さる6月26日、27日、八ッ場ダム事業による強制収用の可否を問う公聴会が開かれました。
 この公聴会では、ダム予定地を抱える長野原町より4件の公述がありました。そのうち26日に公述が行われた3件は、八ッ場ダム事業にも、八ッ場ダム事業による強制収用を可能とする事業認定にも賛成の意見でした。しかし、27日に行われた1件はいずれにも反対の意見でした。
 反対意見は連名で行われました。お一人は、八ッ場ダムの事業認定が行われれば、強制収用の対象となる全水没予定地の川原畑地区の住民でした。
 26日に賛成意見を述べた3人の公述人は全員が一部水没地区から出た町会議員と元町会議員でしたが、議会関係者であるとは名乗りませんでした。これらの議会関係者の中には、八ッ場ダムがマスコミで取り上げられるようになってから、一住民としてしばしばテレビに出演した方もおり、その公述内容はテレビカメラの前、あるいは自民党関係の集会等で何度も繰り返されてきたものであることはよく知られています。
 27日に反対意見を述べた議員は、町会議員であると最初に名乗って公述を行いました。その論旨は明快で、賛成の公述人とは異なり、自らの意思で公聴会に参加されたことは明らかでした。
 26日の公聴会では、公述をした長野原長会議員が壇上で、「申し込みをしていなかったのに、公述の時間をもらった」「10分でいいと言ったのに、30分いただいた」と公述の中で話しました。公述は事前申込制であり、国交省はこの議員の話は誤解であると否定していますが、国交省にとって都合のよい公述をしてもらうために、推進派の議員を利用したと受け取られても仕方がありません。
 27日、事業認定に対して反対意見を述べた議員に対する議長の態度は杓子定規で、前日の議員に対する態度とはずいぶん違うように見えました。

 地元の人間関係は八ッ場ダム事業によって破壊されてきました。住民同士の対立はダム事業を進める国と群馬県にとっては好都合で、八ッ場ダムは「人間不信の国策」とも言われます。現在、国は強制収用をちらつかせて水没予定地に残る数少ない住民にこれまで以上に圧力をかけてきています。こうした厳しい状況の中、登壇されたお二人の公述内容をお伝えします。
 なお、公述のライブ録画が以下のツイキャスで見られます。(31分頃より)
 http://twitcasting.tv/masanoatsuko/movie/179502055

高山さんと牧山さん牧山:私は長野原町の議員をやっている牧山明と申します。今日は、まだ川原畑地区に住宅を持ち、移転をしていない高山彰さんと一緒にこの場に臨みます。今日は意見を述べる機会を与えていただき、国土交通大臣に感謝しております。この結果がきちんと反映されることを願って始めたいと思います。よろしくお願いします。最初に高山彰さんから、これまでの経過、想いを述べていただきたいと思います。

高山:只今、長野原の町議である牧山氏から紹介のありました高山彰です。
 八ッ場ダムは昭和27年から始まりました。私は翌年の昭和28年に川原畑に生まれ、ずっとそこで暮らしてきました。昨日の公述でも、専門の方々が地質のことや周りの環境のことについて述べられたので、私は60年の想いを言おうと思ったのですが、この公述時間ではどうみても足りません。60年生まれ育って、父母に大事に育てられて、思い出の故郷があるわけです。当時は砂利道で、おふくろと一緒に畑に行ったり、色々な思い出がつまっている場所、私にとって大事な宝物のような場所なんです。浅間山の噴火や山崩れで故郷に帰れないというのならあきらめがつくんですが、ダムというものは自然を壊し、村を壊し、人間関係を壊し・・・国交省の人はみんな知っていますよね。今まで和気あいあいとしていた地元の人たちが罵倒し合い、ののしり合うようになる。待てど暮らせど(住民の移転)代替地はできないということで、殆どの住民が出て行ってしまった。生まれ育った故郷は人間に例えれば母親と同じ。母なる大地、そのぐらい大事な場所なんです。

 周りからは、「いつまでそこに住んでいるんだ」とやんやと言われる。昨日の公述でもありましたが、「早くダムが見たい」、要するに「故郷なんか沈めちゃえよ」というわけです。前町長は報道関係の前で、(ダム建設続行を決めた前田国交大臣を)万歳三唱で出迎えた。当時、高山町長に「故郷をダムに沈めるのが切ない、寂しい、この気持ちがわかりますか?」と聞いたら、「ひとつもわからない」と答えました。嘘でもいいからわかると言ってほしかったです。その前の田村町長は村の会議に来て、「ダムができたら川原畑はいいところになりますよ」と2度も言いました。村の人たちはニコニコして聞いているわけです。私は腹の中が煮えくりかえりました。元・町長に今の川原畑を見てもらいたいです。「現地再建ずり上がり方式」が本当なら、住民みんなが代替地に上がる筈じゃないですか。国交省のやり方が汚くて、「ずり上がり方式」というばかりで、代替地の整備を全然進めなかった。
リボン 今日はこういう格好(喪服)で、生前葬のような気持ちで来ているわけです。これだけ集まってもらって、たまたま地元の人はいないんですけど・・・。昨日、受付で(公述人が身につけるリボンは)赤と白はやめてくれと言ったんです。黒と白にしてくれと。でも、やっぱり用意してくれなかった。だから私の格好、どう見てもおかしいでしょう? 葬式に出る服にお祝いだか知らないけれど、赤と白のリボンですよ。実際、公聴会の次は強制収用、最後は強制執行、そこで最後まで盾を突いていれば、おカミに逆らったと逮捕されちゃう。私にも孫がいるし、考えちゃいます。今の状態を譬えでいいますと、国からピストルで、出ていかないと引き金を引きますよ、殺されるのが嫌なら早く逃げ出しなさい、いつまでもいるんじゃないとと言われているように感じているんです。でも、母親と同じくらい大事な故郷を捨てて、逃げ出せないでしょう。
 今まで、地権者が(協力しないから)とか言いわけして、代替地(の整備)をさんざん遅らせてきて、ここに来て急に国道は(住民が通れないように)止めるとかプレッシャーをかけてきた。前々から国交省は、「地元の人には迷惑をかけません、親切丁寧にご説明いたします・・・。親切丁寧に説明するどころか、やっていることはどういうことなんだと、あそこに座っている(関東地方整備局の)人たちに一人ひとり聞きたいです。どういう気持ちで仕事しているんだと、そんなに地元の人間が攻め合ったり喧嘩しているのを見て、楽しいか、何が生きがいでそんな仕事をしているのかと、ハッキリ言って聞きたいです。私にはそんな仕事はできないです。

牧山:私は長野原町に住んでいますけれど、ダムには遠い応桑というところです。しかし、議員になった時から川原湯地区を中心にダムに関わり、勉強をさせてもらいました。
 今回の収用のやり方が実にいい加減だということを感じています。説明がきちんとなされていません。たとえば、これで事業認定を公示すると、せっかく(住民と国とが)苦労して決めた補償基準とは別の基準で資産が強制的に取り上げられることになる。そのことについて、先日の町議会八ッ場ダム対策会議で国交省に聞きました。噂では1/10になると聞いたんですが、一体いくらになるのか、質問したのですが、あくまで国の公共用地の補償基準に従ってやるので、お答えできませんと、そこに座っている市川副所長が答えました。

 今回の事業認定に反対の理由を言います。
●水没地区住民が生活再建の具体的な将来像を描けないでいる中で、土地収用を含む事業認定は認められません。
●水没地区住民に移転していない世帯があり、その世帯の移転希望地、代替地が出来上がっていないにもかかわらず強制収用が行われるのは認められません。
●国交省は水没地区住民全員の移転が済むまで、八ッ場ダム本体工事は始めないと、水没地区住民に言ってきたにもかかわらず、本体工事を初めてしまいました。このような状態での強行的な事業認定は認められません。
●水没地区住民の移転地である代替地は、地すべりの安全対策もされておらず、あろうことか、有害物質を含む鉄鋼スラグが散在しています。国交省がこれらの解決方法を示さないままでの事業認定は認められません。
●長野原町議会の八ッ場ダム対策会議においても、3月にも6月にも同じ質問をしました。スラグの問題では、2月、民地に関わる所だけは撤去するということでした。しかし、それ以外の所は関係機関と協議をして、適切に対処するという回答がもう半年も続いているんです。こんないい加減な事で、とても事業認定を認めるわけにはいきません。
●先日も現場の視察に行きました。明日、ダムに水が貯まる状況ならともかく、急いでも湛水まで数年かかることは明らかです。今この時点での強制収用は認められません。
●水没地区の方々が資産を処分する時、補償金にかかる税金の対策として、5千万円控除と代替資産の取得が同一年度にはできないことになっているそうです。事業認定を急いだ場合には、どちらかが受けられないような事態が起きてしまう。あるいは両方受けられないようなこともありうる。こういう状況の中での事業認定は認められません。
●ダム事業、水特(水源地域対策特別措置法の)事業、利根川・荒川水源地域対策基金事業は全体としては74%という説明が先日の八ッ場ダム対策会議でもありましたが、基金事業については地域的にかなりばらつきがあります。川原湯地区はまだ50%台、事業認定が公示になり、補償基準が著しく下げられる場合が出て来た時、これまで計画されてきた水特や基金事業がすんなり進まなくなるのではないかというのが、地元の人たちの大きな心配です。これについても、明確な回答がありません。こういう中で、事業認定を認めるわけにはまいりません。
 議長にお伺いしたいのですが、事前通告をしていなかったのですが、起業者に(答弁に)壇上に上がってもらうわけにはまいりませんか?

議長:あらかじめ、ご自分でもっぱらご主張されるということでしたので、それで行って下さい。
牧山:しかし、そこにいるので、もし起業者が納得するのであれば、いいのではないですか?
議長:そのように、事前に通告させていただいていますので、その通りにやって下さい。

牧山:それでは、ここに資料がありますので、ご存知ない方もいらっしゃると思いますので、三事業の進捗等の事業について、お聞きいただきたいと思います。まず三事業の合計は川原畑地区が80,49%、川原湯地区は68.66%、横壁地区72.92%、林地区73.68%、長野原地区が80%、合計で74.63%。次に水特、基金事業、これがかなり生活再建に関わる事業ですが、川原畑地区68,42%、19事業のうち13事業やって、残り6事業。川原湯地区は53,57%、28事業のうち15事業をやっていて、残り13事業がまだやっていない、川原湯地区が五地区の中で最も遅れているというのが実態です。横壁地区は72,73%、22事業のうち16事業がやられていて、6事業が残っています。林地区は71.88%、32事業のうち23事業がやられていて9事業が残っています。長野原地区85.19%、27事業のうち23事業がやられていて、残り4事業。全体で71.31%。128事業のうち90事業がやられていて、残りは38事業。

 ここに平成26年10月20日付で出された八ッ場ダムニュースがあります。八ッ場ダム工事事務所長が佐々木淑充所長から矢崎剛吉所長に代わられた時に出されたものです。どちらの人も、生活再建を優先して進めるようなことを言っています。歴代の所長もずっと言ってきましたが、どうもこの頃、会議の中での答弁も具体性を欠き、なかなかはっきりした答弁がいただけない中で、本当に生活再建をそんなに真剣に考えているのかと、疑問に感じられてなりません。大体今日なぜ矢崎所長はいないのですか? 事業認定の申請という資料が八ッ場ダム対策会議で配られた時に、1月24日に長野原町の若人の館で事業認定の説明会がありました。この時も矢崎所長はいませんでした。こういうことで本当に生活再建とか、今、移転地も決まらないで苦しんでいる人の気持ちが汲めるんでしょうか? 今日は群馬県の関係の方来ていますか?
誰もいないようですね。重要な公聴会に群馬県の担当者が誰も来ないというのも変な話です。こんな中で事業認定が進むことは絶対反対です。

 いずれにしても、今日の議長さんの裁量が今後のカギを握っていると考えます。ここで出された意見がどのように反映されるかがあなたの裁量にかかっている。そうでなかったらおかしいですよね。八ッ場ダム工事事務所の所長もいないし、この場の状況をどう伝えるかも議長の裁量にかかっています。当初申し上げたように、私達の話したことがきちんと反映されて、多くの人が納得する結論を導き出していただきたいと思います。
議長:私がここでコメント申し上げることはありませんので、公述を続けて下さい。
牧山:普通、議長はこのような場合、自分の私見であっても答えると思うんですが、お答えになれないというのは実におかしい話ですが、まあ、そういうことだそうですので、大体時間になりますのでこのあたりで終わりにします。ありがとうございました。
議長:ありがとうございました。降壇して下さい。
高山:私は言いたいことの十分の一も言えませんでした。