム事業では、湛水によって住宅が多数立ち並ぶダム湖周辺の地すべりの危険性が懸念されており、これから地すべり対策と水没住民の移転代替地の安全対策が実施されることになっています。水没予定地の発掘調査や道路、砂防などの関連工事もまだ大量に残されています。このため、湯西川ダムのように短期間で試験湛水を始めるのは無理だと考えられているのです。
写真右上=吾妻川の両側に広がる川原畑地区と川原湯地区は、八ッ場ダムに沈むことになっている。国交省は残る住民に今年3月末までに移転するよう求めている。2017年1月31日

 八ッ場ダムでは現計画における工期が2020年3月末となっており、試験湛水を始めるまでに本体工事や地すべり対策工事等を終了させなければならないので、試験湛水の期間をわずか半年間しか見込んでいませんが、湯西川ダムでは試験湛水に一年近くかかりました。湯西川ダムの総貯水容量は7,500万立方メートル、八ッ場ダムの総貯水容量は1億750万立方メートルですから、たとえ八ッ場ダムの試験湛水が湯西川ダムのように順調であったとしても、八ッ場ダムの方が湛水試験には時間がかかる筈です。ダムの試験湛水ではまず前半で総貯水容量を満水にし、後半ではダムごとに決められた堆砂容量を除いた部分(八ッ場ダムの場合は、総貯水容量1億750万立方メートルから堆砂容量1,750万立方メートルを引いた9,000万立方メートル)を空にしなければなりません。

 また、八ッ場ダム事業では、試験湛水中に地すべりが発生すれば、さらに対策工事を実施しなければなりません。試験湛水中に地すべりが発生した近年の事例で見ると、大滝ダム(国交省、奈良県)ではダム完成が9年延期となり、追加の地すべり対策費が308億円かかりました。また、滝沢ダム(水資源機構、埼玉県)では、ダム完成が5年延期となり、追加の地すべり対策費が145億円かかっています。

 さらに、八ッ場ダムの場合は、東京電力・松谷発電所がダム予定地を流れる吾妻川の先行水利権を持っているという問題があります。東京電力は吾妻川のダム予定地上流で大量に取水しており、吾妻川の水の大半を貯水には使えませんので、短期間でダム湖を満水にするのは不可能です。
 これらの状況から考えて、八ッ場ダムの完成が現計画の2020年3月より遅れることは必至です。

 【参考】「湯西川ダムの試験湛水」(国交省関東地方整備局 鬼怒川ダム統合管理事務所)
  http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000079814.pdf

写真下=八ッ場大橋より、川原畑地区の代替地を望む。住宅が並ぶ穴山沢は、30メートル以上の高盛り土の人工造成地。その右手に見える岩山周辺は、二社平(じしゃだいら)の地すべり地。樹木を伐採、地形を改変し、地すべり対策工事が行われる。2017年1月31日。
二社平地形改変