さる8月19日に八ッ場ダム事業の仮締切工事の入札公告が行われたことを受け、八ッ場あしたの会では関連事項について公開質問書を国交省関東地方整備局長に送りました。
 国の名勝・吾妻渓谷の中で行われるこの工事は、2009年にできあがった仮排水トンネル(転流工)の吞口(吾妻渓谷の滝見橋からよく見えるコンクリートの構造物)の下流側に高さ29メートルの小さいダムを造り、さらに、約400メートル下流にある吐口の直上流で締切り工事を行い、吾妻川の水を仮排水トンネルに流して川の流れをバイパスさせ、本体工事を行うための工事です。
 
 国交省八ッ場ダム工事事務所のホームページより 仮排水トンネル(転流工)
 http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/kouji/kawaraba/08/kawaraba08.htm
 
 入札公告によれば仮締切工事は来年7月まで行われるとのことで、渓谷に大きな影響を及ぼすことが予想され、本体工事も含めて多くの人々が工事の成り行きを心配しています。しかし関東地方整備局からは対外的な説明が何もありません。そこで、まず事実関係を確認するために公開質問書を送ることになりました。
 公開質問書の本文と共に、関東地方整備局による入札公告の資料を転載します。

2013年8月22日
国土交通省関東地方整備局長 深澤 淳志 様
八ッ場あしたの会 代表世話人 野田知佑ほか

          八ッ場ダムの仮締切工事と関連事項に関する公開質問書
 国土交通省関東地方整備局は8月19日に八ッ場ダムの仮締切工事の入札公告を行いました。本体工事に備えて、吾妻川の水を仮排水トンネル(転流工)に流せるように、完成済みの仮排水トンネルの吞口の直下に高さ29メートルの小ダムを造り、さらに、約400メートル下流にある吐口の直上流で締切り工事を行うものです。開札は10月9日、工事期間は来年7月末までとなっています。
 しかし、八ッ場ダム建設事業に関わる重要な工事、名勝・吾妻渓谷に甚大な影響を及ぼす工事が対外的な説明なしに進められることは大きな問題です。
 以下、この仮締切工事とその関連事項について不明なことを質問しますので、真摯にお答えくださるよう、お願いします。
 ご回答は、9月6日(金)までにFAXまたはメールでお送りください。                 

1 名勝・吾妻渓谷への影響について
 国の名勝に指定されている吾妻渓谷は「関東の耶馬溪」と称される素晴らしい渓谷ですので、多くの観光客が遊歩道および現国道を散策して、渓谷美を楽しんでいます。仮締切工事期間中および仮締切工事完成後、吾妻渓谷の観光への影響について質問します。
1-1 仮締切の工事期間中の影響
① 滝見橋は利用できるのでしょうか。
② 現国道の仮排水トンネル区間の散策には支障はないでしょうか。
③ 右岸側にある山中の遊歩道は利用できるのでしょうか。
④ 以上の他に仮締切の工事期間中、吾妻渓谷の散策への影響はあるのでしょうか。

1-2 仮締切工事完了後の影響
① 滝見橋は利用できるのでしょうか。
② 現国道の仮排水トンネル区間の散策に支障はないでしょうか。
③ 右岸側にある山中の遊歩道は利用できるのでしょうか。
④ 以上の他に仮締切工事完了後、吾妻渓谷の散策への影響はあるのでしょうか。

1-3 打越代替地から吾妻渓谷・見晴し台への遊歩道
① 打越代替地から吾妻渓谷・見晴し台への遊歩道がつくられていますが、現在は閉鎖されています。この遊歩道がいつ利用できるようになるのでしょうか。
② 川原湯温泉にとって吾妻渓谷は最も重要な観光資源です。打越代替地に再建中の川原湯温泉街と吾妻渓谷を結ぶためにつくられたのがこの遊歩道です。しかし、この遊歩道は延長が約1.3kmもあり、アップダウンが150m以上もありますので、一般客が利用するのは容易ではありません。仮締切工事および本体工事の期間中、この遊歩道以外に、打越代替地と吾妻渓谷を結ぶ散策路はないのでしょうか。

1-4 吾妻渓谷への本体工事等の影響区間
① 従来の国交省の説明によれば、吾妻渓谷は八ッ場ダム事業によって四分の一が沈むだけだとされていますが、本体工事の影響は吾妻渓谷のどの範囲に及ぶのでしょうか。
② 群馬県の水力発電所の設置工事も含めると、その影響は吾妻渓谷のどの範囲に及ぶのでしょうか。

1-5 吾妻渓谷のラフティング 現在、吾妻渓谷ではラフティングが行われ、海外からもラフティング目的の観光客が訪れていますが、仮締切工事および本体工事の期間中、ラフティングを楽しむことができなくなるのでしょうか。

2 八ッ場ダム建設事業の工程について
2-1 八ッ場ダム本体工事の工程
 今回の入札公告が行われた仮締切工事も含めて、八ッ場ダム本体の各段階の工事を今後、どのような工程で進めていくのでしょうか。仮締切工事、本体掘削工事、堤体工事、試験湛水などの工程を明らかにしてください。

2-2 関連事業の工程
上記の本体工事に対応して、付替鉄道、付替国道、付替県道、代替地の整備を完成に向けて今後どのような工程で進めていくのでしょうか、具体的な工程を明らかにしてください。

2-3 八ッ場ダム予定地住民
八ッ場ダム予定地には今年3月末現在で21世帯の住民が居住していますが、その移転はどのようなスケジュールで進めることになっているのでしょうか。

3 地すべり対策、代替地安全対策
3-1 地すべり対策、代替地安全対策の詳細調査
水没予定地住民の中に、代替地への移転を躊躇している事例があるのは、ダム湛水後の地すべりの発生を心配し、代替地の安全性に不安を抱いているからだと聞きます。
国交省は地すべり対策、代替地安全対策のための詳細調査をいつ実施するのでしょうか。
  
3-2 水没予定地住民への安全性に関する説明
国交省は上記の詳細調査を行ったうえで、地すべり対策、代替地安全対策の説明をダム予定地の住民に対し、いつ行うのでしょうか。また、詳細調査に基づく対策工事をいつ実施するのでしょうか。

4 工事用道路
4-1 仮締切工事の工事用道路
仮締切工事のための工事用道路は現国道を使うのでしょうか。ダム予定地住民の生活道路になっている現国道を使うことに問題はないのでしょうか。

4-2 ダム本体工事の工事用道路
ダム本体工事のための工事用道路は現国道を使うのでしょうか。ダム予定地住民の生活道路になっている現国道を使うことに問題はないのでしょうか。

5 遺跡発掘調査
八ッ場ダム予定地には縄文時代の各年代の遺跡、天明3年浅間災害遺跡など、日本有数の貴重な遺跡が数多くあり、発掘調査が進められてきていますが、大半が未調査のまま残されています。今後、仮締切工事に始まるダム本体工事の実施と並行して、八ッ場ダム予定地の遺跡発掘調査をどのようなスケジュールで進めることになっているのでしょうか。

                                    以上

(画像をクリックすると入札公告の資料が開きます。)
入札情報サービスより「八ッ場ダム仮締切工事の入札公告」(2013年8月19日)

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