利根川流域関係都県による八ッ場ダム事業への負担金の支出は違法として、一都五県の住民らが2004年に各地方裁判所に提訴した住民訴訟は、このほど最高裁が上告を退ける決定を下したことで、敗訴が確定しました。

 この裁判では、原告住民側が八ッ場ダム事業の主目的である「利根川治水」について、国交省の示す根拠には大きな欺瞞があること、堤防強化を中心とした治水対策が必要であるとして、流域のきめ細かな現地調査結果をもとに有識者らが主張を展開しました。また「都市用水の開発」についても、現在、関係都県では水余りが年々進んでいることを詳細なデータで明らかにしました。ダム予定地の地形や地質に問題があることから、防災を目的としたダム建設がかえって災害誘発の可能性を高めることも立証しました。しかし、各裁判所はこれらの具体的な論点に踏み込むことなく、行政側の裁量を認める判断を下しました。

 八ッ場ダム事業に対して地元民以外の住民が裁判で訴えるには、関係都県を相手に各都県民が住民訴訟を起こすしか手立てがありませんが、今回の最高裁の決定によって、現在の司法では八ッ場ダム事業の不正を糺すことはできないという結論が出たことになります。

 折しも利根川水系では、台風豪雨により甚大な水害被害が発生しています。被害を被った茨城県と栃木県も利根川流域関係都県として、八ッ場ダム事業に治水負担金を支払い続けていますが、むろん利根川支流の吾妻川に八ッ場ダムが完成しても、今回の水害を防ぐことはできません。ちなみに、鬼怒川上流には国直轄の巨大ダムが四基あり、最新の湯西川ダムは2012年に完成したばかりですが、ダムより下流の豪雨によって発生した今回の水害の主因ー堤防の決壊に対しては無力でした。

 ダム予定地域の有力者らは、ダム事業を前提とした地域振興に今も地域の未来を託しており、敗訴の知らせを歓迎していると報道されていますが、八ッ場ダムは下流域住民にとって不要であるだけでなく、地元にとっては地域破壊そのものであり、今後は災害誘発の危険性が高まることが懸念されています。

◆2015年9月11日 上毛新聞 一面
ー八ッ場訴訟 本県住民側の敗訴確定 最高裁 栃木、埼玉含め4件ー

 八ツ場ダム(群馬県長野原町)建設事業に県が負担金を支出するのは違法として、建設反対派の本県市民グループが大沢正明知事らを相手に支出差し止めなどを求めた住民訴訟で、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は10日までに住民側の上告を退ける決定をした。6都県の住民が起こした一連の訴訟のうち、群馬を含め栃木、埼玉、千葉の計4件で住民側の敗訴が確定した。

 本県訴訟の決定は9日付けで、裁判官の全員一致で上告棄却を決めた。栃木と千葉の訴訟は8日付、埼玉は9日付でそれぞれ裁判長の異なる小法廷が決定した。
 残る東京と茨城の訴訟も住民側が一、二審で敗訴して上告中で、最高裁が近く判断を下す見通しだ。

 本県の訴訟では、一審前橋地裁が治水面や安定的な水源確保といったダム建設の合理性を認めて「支出が違法とはいえない」と住民側の請求を退け、二審東京高裁でも支持していた。
 住民側は水需要が減少傾向にあることなどを掲げ、「利水と治水の両面でダムは必要がなく、各都県の支出は無駄遣い」などと主張していた。住民訴訟は2004年11月、ダム建設事業費の負担金を支出する6都県を相手に各地裁で一斉に提訴した。

 八ッ場ダムをめぐっては、前橋地裁などの一審判決後の09年8月の衆院選で、民主党がマニフェスト(政権公約)に建設中止を掲げて勝利したが、11年12月に当時の野田佳彦首相が一転して建設再開を決めた。19年度に完成予定。総事業費約4600億円のうち6割を6都県が負担する。

ダム必要性認められた
 大沢知事の話 本県が主張してきた八ッ場ダムの必要性が認められたものと考えている。県としては一日も早いダムの完成を国に求めるとともに、地元関係者や1都4県などと連携し、ダム湖が前提の生活再建事業の早期完成に向けて取り組みたい。

◆2015年9月11日 上毛新聞 社会面
ー八ッ場 生活再建早く 住民訴訟 最高裁棄却 地元は歓迎の声ー

 ダム本体と生活再建の早期完成をー。長野原町の八ッ場ダム建設をめぐり、最高裁が住民訴訟での「ダムは不要」との訴えを退けたことが明らかになった10日、地元からは司法判断を歓迎する声が上がった。事業の着手から60年余りたち、反対闘争や民主党政権による一時凍結など曲折を経たことから、これからは静かに見守ってほしいとの願いも。一方、ダム建設に反対する原告側は敗訴に肩を落とした。

 「地元とするとダムと生活再建の早期完成を願っている」。建設地の左岸に当たる同町川原畑の農業、中島寛さん(67)は語った。今回の訴訟への関心は地域では希薄という。一時凍結の際に全国から注目された過去などから「事業が完成していく姿を静かに見守ってほしい」と求めた。
 本体や生活再建事業の早期完成を求め、太田昭宏国土交通相と今月面会した萩原睦男町長は「(司法判断は)思った通りの結果。町としては県などと協力し、生活再建の早期完成を進める」と話した。八ッ場ダム水没関係5地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は「利根川下流域のためになるダム。一刻も早く完成を」と力を込めた。

 原告側は2004年に提訴し、ダムが必要ないことを訴えてきた。原告の真下淑恵さん(67)=沼田市=は、利水はすでに足り、治水はダム以外の方法で対応できると指摘。「国の借金がこれだけ膨らんでいる時代にしゃくし定規で進めるとは、日本の司法はどうかと思う」と悔しがった。
 原告で市民オンブズマン群馬の事務局長、鈴木庸さん(64)は「環境破壊が著しく、あれほど無駄なモノはない。裁判所にはがっかりだ」と憤慨した。

 国土交通省八ッ場ダム工事事務所は昨夏、ダムの本体工事の契約を共同企業体(JV)と結び、昨秋に測量を開始。ことし1月からは堤体を造るための基礎掘削を続けている。同事務所によると、基礎掘削は順調で工程の3割以上まで進み、来年6月にはコンクリートの打設作業に入る。

◆2015年9月9日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150909/k10010223171000.html
ー八ッ場ダム訴訟 建設反対住民の敗訴が確定ー

 国が群馬県に建設している八ッ場ダムに反対する住民が、事業費の一部を負担している千葉県に公金を支出しないよう求めた裁判で、最高裁判所は9日までに上告を退ける決定を出し、住民の敗訴が確定しました。

 利根川流域の洪水や水不足の対策として、国が建設している八ッ場ダムは、民主党政権の下で一時工事が中断されましたが、その後再開され、平成31年度の完成を目指して工事が進められています。
 総事業費4600億円の一部を流域の1都5県が負担していることについて、反対する千葉県の住民グループは「治水の効果は期待できず、水の供給も足りている」として、県に公金を支出しないよう求める裁判を起こしましたが、1審と2審はいずれもダムの計画に問題は無いとして訴えを退けました。住民グループが上告したのに対して、最高裁判所第3小法廷の岡部喜代子裁判長は、9日までに上告を退ける決定を出し、原告の敗訴が確定しました。
 八ッ場ダムを巡っては、1都5県すべてで公金を支出しないよう求める訴えが起こされ、いずれも1審と2審で退けられたため、住民が最高裁に上告していますが、敗訴が確定するのは初めてです。

◆2015年9月9日 時事通信
http://news.ameba.jp/20150909-1093/
ー八ツ場ダム、住民敗訴確定=千葉、負担金訴訟で初-最高裁ー

 国が建設を進める八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)事業に反対する千葉県の住民らが、事業費の一部を負担する同県に負担金支出差し止めなどを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は8日付で住民側の上告を退ける決定をした。
 訴えを退けた二審判決が確定した。同様の訴訟は負担金を支出している茨城、栃木、群馬、埼玉、東京の1都4県でも起こされ、確定するのは初めて。全て一、二審で住民側が敗訴し、上告している。

 千葉訴訟で住民側は「千葉県の水道事業にダムの水は不要で、治水上の利益も受けない」と主張。しかし、一審千葉地裁は「水の需要が将来増えるとした県の予測に不合理な点はなく、ダムには洪水を調節する効果がある。支出は違法ではない」などと判断し、二審東京高裁も支持した。

◆2015年9月10日 産経新聞
http://www.sankei.com/affairs/news/150910/afr1509100055-n1.html
ー栃木、群馬も住民敗訴確定 八ツ場ダム訴訟ー

 国の八ツ場ダム(群馬県長野原町)建設をめぐり、事業費を負担する利根川流域の1都5県を相手に、各地の住民が「ダムは不要」と支出差し止めなどを求めた6件の訴訟中、栃木と群馬の両訴訟で住民敗訴をそれぞれ言い渡した2審東京高裁判決が最高裁で確定したことが10日、分かった。
 栃木訴訟は第3小法廷(木内道祥裁判長)が8日付で、群馬訴訟は第2小法廷(山本庸幸裁判長)が9日付で住民側の上告を退ける決定をした。
 一連の訴訟で住民敗訴の確定は3件となった。ほか3件も住民が1、2審で敗訴し上告中で、最高裁が近く判断を示す見通し。
 1審は宇都宮、前橋両地裁ともに「ダムの治水効果が認められるなど、支出が違法とはいえない」と請求を退け、2審も支持した。
 八ツ場ダムをめぐっては、平成21年衆院選で民主党がマニフェスト(政権公約)に建設中止を掲げ勝利したが、23年に当時の野田佳彦首相が一転して建設再開を決めた。

◆2015年9月11日 毎日新聞千葉版
http://mainichi.jp/area/chiba/news/20150911ddlk12040162000c.html
ー群馬・八ッ場ダム建設:住民訴訟 事業費支出差し止め、住民敗訴が確定 /千葉ー
毎日新聞 2015年09月11日 地方版

 国の八ッ場ダム(群馬県長野原町)建設をめぐり、事業費を一部負担する利根川流域の1都5県を相手に、各地の住民が「ダムは必要ない」と支出差し止めなどを求めた6件の訴訟中、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は9日までに、千葉の訴訟で住民側の上告を退ける決定をした。8日付。住民敗訴の2審東京高裁判決が確定した。
 一連の訴訟で判決確定は初めて。ほかの5件も住民側が1、2審で敗訴し上告中で、最高裁が近く判断を示す見通し。
 1審・千葉地裁は「ダムは洪水調節効果があると認められ、支出が違法とは認められない」と退け、2審も支持した。

◆2015年9月11日 産経新聞
http://news.livedoor.com/article/detail/10579702/
ー八ツ場ダム、東京訴訟も住民側敗訴確定「事業費負担は適法」 最高裁ー

 国が建設を進める八ツ場ダム(群馬県)への事業費負担は違法として、東京都の住民が都に支出差し止めを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(桜井龍子裁判長)は住民側の上告を退ける決定をした。
 「事業費負担は適法」として住民側敗訴とした2審東京高裁判決が確定した。決定は10日付。
 同ダム建設の事業費を負担する6都県の住民が一斉提訴したが、東京を含め5都県の住民側敗訴が最高裁で確定。確定していないのは茨城県の訴訟だけとなった。
 同ダムは、平成21年衆院選で民主党がマニフェスト(政権公約)に建設中止を掲げて勝利したが、23年に当時の野田佳彦首相が一転して建設再開を決めた。総事業費4600億円のうち6割を茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京の1都5県が負担する。

◆2015年9月11日 東京新聞
ー八ッ場ダム訴訟住民側敗訴確定 千葉、栃木、群馬、埼玉ー

 国の八ッ場ダム(群馬県長野原町)建設をめぐり、事業費を負担する利根川流域の一都五県を相手に各地の住民が「ダムは不要」と支出差し止めなどを求めた六件の訴訟中、千葉と栃木、群馬、埼玉の四件の訴訟で、住民敗訴をそれぞれ言い渡した二審東京高裁判決が最高裁で確定したことが、分かった。
 ほかの二件も住民が一、二審で敗訴し上告中で、最高裁が近く判断を示す見通し。
 四訴訟では、一審の千葉、宇都宮、前橋、さいたまの各地裁が「ダムの治水効果が認められ、支出が違法とはいえない」などと請求を退け、二審も支持した。
 最高裁では、それぞれ裁判長の異なる小法廷が八~九日付で住民側の上告を退ける決定をした。
 八ッ場ダムをめぐっては、二〇〇九年衆院選で民主党がマニフェスト(政権公約)に建設中止を掲げ勝利したが、一一年に当時の野田佳彦首相が一転して建設再開を決めた。
 一九年度に完成予定。総事業費約四千六百億円のうち六割を茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京の六都県が負担する。