国土交通大臣は今年4月22日、八ッ場ダム建設工事について、土地収用法に基づく事業認定の告示を行いました。
キャプチャ この事業認定についての資料を5月20日に情報公開請求したところ、7月22日にその結果が通知されました。(右の画像をクリックすると、通知書が開きます。)

 事業認定とは、八ッ場ダムが公共事業としてふさわしいと認定し、強制収用を可能とすることです。八ッ場ダムの事業者である国交省関東地方整備局が申請し、同じ国交省の本省が認定するというものですから、手続きそのものは形式にすぎません。
 水没予定地などの事業用地に残る住民は、申請のあった時点で、「いずれは強制収用になる」と、立ち退きを迫られます。八ッ場ダム予定地では昨年3月末の時点で、水没予定地に4世帯が残っていましたが、事業認定の申請があった昨年4月10日から今年3月末までにすべての世帯が契約を結んだことが国交省の資料で確認できます。

 八ッ場ダムが「公共事業としてふさわしい」と認定するために、国交省は昨年6月に公聴会、今年3月に非公開で社会資本整備審議会・公共用地分科会を開催しました。また、ダム予定地を抱える群馬県は「事業認定」についての意見募集を行いました。

 今回開示された資料を以下に掲載します。

キャプチャ議事録 右の画像は、社会資本整備審議会・公共用地分科会の議事録(10ページ目)です。「開示」とは名ばかりで、議事録のうち、肝心の委員の発言と国交省側の受け答えはすべて黒塗りでした。

 以下の青字をクリックしていただくと、3月4日と16日の議事録、これらの会議の配布資料目録が開きます。
 〇2016年3月4日 社会資本整備審議会公共用地分科会(第30回)
 〇2016年3月16日 社会資本整備審議会公共用地分科会(第31回)
 〇配付資料目録

 上記の配布資料目録には、目録名が次のように書かれています。
1  付議文
2  付託文
3  事業の概要
4  意見書における主な反対意見の要旨と当該意見に対する事業認定庁の見解を併記した意見対照表
5  事業認定処分の可否に関する事業認定庁の考え方
6  事業認定申請書(申請書及び添付書類第1号事業計画書)
7  公聴会の記録
8  意見書
9  新聞記事

 国土交通省の公式サイトの八ッ場ダムの事業認定に関するページには、事業認定に関する「意見書及び公聴会における主な反対意見の要旨と当該意見に対する事業認定庁の見解とを併記した意見対照表」や事業概要、公聴会の議事録などが掲載されています。
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/land_expropriation/sosei_land_fr_000406.html

キャプチャ 国土交通省のサイトに公表されておらず、今回の情報公開で開示された資料に「意見書」があります。
 八ッ場ダムの事業者である国交省関東地方整備局が「事業認定の申請」を昨年4月10日に行ったことについて、意見のある人は誰でも群馬県知事に意見書を提出することができました。とはいえ、提出期限は4月27日と、実質2週間しかなく、「事業認定」そのものが行政内部のわかりにくい手続きです。国と関係都県を挙げて既定路線で進められている「公共事業」について、個人情報(名前と住所)とともに行政に意見を提出することは容易なことではありません。それでも国交省の資料によれば、提出件数は139通に上ったとのことです。
 それらの意見書が差出人の個人情報を伏せて公開されました。右の画像、あるいは以下の青文字をクリックすると、「意見書」の全ページをご覧いただけます。
 「八ッ場ダム建設工事の事業認定申請に関する意見書」

 国交省の資料によれば、反対意見の内訳は、八ッ場ダムの効果(治水、利水など)、八ッ場ダムが誘発する危険性(地すべり、水没住民の移転代替地、ダムの基礎岩盤、有害スラグなど)、環境(動植物、吾妻渓谷、水質など)のほか、ダム事業費、ダム事業における生活再建、事業認定手続きそのもの、など多岐にわたります。これに対する「事業認定庁(国交省)の考え方」は、従来の国交省の主張を繰り返すものが多く、事業認定とは関係ないとして内容に踏み込まないものが少なくありませんでした。

 開示された「意見書」の一部の画像を掲載します。

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キャプチャ5

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 意見書の中には、水問題、行政法、環境社会学、地質学など、専門的な立場から詳しいデータを提示して、問題点を指摘しているものもありましたが、国交省は納得のゆく説明をしないままです。
 水問題研究家(元・東京都環境科学研究所研究員、当会運営委員)の嶋津暉之さんが提出した意見書は、以下をクリックするとご覧いただけます。
 八ッ場ダム事業認定申請への意見書(嶋津暉之)
  
 このたびの情報公開請求の項目には、「土地収用法第22条に基づく意見聴取とその回答」も含まれていましたが、「意見聴取は実施しておらず、当該文書は不存在」として不開示となりました。
 土地収用法第22条では、「必要があると認めるときは有識者の意見を聴取できる」としています。
 八ッ場ダムより少し前に事業認定の告示が行われた長崎県営の石木ダムでは、専門家の意見聴取が行われたのですが、八ッ場ダムでは長い歳月をかけて地元住民を抑圧し続け、行政に反対の声を挙げられる住民がいなくなった結果、治水や利水、地質等について多くの問題が指摘されているにもかかわらず、国交省は専門家の意見を聴くことさえせずに事業認定の告示を行ったことになります。