参議院選挙を控え、八ッ場ダムに関する公開アンケートを比例区届け出12政党を対象に実施しました。その結果をお伝えします。

●各政党へ公開アンケートの送付 6月27日

●回答〆切日 7月10日

●〆切日までに回答した政党(到着順)ー社民党、日本共産党、民主党、緑の党、生活の党、自民党

●7月11日現在、回答が届いていない政党ー公明党、みんなの党、日本維新の会、みどりの風、新党大地、幸福実現党

 多忙な選挙戦さなか、公開アンケートにご協力いただいた各政党に敬意を表します。

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1. 八ッ場ダムは様々な経過を辿りながら、今年度の予算に本体関連工事費が計上され、来年度にも本体工事に着手するとされています。

 八ッ場ダムを建設するべきだと思いますか?

ア 建設するべき  自民党

イ 建設するべきでない  社民党、日本共産党、緑の党、生活の党 

ウ その他 民主党―河川整備計画については、国土交通省が有識者会議にも諮らず原案を公表するなど、制定手続きに問題があると考えております。もう一度、科学的妥当性を様々な角度から検証し、結論を得るべきであると考えます。

2.八ッ場ダム予定地は地質が脆弱です。2009年までの自公政権下では、地すべり対策費は6億円弱しかダム事業費に組み込まれていませんでしたが、その後、民主党政権下の2011年、国交省は追加の地すべり対策費を代替地の安全対策も含めて150億円と試算しました。

しかし、地すべり対策の詳細な現地調査はまだ行われておらず、工法によっては対策費が増加し、対策費用は150億円では足りないと指摘する専門家もいます。

一方、大沢群馬県知事ら関係都県知事は、八ッ場ダムの事業費増額には応じないと表明しています。この地すべり対策費の問題について、ご見解をお聞かせ下さい。

ア 現事業費に組み込まれている約6億円弱の対策費用で問題ない。 

イ 2011年に国交省が試算した約150億円の追加対策を実施する必要がある。

ウ 150億円は試算であるので、今後、詳細な現地調査、湛水試験を行えば、安全を確保するためにさらに増額が必要になる可能性が高い。

社民党、日本共産党、民主党、緑の党、生活の党

エ その他

自民党―今後詳細な現地調査が行われ、必要な対策を講じると承知しています。

3. 八ッ場ダムは現在の計画では2015年度末に完成するとされています。しかし、2012年2月2日の衆議院予算委員会において、当時の前田武志国交大臣は、「本体に着工してから、7年で完成すると想定されている」と答弁しました。

 群馬県の大沢知事は、工期延長のための計画変更をすみやかに実施し、地元住民が生活設計を進められるよう、ダム完成までの工期を明らかにするよう国に求めています。(2013年5月17日上毛新聞記事など)

 一方、下流の東京都、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県は工期延長には応じないとしています。ダムの工期についてのご見解をお聞かせ下さい。

ア 八ッ場ダムは現計画通り、2015年度に完成すべきである。

イ 八ッ場ダムの工期延長は必至であるので、八ッ場ダムの基本計画を変更すべき。

民主党

ウ 八ッ場ダムは事業の遅延が続いており、本体完成後の試験湛水中に地すべりの発生も起こりうることであるので、来年度に本体工事に着手したとしても八ッ場ダムの完成は2020年度よりさらに遅れる可能性が高い。

社民党、日本共産党、緑の党、生活の党

エ その他

自民党―早期完成に向けて全力を傾注すべきです。

4. 地元ではダム事業による人口減少と、それに伴う地域の衰退が深刻な問題となっています。八ッ場ダム事業では、ダム湖観光による地域振興を目指していますが、ダム湖は水質悪化の問題や、ダムの操作による夏場の大幅な水位低下の問題があると指摘されています。ダム湖観光と地域振興についてのご見解をお聞かせ下さい。

ア ダム湖によって観光客の集客が可能であり、地域振興が実現する。

イ ダム事業による地域振興策には限界があり、ダム事業と切り離した新たな地域振興策が必要である

社民党、日本共産党、民主党、緑の党、生活の党

ウ その他

自民党―ダム湖を前提とした地域振興を望む地元の意向を踏まえながら地域振興に取り組むべきです。

 

5. わが国では、ダム事業を中止した後、地元の生活再建、地域振興を図る法制度がありません。このため、地元住民はダム事業に依存せざるを得ず、ダム事業の見直しを困難にしています。

民主党政権下の2012年、政府はダム事業中止後の地域振興特別措置法案を国会に提出しましたが、12月の政権交代によりこの法案は廃案になりました。その後、現政権では、ダム中止後の法整備についての動きがみられません。

 ダム中止後の地域振興等の法整備についてのご見解をお聞かせ下さい。

ア.ダム中止後の法整備に早急に取り組む必要がある。

社民党、日本共産党、民主党、緑の党、生活の党

イ.現在進められているダム事業は中止する必要がないので、法整備は不要である。

ウ.その他

自民党―地域の実情にも配慮して法案の内容やその必要性も含めて検討すべきです。 

緑の党よりのコメントー八ッ場ダムは治水上及び利水上において、その必要性をはじめとして問題が多い。また地質上も危険性が払拭されていない。そもそも本ダムの検証を、事業を推進する国交省関東地方整備局が進めてきたことに問題がある。徹底した公平性と公開性が担保された議論の場が必要である。

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 今回の公開アンケートでは、社民党、日本共産党、緑の党、生活の党による回答がすべての質問項目で一致しました。これらの政党は、八ッ場ダム問題についての政策に関する限り、ほぼ同一意見であることが明らかになりました。

 一方、民主党は2009年総選挙の選挙公約(マニフェスト)では、「八ッ場ダム中止」を目玉政策として掲げましたが、政権与党になると国交省の政務三役に就いた国会議員がいずれも官僚体制に取り込まれ、政治主導を実現できないまま下野しました。2011年12月の前田武志国交大臣による「八ッ場ダム継続宣言」はこれを象徴する出来事でしたが、民主党内には公約違反に反発する声が強く、結局、民主党政権下では八ッ場ダム本体工事は凍結されたままでした。その後、民主党のダム反対議員らは、八ッ場ダム計画の上位計画である利根川河川整備計画が未策定であることを拠り所とし、最後まで八ッ場ダム本体工事を阻止しました。しかし、自公政権の復活により、利根川の河川整備計画は強引に策定され、民主党が選んだ利根川有識者会議の学識者委員らの意見は無視されました。今回の民主党の回答は、関東地方整備局による河川整備計画策定の強引さを踏まえたものです。

 昨年末の総選挙もそうでしたが、今回の参院選でも民主党の劣勢が伝えられています。国民の多くが自民党政治による八ッ場ダムの利権構造の解消を民主党に期待していました。これに手をつけず、現実と妥協したことが民意の離反を招き、その後、八ッ場ダムに反対し続けた議員も含め、離党、落選などの苦境に立たされることになりました。河川整備計画策定の強引さは、自公政権が国交省の暴走を許容していることを示すもので、確かに「制定手続きに問題がある」とする民主党の見解は、この問題に深くかかわった同党だからこそ指摘できることです。しかし、緑の党のコメントにあるように、民主党政権の失敗の根本的な原因は、最初の国交大臣だった前原誠司氏がダムを推進してきた国交省関東地方整備局が八ッ場ダムの検証作業を行うことを認めてしまったことでした。「もう一度、科学的妥当性を様々な角度から検証し、結論を得るべきである」という意見は、この過ちを認めたものとも受け取れます。

 自民党は各政党の中で唯一、「八ッ場ダムを建設するべき」と回答しています。同党は一貫して八ッ場ダム推進の立場ですから、この回答は予想通りですが、その他の回答では、半年前の前回2012年総選挙の際の回答と比較すると、同様の質問に対して異なるものが見受けられます。 http://p.tl/jwE6

 事業費増額に関する質問2では、半年前の回答では「昨年のダム検証で国交省が示した安全対策を実施すれば問題ない。」としていましたが、今回は「今後詳細な現地調査が行われ、必要な対策を講じると承知しています。」としています。八ッ場ダムの地すべり対策費は2009年前の自公政権下では、約6億円とされていましたが、民主党政権下のダム検証により約150億円の安全対策が必要と試算されました。自民党は半年前の回答では、約150億円の安全対策を実施すれば問題ないとしていたのですが、今回は同様の項目を選択しませんでした。約150億円という金額があくまで机上の試算であり、詳細な現地調査はまだ行われていないことを踏まえた回答です。

また、完成予定年度の遅延に関する質問3では、前回の回答では、「八ッ場ダムは現在の計画どおり2015年度に完成させるべきである。」としていましたが、今回は同様の項目を選択せず、「早期完成に向けて全力を傾注すべきです。」と、明確な回答を避けています。  ダム中止後の法整備については、前回は、「(民主党政権下で政府によって)国会に提出された法案は不十分であるので、ダム事業中止後の法案を新たに作り、国会に提出する。」と、共産党、社民党などと同様の回答を選択していましたが、今回は「地域の実情にも配慮して法案の内容やその必要性も含めて検討すべきです。」と後退しています。

いずれの質問においても、野党であった前回より現実的な回答となっていますが、事業費増額、完成予定年度、ダム湖観光による地域振興、ダム中止後の法整備、いずれにおいても国交省関東地方整備局の方針に沿った回答となっており、現政権下で八ッ場ダム事業がどのように進めたらよいと自民党が考えているのか、具体的な展望は示されていません。

 回答が届いていない公明党は、自民党と共に現安倍政権を担っており、国交大臣を出していますので、八ッ場ダムについての政策に関しては、非常に大きな責任がある立場です。また、みんなの党、日本維新の会も、国会において一定勢力を占めており、中には八ッ場ダムについて積極的に発言している候補者もいます。政党としての方針を選挙前に明らかにしないのであれば残念です。

 〆切期日を過ぎても、回答が届きましたら、このページでお知らせする予定です。

《参考記事》

八ッ場ダム関係1都5県の各候補者への公開アンケート結果

●東京選挙区 http://p.tl/DixB

●千葉選挙区 http://p.tl/X45X

●埼玉選挙区 http://p.tl/sD-0

●群馬選挙区 http://p.tl/JtgC

●茨城選挙区 http://p.tl/PA49

●栃木選挙区 http://p.tl/RHEf

前回2012年12月総選挙前に各政党に実施した公開アンケート結果とコメント

 http://p.tl/jwE6  http://p.tl/IkAD