今朝の毎日新聞が一面トップと社会面トップで八ッ場ダムの代替地整備の問題を取り上げています。
 問題が発覚したのは、毎日新聞に掲載された地図によれば、川原湯地区と横壁地区の代替地です。

 八ッ場ダム事業では、ダム湖畔に水没予定地住民が移転する代替地を造成中です。もともと平坦な場所がなかった山の中腹に、沢を30メートル以上盛り土し、尾根を切って広大な代替地を造成する事業は、八ッ場ダム事業の中でも特に地形地質を無視した計画として、安全性が問題視されてきました。

 一般に、ダム事業では、水没住民の代替地を用意する場合、別の土地の農地などを転用して住民に分譲することが多いのですが、八ッ場ダム事業では、ダム事業に反対する地元を屈服させるために1980年代に「現地再建ずり上がり方式」が採用され、大規模な代替地が造られることになりました。

 ダム事業費には代替地の整備費用は含まれず、代替地の整備費用は住民に土地を分譲する費用で賄うのが原則です。このため、八ッ場ダム事業の代替地は周辺地価よりはるかに高額に設定されました。

 1990年代に完成するはずだった代替地はいまだに造成中であり、川原湯温再興のメドも立っていないことから、住民の多くは当初望んだ代替地への集団移転をあきらめ、他地区で自主再建の道を選んで転出していきました。このため、集落は縮小の一途を辿っており、温泉街を抱える川原湯地区の世帯数は、当初の四分の一に減っています。

 八ッ場ダムの本体工事の入札が昨日、締め切られ、6日に開札が行われることになっていますが、今回、有害資材が使われていた問題が発覚したことで、代替地計画の見通しはますます不透明になってきました。
 
◆2014年8月5日
 八ッ場ダム:代替地整備に有害資材 環境基準の5〜23倍
 http://mainichi.jp/feature/news/20140805k0000m040150000c.html

 国が群馬県長野原町で建設を進める八ッ場(やんば)ダムで、水没予定地からの立ち退きを求められた住民の移転代替地の整備に、有害物質を含む建設資材が使われていることが分かった。国土交通省も同様の情報を得て調査を進めている。有害物質は環境基準の5〜23倍に達し、専門家は「撤去が望ましい」と指摘。今後のダム工事や住民の移転計画に影響を与える可能性が出てきた。

 ダム関連工事の関係者によると、有害物質を含む建設資材が許可なく使われたのは、代替住宅地の盛り土や周辺の生活道路など。毎日新聞は地権者の同意を得て代替地3カ所から建設資材の砕石を採取し、環境省指定の第三者機関に鑑定を依頼。その結果、有害物質のフッ素が環境基準の5〜23倍検出された。環境基準の対象ではないが、植物に影響を及ぼすとされる強アルカリ性も示した。

 建設資材は、その主成分から鉄の精製時に出る副産物で石や砂の形をしている「鉄鋼スラグ」とみられ、製造過程で添加されたさまざまな化学物質が残存することがある。スラグは、環境基準を下回ることを前提に道路資材など一部での使用が認められている。

 スラグを巡っては大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から出た有害物質を含むスラグが渋川市の建設会社に販売された際、販売額より高額な「引き取り料」とみられる費用を支払う「逆有償取引」だったことが1月に発覚し問題化。今回の代替地を巡る工事にも同じ建設会社が関与していた。同社はこれまで八ッ場ダム関連工事十数件に参加し、大同から引き取ったスラグを天然砕石に混ぜて使っていたという。

 国交省は八ッ場ダムの代替地の盛り土などの工事に天然砕石を使用するよう義務付け、渋川市の建設会社から提出された材料証明書にも天然砕石と記されていた。だが、毎日新聞と同様の情報を得た同省は現場の砕石を採取し、スラグとみられる砕石を確認。施工業者から事情を聴いている。

 八ッ場ダムの代替地には2007年時点で水没予定5地区の134世帯が移転を希望し、今年3月末時点で84世帯が移転。10月にはダムの本体工事に入る見通し。

 スラグは廃棄物処理法上は産業廃棄物とされ、最終処分には通常1トン当たり2万〜3万円掛かるが、「逆有償取引」なら1トン当たり数百円程度で引き渡すことも可能とされ、費用が大幅に削減されるという。

八ッ場ダムは1952年に旧建設省が調査に着手し85年に住民が建設を容認、2007年から水没予定地の代替地の分譲を始めた。09年の民主党政権誕生時に一時工事が中断したが、11年に建設再開を決定し、今年10月からダムの本体工事に入る見通し。代替地には07年時点で水没予定5地区の134世帯が移転を希望し、今年3月末現在、84世帯が既に移転している。

 渋川市の建設会社社長は毎日新聞の取材に「スラグが誤って混じったことはあるかもしれないが、故意に入れたことはない。仮に出てきたとしても混入がわずかであれば有害物質の影響は低いから障害はない」と説明。大同特殊鋼は「盛り土にスラグが利用された事実は把握していない。指摘の事実関係を調査する」としている。【杉本修作、沢田勇、角田直哉】

 すぐにも撤去を
 日本環境学会顧問の畑明郎・元大阪市立大大学院教授の話 
 通常の自然界では環境基準を超えるようなフッ素は検出されず、(偶発的との)言い逃れはできないフッ素値の高さだ。少量でも周囲に悪影響を与えるので、本来、基準を越えれば建設資材に使ってはいけない。むき出しになっているような所はすぐにでも撤去した方がいい。既に建物を造ってしまったなら、側溝の水を調べるなどして監視を続けるべきだろう。

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◆2014年8月5日 毎日新聞社会面
 http://mainichi.jp/select/news/20140805k0000m040144000c.html
ー八ッ場ダム:有害資材「多い日で20台で6往復」ー

 ◇運搬関係者、庭や駐車場に利用

 「多い日には砕石を積んだトラック20台がダムまで6往復した」。国が建設を進める八ッ場ダム(群馬県長野原町)の工事を巡り、有害物質を含む建設資材を運んだ関係者はそう証言した。ダム湖に沈む地区の住民が移転する代替地にも有害建材は許可なく使用され、住民は「きちんと調査して説明してほしい」と憤った。【杉本修作、沢田勇、角田直哉】

 町内の代替地を確認したところ、住宅建設予定地や駐車場など複数箇所で、問題の建設資材とみられる砕石が見つかった。既に家屋が建設され、庭の砂利として砕石が利用されている所もあった。

 工事関係者によると、運び込まれた建設資材は大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から出た「鉄鋼スラグ」とみられる。関係者は「渋川工場内に四つくらいスラグ置き場があり、そこで山になってどうしようもなくなると、取りに来るようにと電話が来る」と証言した。

 「引き取ったのは大同のため。そういう契約になっているわけだから」。スラグはそのままでは廃棄物処理法上の産業廃棄物に当たり、高額の処理費用が掛かる。だが、建設資材などの「再生資源」「リサイクル製品」としての取引なら販売可能だ。ただし、そうした取引を偽装して販売価格以上の金銭を輸送費などの名目で支払う「逆有償取引」だった疑いがあるとして、監督権限のある群馬県も調査を進めている。

 工事関係者は「地盤の補強にもなる」としてスラグを天然砕石に混ぜ、代替地の整備に使用していた。「畑にする場合、その上に(畑用の)黒い土を敷く」とも話したが、現場から採取したスラグとみられる砕石は強アルカリ性。専門家によると、雨水で強アルカリの排水が生じると周囲の植物を枯らす可能性があり、スラグを含む盛り土の上に畑を作ると農作物に影響が及ぶ恐れもあるという。

◆2014年8月5日 毎日新聞
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140805-00000028-mai-soci

ー<八ッ場ダム>有害物質問題 国交相「調査中」ー

 国が建設を進める八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の工事を巡り、住民の移転代替地整備に有害物質を含む建設資材が使われていた問題で、太田昭宏国土交通相は5日、定例会見で「現在調査中であり、早急に調査し、群馬県環境森林部とも相談して対応したい」と話した。

 太田国交相の説明によると、2008年度以降に18件の工事で大同特殊鋼の鉄鋼スラグを含む採石が使用され、いずれも環境基準に適合していると確認されたが、今回明らかになった箇所はこの18工事以外の箇所だった。【佐藤賢二郎】

◆2014年8月4日 毎日新聞
 http://mainichi.jp/select/news/20140805k0000m020047000c.html

ー大同特殊鋼:役員賞与100%カット 有害鉄鋼スラグ出荷ー

 大同特殊鋼(名古屋市)が群馬県渋川市の工場から有害物質を含む鉄鋼スラグを出荷していた問題で、同社は4日、全役員23人に6月末に支給予定だった役員賞与を100%カットすると発表した。廃棄物処理法違反の疑いで調査している群馬県の処分が決まった後、経営責任を判断する方針。
 同社は内部調査の結果、「環境省の通知を誤って解釈したため、出荷管理基準がなく、環境基準を超過するスラグが出荷された」と総括。「逆有償取引」に関しては「生産・販売業務の対価」と釈明し、不適切処理ではないとしている。

 同社は今年1月からスラグの生産・出荷を停止しており、環境安全品質を完全に確保できるまで停止を継続する。【吉田勝】

◆2014年8月5日 毎日新聞
 http://mainichi.jp/feature/news/20140806k0000m040095000c.html?utm_medium=twitter&utm_source=twitterfeed
 
ー八ッ場ダム:有害物質に住民「あきれて言葉見つからない」ー

 有害物質を含む建設資材が八ッ場ダム(群馬県長野原町)の住民移転代替地の整備などに使われていたことに、地元住民らから戸惑いや憤りの声が上がった。
 「あきれて言葉も見つからない」。水没予定の川原畑地区で現在も暮らす無職、高山彰さん(60)は、有害資材の使用を見逃した国土交通省への不信感をあらわにする。「どこにどれだけ使われているのか早急に明らかにすべきだ」と憤った。

 長野原町は八ッ場ダムを核とする観光事業の活性化に取り組んでいる。道の駅「八ッ場ふるさと館」の篠原茂社長(63)は「紆余(うよ)曲折があったダム建設も関係者と地元が少しずつ信頼関係を築き、何とかここまで来た。その関係を根本から崩しかねない」と非難する。地元では利用客がピークとなる夏の行楽シーズン中で「環境への関心が高まる中、リスクがあると分かれば来訪者数にも影響するのでは。まずはきちんと説明の場を設けてほしい」と力を込めた。

 東京都港区から観光で訪れた会社員、伊東利樹さん(56)は「全国から注目を集めているダムなのに、なぜこうした問題が起きるのか。有害物質の混入はわずかな量と言われても、良い気持ちはしない」と眉をひそめた。【角田直哉】

— 転載終わり—

 有害物質を含む大同特殊鋼の鉄鋼スラグが群馬県内の公共工事で使用されてきたことは、昨年9月の渋川市議会で角田喜和議員(共産)が取り上げ、今年1月には群馬県が大同特殊鋼渋川工場に立ち入り調査を行っています。その後、問題はさらに大きな広がりをみせてきました。
 石関貴史衆院議員(維新)の質問主意書「群馬県内における有毒物質を含む疑いのある鉄鋼スラグの使用実態に関する質問」に対する政府答弁が出された今年3月28日には、国交省関東地方整備局が政府答弁にあった八ッ場ダム事業の代替地整備に鉄鋼スラグを使用していたことを初めて公表したものの、すべて環境基準を満たしているので問題ないとしていました。

◆衆議院議員石関貴史君提出群馬県内における有毒物質を含む疑いのある鉄鋼スラグの使用実態に関する質問に対する答弁書
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b186084.htm

◆国土交通省関東地方整備局 記者発表資料 「鉄鋼スラグを含む砕石の分析試験結果について」(平成26年3月28日)
 http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000101962.pdf

 今回、問題となっている代替地を含む39工事で使用した砕石については、「環境基準への適合を確認しています。」としています。

国交省記者発表資料に掲載されている鉄鋼スラグを含む砕石を使用した八ッ場ダム事業の18工事
H20 八ッ場ダム工事事務所H20三平地区代替地造成工事
H20 八ッ場ダム工事事務所H20上湯原地区流路工(Rー14)工事
H20 八ッ場ダム工事事務所付替国道145号久森トンネル工事
H20 八ッ場ダム工事事務所H20大沢地区代替地整備工事
H20 八ッ場ダム工事事務所大柏木地区盛土造成地他工事
H20 八ッ場ダム工事事務所小倉地区函渠工事
H20 八ッ場ダム工事事務所付替国道145号(中村地区)改良工事
H21 八ッ場ダム工事事務所二社平地区代替地整備工事
H21 八ッ場ダム工事事務所付替国道145号(川原畑地区その2)改良他工事
H21 八ッ場ダム工事事務所付替国道145号(中村地区その2)改良工事
H22 八ッ場ダム工事事務所H22付替国道145号川原畑地区緊急復旧工事
H23 八ッ場ダム工事事務所H23打越地区道路緊急復旧工事
H23 八ッ場ダム工事事務所H23大沢地区代替地他整備工事
H24 八ッ場ダム工事事務所H24上湯原地区防災ダム(Rー10)他工事
H24 八ッ場ダム工事事務所H24常木沢法面保護工事
H24 八ッ場ダム工事事務所H24大沢地区代替地他整備工事
H24 八ッ場ダム工事事務所H24上湯原地区代替地他整備工事
H25 八ッ場ダム工事事務所H25温井沢流路工外工事

 このうち、大沢地区、上湯原地区、打越地区は川原湯地区の代替地の地名、小倉地区、中村地区は横壁地区の代替地の地名です。三平地区、二社平地区など川原畑地区の代替地の地名もあります。

◆2014年6月22日 塩川鉄也衆院議員の活動日記
 「群馬/有害物質が含まれたスラグが道路の路盤材などに使われている問題で調査」
 http://www.shiokawa-tetsuya.jp/modules/nissi/index.php?id=819
 

◆佐藤建設工業 実績紹介 ダム工事関係
 http://satokensetsukougyou.co.jp/perform/

◆2013年12月18日 毎日新聞群馬版
 http://mainichi.jp/area/gunma/news/20131218ddlk10040239000c.html

ー六価クロム:路盤材スラグ、基準超9カ所から検出−−渋川市調査 /群馬ー

 渋川市の駐車場や道路の路盤材などとして使用されているスラグ砕石について、市内の9カ所から品質基準を超える有害物質の六価クロムが検出されたことが17日、同市の調査で分かった。

 同市のスラグ砕石を巡っては、同市金井の遊園地「渋川スカイランドパーク」周辺の市道から基準の11〜20倍の六価クロムを検出。市は、調査委員会を設置し、市内全域の使用状況などの調査を進め、市道24路線、駐車場9カ所など計38カ所でスラグ砕石を使用していたことが、判明した。

 市が併せて実施したサンプリング分析では、既に結果が出ている11カ所のうち9カ所で環境安全品質基準(1リットルあたり0・05ミリグラム)の最大約11倍の六価クロムを検出。フッ素は11カ所すべてで基準値(1リットルあたり0・8ミリグラム)を上回った。スラグ砕石の周辺土壌のサンプリング分析についても、同様に結果が出ている11カ所で、土壌汚染対策法上の基準を上回るフッ素が検出された。

 市は「水質汚染などはなく、直接、口に入るケースは考えにくい」として、健康への影響を否定しているが、9カ所ではいずれも基準超の六価クロムを含むスラグ砕石が地表に露出した状態で施工されているという。この中には遊園地の駐車場や公園の遊歩道も含まれている。【角田直哉】

◆2014年1月28日  日本経済新聞(共同通信配信)
 http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2801W_Y4A120C1CC0000/
 
ー大同特殊鋼工場に立ち入り 群馬県、廃棄物処理法違反かー

 鉄鋼メーカーの大同特殊鋼(名古屋市)が、渋川工場(群馬県渋川市)から出た「鉄鋼スラグ」を業者に販売する際、運搬費などの名目で販売価格を上回る代金を支払っていたことが28日、同社への取材で分かった。群馬県はこうした取引などが廃棄物処理法違反に当たるとみて、28日までに渋川工場を立ち入り検査した。

 同社は「スラグは商品価値が低く、運搬費などをこちらで負担しないと売れない」と説明。「スラグは産業廃棄物ではなく、リサイクル商品に当たり法律には違反しない」とも主張している。

 環境省によると、産業廃棄物をリサイクル商品として販売する際、引き取り手に支払う代金が、本来の金額を上回る取引のことを「逆有償取引」という。引き取られた商品などがリサイクルされず、野積みにされるなどして環境汚染を引き起こすケースがあり、問題となっている。

 同社の説明によると、2012年6月以前、子会社を通じて渋川市内の砕石業者にスラグを1トン100円で販売するとしながら、実際には1トン250円以上を支払う契約も同時に結んでいた。

 鉄鋼スラグは、鉄鋼を製造する過程で出る副産物で、フッ素や六価クロムなどの有害物質が含まれている。主に路盤材やセメント材などに再利用される。渋川市によると、同社のスラグを再利用した11カ所の施工現場で、環境基準を超えるフッ素などを検出した。〔共同〕

—転載終わり—

 有害資材の問題を取り上げた記事の続き(その2)はこちらです。
 http://yamba-net.org/?p=8382