国土交通省関東地方整備局は昨日、八ッ場ダムの事業費を4,600億円から5,320億円へと、720億円増額する計画変更案を公表しました。同局のホームページに記者発表資料が掲載されています。

「八ッ場ダムの建設に関する基本計画」の変更について 平成28年8月12日  関東地方整備局河川部

 事業費を増額するためには、同局が共同事業者である利根川流域一都五県(東京都、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県)の同意を求める手続きが必要です。一都五県では議会での審議、議決を経て、各知事が関東地方整備局に同意の可否を回答することになります。

 八ッ場ダム事業の計画変更は、今回で5度目です。
DSCF8422 1986年に告示された基本計画では、事業費は2,110億円、工期は昭和42年度~75(2000)年度でした。その後、2001年に工期が2010年度に延長され、2008年に2015年度、2013年に2019年度と三度延長が繰り返されてきました。
 事業費の方は、2004年の第二回変更で4,600億円に倍増、今回の再増額が決定すると、当初額の2.5倍となります。

 これらの計画変更の主な要因は、膨大な関連工事の難航です。八ッ場ダム事業はダム中止を掲げた民主党政権下(2009~2012年)でも税金が投入され続けましたが、ダムサイト予定地を走るJR吾妻線の付け替え工事が完了し、ダム本体着工が可能となったのは昨年2015年のことです。
(写真右上=八ッ場ダムの建設が予定されている吾妻渓谷のV字谷を上流側から望む。JR吾妻線の線路や川原湯温泉駅が解体され、樹木も伐採されている。2016年8月4日撮影)

 関連記事を転載します。

◆2016年8月12日 日本経済新聞 速報
 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS12H0Q_S6A810C1PP8000/
ー八ツ場ダム事業費を増額 当初計画の2.5倍ー

 国土交通省は12日、建設中の八ツ場ダム(群馬県長野原町)の基本計画を変更する手続きを始めると発表した。事業費を現行の約4600億円から720億円積み増し、5320億円とする。2019年度までの工期は変えない。事業費は当初計画の2110億円の2.5倍に膨らむ。計画のずさんさが改めて浮き彫りになった。

 事業費は国と東京都や群馬県など関係自治体が負担する。国交省はコストが増えた主な要因として(1)地滑りなど安全対策(141億円)(2)地質の見込み違い(202億円)(3)公共工事単価の変化(233億円)などを挙げた。

 八ツ場ダムは洪水被害の軽減や都市用水の確保を目的とした多目的ダム。1970年に建設に着手し、当初は00年度に完成する計画だった。旧民主党政権は工事中止を公約したが、後に事業継続に転じた。ほとんどの用地取得や家屋の移転が終わり、15年1月からは本体工事が始まっている。

◆2016年8月12日 共同通信
 http://this.kiji.is/136677562328301572
ー八ツ場ダム事業費720億円増額 資材高騰でー

 国土交通省関東地方整備局は12日、群馬県長野原町の八ツ場ダム建設の事業費を約720億円増額すると発表した。総事業費は約5320億円となる。
 整備局によると、建設資材の高騰や消費税増税が理由。総事業費の一部は流域の茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京の6都県に負担を求める考え。
 八ツ場ダムは利根川支流の吾妻川に建設する多目的ダム。昨年1月、本体工事に着手した。完成は19年度の予定。

◆2016年8月13日 毎日新聞埼玉版
 http://mainichi.jp/articles/20160813/ddl/k11/010/286000c
ー群馬・八ッ場ダム 事業費増額 大沢知事「十分な説明を」 /埼玉ー

 群馬県長野原町の八ッ場ダムの建設事業費がまた増額される見通しになった。国土交通省関東地方整備局は12日、費用を一部負担する地元や周辺の1都5県(東京、群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉)の意見を聞く手続きに着手したが、5度目の計画変更案は事業費が当初の約2・5倍に当たる約5320億円に膨れあがっており、複数の知事が説明の徹底を求めた。

 八ッ場ダムは首都圏の治水や利水を目的に計画された利根川水系のダム。1986年に公表された基本計画で事業費は2110億円とされたが、過去4回の計画変更で工事の遅れなどを理由に約4600億円に倍増したほか、完成予定も2000年度から19年度に順次延期されてきた。

 今回、同整備局が増額の一因としたのは「社会経済情勢の急激な変化」。直近の計画変更は3年前だが、公共工事の人件費の増加や消費増税の影響で、新たに266億円が必要になったという。また地質の調査を進めた結果、地滑り対策の場所が3カ所から9カ所に増加し、岩盤の硬さや地盤のもろさが明らかになったため、増額が必要としている。

 増額には1都5県の議会の議決を経て、知事の意見を聞く必要がある。しかし、群馬県の大沢正明知事は「遺憾だ」と不満をあらわにし、埼玉県の上田清司知事も「八ッ場ダムが重要な施設であることに変わりはないが、再度の増額について十分な説明をしていただきたい」と要望した。【奥山はるな】

◆2016年8月13日 上毛新聞
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160813-00010000-jomo-l10&p=1
ー八ツ場事業費 720億増 五輪背景に労務単価上昇ー

 国土交通省関東地方整備局は12日、八ツ場ダム(群馬県長野原町)の事業費を約720億円増額し、約5320億円になると発表した。2020年東京オリンピックを背景に、公共事業の労務単価上昇などが押し上げ要因。新たな事業費を盛り込んだ基本計画の変更案を、費用を一部負担する関係6都県(群馬、埼玉、東京、千葉、茨城、栃木)に同日示し、意見照会の手続きを始めた。本県の負担分は従来より約33億8千万円増え、約249億4千万円となる見込み。

 同ダムの事業費は1986年に2110億円と告示された後、04年に4600億円に増額。建設中止を打ち出した民主党政権下で整備局が行った検証では、工事の遅れで55億円、地滑り対策などで149億円の増額が必要とされた。再開決定後、13年に工期を15年度から19年度に変更する際、国交省は「コスト縮減により、事業費を変更せずに対応できる」としていた。工期延長の同意に際し、都県側は「事業費の圧縮に努めること」と求めていた。

 整備局は「今回の増額の大半が労務単価の上昇など当時は分からなかったことが要因」と弁明。照会に対する各都県の意見提出には議会の議決が必要で、「関係機関の理解を得ながら事業を進めたい」とした。

 増額分の内訳は労務単価などの上昇分が233億円のほか、ダム本体建設場所の地質が明らかになり、基礎強化費用などとして202億円、貯水池周辺や移転代替地の地滑り対策費などとして141億円を計上している。

 大沢正明知事は「これまでも一層のコスト縮減と一日も早い完成を求めており、大変遺憾」とした上で、増額に関する県の意見回答について、「完成が遅れれば、生活再建事業にも影響を与える。計画変更の中身を確認し、総合的な観点から判断したい」とコメントした。

 水没関係5地区連合対策委員会の野口貞夫委員長は「地元としては、水没5地区の生活再建事業をできる限り早く進めてもらえるように望むだけだ」と語った。ダム建設に反対する八ツ場あしたの会は「地質への見通しが甘く、新たな工事が必要になった。ダム本体周辺の岩盤は複雑で、このまま堤体建設に着手するのは危険」と訴えた。

 八ツ場ダムは1952年に計画発表。民主党政権が09年に建設中止を打ち出すなど曲折を経たが、14年10月に本体工事に着手。今年6月に本体のコンクリート打設が始まった。

◆2016年8月13日 朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/ASJ8D4Q6KJ8DUTNB00J.html?rm=247
ー八ツ場ダム、事業費720億円増へ 国交省ー

 国土交通省は12日、八ツ場ダム(群馬県)建設の事業費が720億円増える見通しを明らかにした。約5320億円となるという。
 主な増額の内訳は、建設業界の人手不足による人件費や資材費の上昇分233億円、地盤対策工事費の増加分202億円、地滑りなど安全対策の変更分141億円。工期は2019年度までで変わらない。計画変更は、建設費の一部を負担する6都県の議会での議決をへて認められる。

 基本計画は1986年に策定され、当初は2110億円だったが、補償費の見直しで04年に4600億円に変更した。
 群馬県の大沢正明知事は「これまで国に対してコスト縮減と早い完成を求めており、大変遺憾」とのコメントを発表した。

◆2016年8月13日 NHK首都圏ニュース
http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20160813/4788851.html
ー八ッ場ダム事業費 再度増額へー

 群馬県で建設中の八ッ場ダムの事業費について、国は人件費の高騰などを理由に、およそ720億円増額する案をまとめました。
 この場合、事業費の一部を負担する1都5県では負担額が増加するということで、国は理解を求めることにしています。

 群馬県長野原町の八ッ場ダムは、平成31年度の完成を目指して建設工事が進められています。
 その事業費について、国はこれまでおよそ4600億円としていましたが、12日人件費の高騰などを理由に、およそ720億円、率にして15.7%多い、およそ5320億円とする案をまとめました。
 この場合、事業費の一部を負担する東京、群馬、千葉、埼玉、茨城、栃木の1都5県では、負担額が一律15.7%増えるということで、国は各自治体に理解を求めることにしています。
 これについて群馬県の大沢知事は、「これまでコストの削減を求めてきており、事業費の増額は大変遺憾だ。変更の中身をよく確認して総合的な観点から判断したい」というコメントを発表しました。
 八ッ場ダムの事業費をめぐっては、平成16年に増額されておよそ4600億円となった際に関係する自治体から反発が出ていました。

◆2016年8月14日 しんぶん赤旗
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-08-14/2016081403_01_1.html
ー国交省 八ツ場ダム事業費720億円増額 「計画がずさん」批判の声ー

 国土交通省が12日、工事中の八ツ場ダム(群馬県長野原町)の事業費を約720億円増額して5320億円にすると発表したことに対して、住民や自治体関係者から計画のずさんさを批判する声が上がっています。

 同省が示した増額の内訳では、公共事業関連単価の高騰や消費税増税など「社会経済的要因」による増額が266億円と最多ですが、「地滑り等安全対策による変更」(141億円増額)や「地質条件の明確化等による変更」(202億円増額)など地質関係の工事変更に伴う増額が目立ちます。
 この点について、工事中止を求めている「八ツ場あしたの会」事務局の渡辺洋子さんは「本体工事が進む中で、ダム堤体部などの地質が予想以上に複雑で、工事費の増額が必要となっていることを意味しています。地質調査のずさんさが露呈しました。国会議員の力も借り、増額要因の詳細を明らかにさせて、計画の再検討も含めて要望していきたい」と話しています。

 同省は、東京、埼玉、群馬、栃木、茨城、千葉の1都5県に増額の一部の負担を求める考えです。
 建設推進の立場の群馬県の大沢正明知事はコメントを出し「国に対しては『一層のコスト縮減を図るとともに一日も早い完成』を求めてきており、大変遺憾」だと表明しました。

 八ツ場ダムの事業費は、1986年発表の当初計画では約2110億円でしたが、2004年の計画変更で約4600億円に倍増。無駄な大型公共事業だとする国民の批判を浴びて、工事は一時中断しましたが、安倍自公政権は昨年1月、本体工事の着工に踏み切りました。
 日本共産党は、住民とともに一貫して、いっそうの事業費の高騰は避けられないと指摘し、計画の中止を求めています。


★主な関連記事
「八ッ場ダム事業720億円増額の内訳」
「八ッ場ダム計画変更案(事業費増額)について、国交省資料から読み取れること」
「八ッ場ダム事業費増額についての1都5県による調査報告書」
「八ッ場ダムの計画変更(事業費再増額)について、共産党が国交省へヒアリング」
「千葉県、事業費増額案について八ッ場ダムを考える1都5県議員の会の質問書へ回答」