公聴会の会場

公聴会の会場

 6月26日と27日の両日、八ッ場ダムの公聴会が群馬原町の公共ホールで開かれました。
 公聴会はダム予定地の土地や家屋の強制収用の可否を判断する為に、国土交通省本省(認定庁)が開いたもので、あらかじめ申し込みをした公述人が意見を述べ、起業者である国交省関東地方整備局に質問しました。
 2011年に行われた八ッ場ダムの公聴会では、ダムに賛成意見を述べた公述人は行政関係者と地元の議会や住民組織関係者で占められ、八ッ場ダムの恩恵を受ける筈の下流都県からの公述人は全員が反対意見でした。今回の公聴会でも、賛成意見の7件の公述は、下流都県の行政関係者と地元議会関係者のみで、下流都県の住民はいませんでした。
 事業認定に賛成と述べた公述人らは、八ッ場ダムを早期に完成するために事業認定が必要という意見で、ダムの早期完成を求める理由として、下流都県の行政関係者は利水・治水上の必要性を述べ、地元の町議、元町議らは八ッ場ダム3事業のうち生活再建事業・地域振興事業の必要性を訴えました。
 事業認定と八ッ場ダム事業に反対した研究者、市民らは、ダム行政の非人道性、八ッ場ダムの不要性をこれまでの経緯、国交省資料等をもとに公述しました。八ッ場ダムに反対する公述人と行政側の公述人の意見は真っ向から対立し、反対側の公述人は起業者の杜撰な計画を厳しく追及しましたが、起業者の答弁は質問にまともに答えるものではなく、決められた時間が過ぎさえすればいいという風に見えました。実際、八ッ場ダム事業の責任者である国交省関東地方整備局長はもとより、河川部長、八ッ場ダム工事事務所長の姿も会場にはありませんでした。
 事業認定も公聴会も一般の人々にはなじみが薄く、だだっ広い会場に聴衆は僅かでした。事業認定手続きの一環である公聴会を適当に済ませ、ダム建設に邪魔な住民を追い出したい国交省にとっては、世間の無関心とあきらめは最大の味方です。

 それぞれの公述の概要をお伝えします。なお、当日、ジャーナリストのまさのあつこさんが公述の模様をツイキャスで配信したライブ履歴をネット上で見ることができます。それぞれの公述の該当箇所に録画ページのリンクを貼りました。

八ッ場ダム公聴会(6月26日)(公述人の敬称略)
ライブ録画(公述人1~3)http://twitcasting.tv/masanoatsuko/movie/179262901
議長:本公聴会は土地収用法の規定に基づき、起業者である国土交通大臣、代理人、関東地方整備局長から平成27年4月10日付で事業認定の申請があった事業について開催するもので、事業認定庁(国交省)として当該申請に係る事業の認定の可否を判断するに当たり、勘案すべき情報を収集することを目的とする。

●公述人1 国交省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所・副所長・小宮秀樹ほか (30分)
 事業認定申請を行った土地の所在、事業目的、事業内容、用地取得率93%など説明。
起業者は当該事業を遂行する為の十分な知識と能力を有していること、当該事業が土地の適正かつ合理的な利用に寄与すること、当該事業が公益性があることから、土地収用法第二十条の要件にすべて該当する事業と考える。

公述人(右)と議長(国交省土地収用監理室)

公述人(右)と議長(国交省土地収用監理室)

 ●公述人2 神原禮二 (30分)
 クリックすると事前に国交省に提出した公述要旨をご覧いただけます。⇒公述申出書
 茨城県の取手市在住。
 今回の土地収用法の問題は、国土交通省が国土交通省に依頼した、実に内輪の茶番のような取引。
 地元の皆さんは、下流の都市用水のために、洪水調節のために我慢してほしいと説得されてきた筈。下流都県の人々がその犠牲によって救われるなら犠牲には意味があるが、茨城県は今、膨大な水余りに苦しんでいる。八ッ場ダムの利水分は143万トンだが、関係都県で280万トンの水が余っている。
 八ッ場ダム基本計画が立てられた1986年には利根川水系8ダムのうち、7ダムが完成済み、残る奈良俣ダムは1990年完成。すでに現在の保有水源はほぼ完成していた。
 日本の合計特殊出生率が人口増減の分岐点である2.07を割ったのは1959年(昭和34)。従って1986年時点での将来の人口減少を政策策定者が知らぬわけがない。

公述人の質問に答える起業者 (国交省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所)

公述人の質問に答える起業者
(国交省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所)

 質疑応答
神原:茨城県は八ッ場ダムの治水事業(利根川の洪水調節)に参画するために、126億円の治水負担金を出している。利根川の治水基準点の八斗島(群馬県伊勢崎市)で僅か10数センチしか治水効果のない八ッ場ダムについて、国交省は利根川下流では治水効果は10分の1以下としている。茨城県の上流の古河市、中流の取手市、下流の神栖市、それぞれ八ッ場ダムで何センチの治水効果があるのか? 
国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所(以下「八」と略):治水上の基準点以外は算出していないことから定量的にはお答えできないが、茨城県を含め、下流には流量を低減したり、水位を低下したりする洪水調節効果があると考えている。

神原: 2010年からの国交省関東地方整備局による八ッ場ダムの検証で、茨城県が提出したのは、2007年に作った「いばらき水のマスタープラン(長期水需給計画)」。マスタープランの達成年度である2020年度、人口は297万人とされたが、マスタープランの上位計画である県の基本計画では、2020年度の人口を285万人としていた。国も県も、過大な人口予測に基づいて八ッ場ダムは必要という結論を出した。水需要の予測は実績値と30万トン近いズレがある。
 マスタープランの古びたデータを受け取った時、どう考えたか?
:マスタープランの前提とした人口推計は、2006年3月に策定された総合計画の推計値が用いられている。マスタープランは2010年10月27日に茨城県から提出されており、茨城県の長期水需給計画としては、八ッ場ダム検証の時点では最新データ。

神原:2010年には次の基本計画が出されて人口推計値が12万人下方修正された。その際、通常作り直すべきマスタープランを茨城県は今日に至るまで作っていない。作れば、水がこれ以上要らない水需給計画を立てざるをえないからだ。
 私の後で地元の方々が、どれだけ犠牲を払ったか、だから、このダムを造ってほしいと公述されるだろう。本当に哀しいことだ。
 酸性の吾妻川は中和事業の為に年間10億円が果てしなく未来永劫かかる。その上、八ッ場ダムによって必要になる補修費、減価償却費はどうなるのか。下流都県は余分の水のために、余分に浄水場を建設する。そうした無駄な投資をどんどん続けている。敗戦に導いていった国のあり方と一緒ではないか。国の政策と抱き合い心中をして、私たちまで巻き込むのはやっぱりおかしい。
 良心のある地元の人々の土地が収用されることを許してはならないと思う。
 
●公述人3 星河由紀子 (10分)
 八ッ場ダム水没住民の一人。
 5歳の時にカスリーン台風(1947年)で家を、父を、祖母を流され、すべてを失った。生まれは勢多郡富士見村。赤城白川が決壊し、兄の先導によって小高い所に逃げた。*注
 長野原に嫁いで来た時、ダムはまだ反対闘争の最中だったが、下流都県に嫁いでいった妹や、就職した兄弟が利根川や荒川のほとりで生活しており、「雨が降ると川の水が凄いんだよ」という話を聞くようになった。夫の祖父母、父、夫の三代がダム反対から条件付き賛成、そしてダム賛成へと変わった姿を見てきたが、決して犠牲になったとは思っていない。人間は共存していかなければ、平和な安全な暮らしはできない。下流都県の皆さんが八ッ場ダムができることによって水の供給を受け、洪水の恐怖から逃れ、安心した生活ができるならば、ダムは決して無駄とは思わない。
 八ッ場ダムのニュースを見るたびに心を痛め、政権交代でダム中止が発表された時には身の縮まる思いだった。なぜ私達がこんなに責められなくてはならないのか。移転していった方々や早くダムを見たいと言って亡くなった多くの人々のためにも、是非、八ッ場ダム、あとじさりすることなく前へ、前へ進めて、予定より早く完成させていただきたい。
 長野原町が必要としているダムではない、という言葉も多く聞かれるが、このダムによって安心した生活がおくれるよう、住民が職に就けるような場をつくり、生活再建を成功させてこそ、八ッ場ダムの成功と思う。どうしたらダムを早く進めていただけるか、ここまできてもまだ反対の声が多く聞かれる中、胸を痛める町民たちの代表として述べさせていただいた。
*注:この公述が行われた翌日の公聴会で、赤城山麓の土石流は利根川の洪水軽減とは無関係であることを国交省が公述人の質問に答えて回答。

●公述人4 豊田銀五郎 (30分→10分))
 ライブ録画(公述人4,5)⇒http://twitcasting.tv/masanoatsuko/movie/179272983

  (公述内容については)白紙で了解いただいて、時間も10分でいいと言ったら、30分とっていただいた。
 八ッ場ダム事業は今まであまり時間がかかり過ぎているので、これからスムーズに進めていただくにはどうしたらいいかという観点から、ここに立った。
 八ッ場ダム事業は下流都県の治水・利水に必要であるということで協力してきた。ダム建設事業(補償事業)、水特事業、基金事業の三事業により、私達の生活再建事業、地域振興事業を国と1都5県の協力で進めてきた。ようやくダム本体が着工になり、不測の事態がない限り、予定通り進むものと期待している。
 しかし未着工のものを含めて、生活再建事業、地域振興事業は私達が納得する状況には至っていない。まだまだ難しい問題がある。そんな中で、すべての事業を進めていくためにも、事業認定が必要だという判断のもとに協力してきた。従って、私達が協力した事業認定が生活再建事業、地域振興事業の妨げになるような運用をしないよう、特にここでお願いしたい。
 この場で正式に話したいと言った覚えは正直言ってない。(会場より「やらせだ」との声。) *注:公述は事前申込制。
 ただ、せっかく議長さんが機会を与えてくれると仰ったので、生活再建事業、地域振興事業について私達が望んでいることに対してどう思っているのか、八ッ場ダム工事事務所はいつでも近くにあるので、できれば認定庁(国交省本省)の立場の人にお伺いしたい。
議長:認定庁は土地収用法の適用が妥当かどうかを判断するところで、水源地域対策などについては我々が事業としてやっているものではないので、お答えする立場にない。事前にお伝えしているように、この場は起業者側への質問をすることになっており、生活再建事業については起業者側が答えるのが妥当と思うので、もともとの質問用紙にはないが、生活再建事業について何か回答があれば。
:生活再建事業はダム事業が完成すると同時に皆さまの生活再建が成り立つよう、地元の皆様と協議させていただきながら進めてまいりたい。

公述と共に映写されたスライド

公述と共に映写されたスライド

 ●公述人5:竹本弘幸 (30分)
 クリックすると公述申出書に書かれた公述要旨が開きます。⇒公述申出書
 30年ほど、群馬県の地形および地質、火山災害について調査してきた。
 八ッ場ダム検証資料にみる国交省河川部門の情報操作と検証調査から見た流域の被害想定について
 土砂災害を誘発・拡大化させ,協力した流域住民の生活基盤を奪う日本一災害リスクが高いダムである。
 
 吾妻渓谷は,強酸性で熱水変質作用を受けた脆弱な地質と急峻な地形で構成されている.この山間地の生活地盤は,浅間黒斑火山の山体崩壊物(OkDA)により埋積された平坦地である。崩れ落ちた土石で構成されたOkDAは,吾妻川が谷を刻むことで地下水面を低下させ,水で飽和し崩壊する状態や地すべりの進行から脱したものである。このように不安定な地形や堆積物で構成された場所にダムを造り,手を加えれば災害を誘発する可能性が高いのは自明の理である。
公述の際に映写されたスライド 1.3万年前のOkDA地べりや深層崩壊に伴う山津波と吾妻河道の屈曲

公述の際に映写されたスライド
1.3万年前のOkDA地べりや深層崩壊に伴う山津波と吾妻河道の屈曲

 
 八ッ場ダム建設で起こる現実的被害シナリオ 火山噴火や地震で後世に土砂災害と借金だけを残す土砂ダム
 応桑層で発生する土砂災害は,長野原町民の生活基盤を奪う可能性が高い.指摘を受けても偽りの検証で推進した河川官僚・県・有識者は責任を負う義務がある.
 住民の皆さまは国交省の責任を担保する書面を取り交わしておく必要があるだろう。
 ダムに土砂がたまると、砂防機能は落ち、下流都県にとっては土砂をためるだけのダムとなる。
 国交省はダムの堆砂量を数字操作によって不正に行い、過小に見積もっている。
(事前に10の質問を資料と共に提出したが、関東地方整備局はどの質問にもまともに答えず。公述終了後、公述人より議長に対して、専門回答できる人物立会いの下で再度公聴会を開くことを求めた。)

●公述人6:篠原憲一 キャンセル

(公述人8の竹内良太郎さんが到着していないことを理由に、議長がここで1時間の休憩を通告)

公述人7:遠藤保男 (30分)
ライブ録画(公述人7~9)⇒http://twitcasting.tv/masanoatsuko/movie/179285972
クリックすると、公述申出書の公述要旨が開きます。⇒公述申出書 
 
 八ッ場ダム事業はきわめて不当な手法が用いられてきたこと、その必要性がもはやないこと、完成後、ダム湖の水位変動により貯水池周辺に地すべりを引き起こす可能性が高く、代替地住民に日常的な不安をもたらすことから中止を求める。
 八ッ場ダムの経過と「住民が迫られた理不尽な選択」を伝えるビデオ映写。ダム予定地における行政圧迫、住民の移転代替地の問題(造成の遅れ、高額など)。
 
質疑応答
:八ッ場ダム予定地住民はなぜ大都会の犠牲にならなければならないのか?
:(質問には直接答えず、八ッ場ダムの必要性と手続きの正当性を説明。)

遠藤:八ッ場ダムに反対した水没予定地住民はなぜ生活ができなくなったのか?
:八ッ場ダム事業はダム本体事業と生活再建事業を車の両輪として・・・
遠藤:答えられないというふうに整理させていただく。
生活再建は「ずり上がり方式」を採用したが、決まった時点で技術的な保障はあったのか?
:八ッ場ダムの代替地は、昭和55年に群馬県が提示した生活再建案が基本。その段階で詳細な検討等は承知していない。

遠藤:ダム湖になり、水位変動が繰り返されると、周囲の傾斜地で崩落が起きることはないのか?
 この問題は専門家から危険性が指摘されている。宅地開発法では許されないスケールの人工盛土の上に代替え地を造成している。切り土の方は熱性変質土が存在しているところもあり、アンカー止めしているが、熱性変質土の強い酸性で、アンカーが溶解してしまうのは時間の問題である。
 イタリアのバイオントダムは山津波に襲われ、ダム湖からの一瞬の溢水で2,000人以上が犠牲になっている。この惨事を八ッ場ダムに直接置き換えることはできないが、最悪のことを想定して対処方法を考えておかなければならないという警告をこの惨事は発している。
 実際、八ッ場ダム湖が湛水後に繰返し運用する水位変動で、その周囲が崩落した場合、最大でどの程度の量の土砂がダム湖に崩落するのか、また、そのときにどのような対応が考えられるのかを想定しておく必要がある。
○起業庁は、科学的な根拠に基づいて、最大でどの程度の量の土砂がダム湖に崩落すると考えているのか、及び、その場合の対応方法について示されたい。
:地質や地すべりの専門家の助言を得ながら対策を講じることとしているので、ダム完成後に崩落する土砂の量は算定していない。

公述人8:竹内良太郎 (30分)
 ダム予定地のことについては前の方が色々話してくれたが、ダム予定地だからと舗装もしてくれなかった。最近やっと舗装されるようになったら、いよいよダムということになった。本当にこれは我々が造ってくれと言ったダムではない。下流都県がどうしてもと言って、埼玉県では知事が本気で通ってくれた。
 八ッ場ダムが始まった頃、私は小学校高学年だったが、通学路や学校の入口にむしろ旗を掲げてダム反対といった時代が30年近くも続いた。隣近所でも話ができなかったと、先輩方から聞いた。その後、県が生活再建案を提示して、ようやく条件付き賛成になった。下流がどうしてもということで、平成4年、群馬県や下流都県、関係者多数が出席して基本計画の調印式が長野原町で開催された。
 その後、道路や代替地等も順調に進捗。道路ができなければ車が入れない、細い道ばかりの地域で、仕方なく誰もが(工事を)許可した。代替地もできない人たちは町外へ。10日ぐらい夜も寝ずに家族と話し合い、先祖代々守ってきた家、土地を手放して移転した気持などわかる筈はないと言われ、涙が出た。町外へ出た人でも、女性は他所から嫁いできたのですぐに慣れたようだが、男性はどこへ行っても話下手で嫌われたという。それでも戻るわけにはいかないので、一日も早くダムを造ってほしいというのが皆の願い。
(会場より、「まだ納得していない者もいるんだ」と水没住民の声)
 代替地へ移ってからも大変なことが色々とあったが、移転した以上はどうしようもないということで暮らしている。会社や家が解体され、整地も済んだ時、県の担当職員が「やっとどいてくれたね」と。棒を持っていたら、ど突きたい気持ちだった。でも、そのおかげで国道145号の付替えができて、西吾妻にとっては本当によかった。運送業や観光業の方々にも、今までは台風があればキャンセルがあったが、皆さんのおかげだと言われた。そうわかってくれれば、ありがたいと思った。道路は一番大事なものだなとつくづく思った。(会場から、「道路ができたのだから、ダムは造らなくてよい」との声)
 (ダム反対の)皆さんの気持ちもよくわかるが、ダム本体が完成しても貯水できなければ、下流都県もがっかりすると思うし、今まで使った税金が無駄遣いになる。60数年悩み、苦しめられた我々の気持ちもわかってほしい。

●公述人9:渡辺洋子 (30分)

ダム本体の縮小でコスト縮減

ダム本体の縮小でコスト縮減

 事業認定に反対の意見を述べる。
 構想発表から63年目となる八ッ場ダム事業は、破壊された水没予定地住民の生活を再建する為に「現地再建ずり上がり方式」を掲げたものの、机上の代替地計画は地形地質に無理があり、これまでに住民の四分の三以上の世帯が流出。何世代にもわたる住民の犠牲は計り知れない。
 八ッ場ダムは国の名勝・吾妻渓谷をダム本体建設地とし、渓谷上流部と天然記念物・川原湯岩脈、自然湧出の川原湯温泉の源泉(元の湯)などを沈める。急峻な岩壁と自然林が織りなす景観と山懐のいで湯は、多くの観光客、数多くの文人を魅了し、心身ともに癒してきた。
 ダム予定地には鳥類の生態系の頂点に位置するクマタカ、自生地が大変少ないカザグルマなど、絶滅が危惧される多くの動植物が生息している。かけがえのない自然の宝庫をダムに沈めることは、後の世代に取り返しのつかない損失を与える。
 また、水没予定地は、江戸時代の浅間山大噴火によって発生した天明泥流が覆った土地であり、全域が遺跡であると言っても過言ではない。同地で出土しつつある夥しい天明浅間災害遺跡は、未曾有の災害に遭遇した当時の村人の生活や復興の軌跡をまざまざと蘇らせる貴重な歴史遺産。天明泥流の下からは中世~縄文各期の遺跡が出土。考古学者を含む300名以上の文化人が八ッ場ダムによる自然と文化の破壊を憂い、ダム予定地の自然の保全と共に、これら遺跡を保存する必要性を訴えている。
 八ッ場ダムの建設目的はいずれも理に叶っているとは到底言えず、住民を強制的に故郷から立ち退かせる理由にはなりえない。不要なダム建設の見直しと住民の真の生活再建、地域再建こそ公共事業として行うべき急務。

質疑応答

民主党政権下の八ッ場ダム検証では、地すべり対策と代替地の安全対策に約150億円かかると試算

民主党政権下の八ッ場ダム検証では、地すべり対策と代替地の安全対策に約150億円かかると試算

渡辺:事業認定の申請、その後の公告・縦覧について、いつ、どのような形で当事者である水没予定地住民と水没関係五地区住民に告知したのか?
:申請時に記者発表を行い、当事務所のホームページに公表。
渡辺:ホームページを住民の誰もが見られるわけではない。住民への情報提供を怠っていることは、ダムの安全性の問題でも共通する。
 八ッ場ダムは周辺を人工造成の代替地を含む住宅地が取り囲む、全国でも類例のない特異なダム。しかし脆弱な地質の問題とこれへの対策について、住民に実状を伝えていないと聞く。
 2007年、関東地方整備局はダム本体の規模を縮小。八ッ場ダムの事業費を倍増した2004年、増額に反発した関係都県の意向を受けてコスト縮減技術委員会を設置し、委員会の提言を受け、ダム本体のスリム化等のコスト縮減を図った。ダム関連事業費の肥大化の皺寄せといえる。
 現在始まっている本体工事の基礎掘削の結果、熱水変質帯が想定外に広がっていたり、岩盤の節理が深刻であった場合、ダム本体工事の設計変更を改めて行うのか?
:これまでの調査の結果、ダムサイト予定地の岩盤はダム建設に問題ないことを確認しているが、基礎掘削を行って実際に現れた岩盤の状況によっては、設計内容を照査。

国交省による代替地分譲に関する意向調査資料(2005年) ー川原湯・打越代替地

国交省による代替地分譲に関する意向調査資料(2005年)
ー川原湯・打越代替地

 渡辺:現地では地すべり対策のために平成25年から、代替地の安全対策のために昨年からボーリング調査を行ってきたが、新たな地すべり対策と代替地の安全対策は実施されるのか?
:ボーリング調査を実施しており、今後、それらの結果を踏まえて、専門家の助言を得ながら、対策の必要の有無や内容・設計の検討を行う。

渡辺:新たな安全対策を行うには事業費の増額が必要だが、群馬県知事は選挙戦中の知事選アンケートで新たな増額には応じられないと回答(6/23上毛新聞)。関係都県も事業費の再増額には応じないとしている。どうやって安全対策費をつくりだすのか? 
:八ッ場ダム建設事業は、早期完成に取り組むとの方針の下、事業全体のコスト縮減により対応することとしており、総事業費以内の完成を目指して最大限努力する。

川原畑地区の代替地に広がる 酸性熱水変質帯

川原畑地区の代替地に広がる
酸性熱水変質帯

 渡辺:奈良県・大滝ダムの地すべりの先例もある。試験湛水中、あるいはダム運用後に地すべり等の災害が発生した場合、だれがどのような責任をとるのか?
:ダム建設に当たっては、試験湛水を行い、湛水による地すべりを最終確認。試験湛水時に斜面に異常が確認され、ダムの本格運用に支障がある恐れがあるとして、ダム事業者が必要な対策を講じた事案があることは承知している。湛水に伴う地すべりが発生し、ダムの運用に支障がある恐れがある場合には適切に対応する。

渡辺:ダム運用への支障を言いながら、住民生活への支障に触れないことが非常に気にかかる。住民が被害をこうむった場合、国交省はどのような補償措置を講じるのか?
:湛水に伴う地すべりが発生し、ダムの運用に支障がある恐れがある場合には、試験湛水時であればダム事業者が、ダム運用時であればダム管理者が適切に対応する。
渡辺:(住民の生活に支障があっても)補償しないのか?
:上記回答繰り返し。
渡辺:私たちの税金が地元の更なる犠牲の為に使われることには絶対反対である。

●公述人10:嶋津暉之⇒こちらのページに公述内容をまとめています。
ライブ録画(公述人11~12前半)http://twitcasting.tv/masanoatsuko/movie/179303620

公述人11:角田守良(埼玉県加須市副市長) (10分)
 加須市は利根川をはじめ大小河川、用排水路が数多く横断的に流れる人口11万5千人の田園都市で、埼玉一の米どころ。本日は治水・利水両面から、一級河川利根川の八ッ場ダム建設工事について、一日も早い完成をお願いしたく、意見を述べる。
 治水についてー加須市では昭和22年9月のカスリーン台風により、新川通り地先において利根川堤防が決壊し、その濁流により首都東京まで甚大な被害が発生した。輪中の地といわれる北川辺地域の新古河地先で利根川と合流する渡良瀬川が利根川からの逆流水により決壊し、多くの人命や流出家屋等の被害があった。近年では平成13年の台風15号の際、利根川堤防の基礎地盤から大規模な漏水が発生。現在も、堤防強化のための国の堤防拡幅工事が実施されている。この工事は加須市を含む九市三町にまたがる延長70キロメートルにわたる。平成16年度から事業化され、加須市だけで200戸以上の住宅移転等の協力をいただいている。
 私達は利根川沿川住民として、過去の悲惨な災害を教訓に、水害を再び繰り返すことのないよう、自らの地域は自らで守るという決意のもとに治水対策に鋭意取り組んでいるが、近年のゲリラ豪雨や台風による被害の現状を考えると、いつ大規模な災害に襲われるか、その時果たして住民の命と財産を守れるのかと心配でならない。その時に備え、加須市では隣接する羽生市と共同で約700名の水防団を結成し、毎年洪水期前に水防訓練を実施し、国交省も加須市と羽生市に三カ所の河川防災ステーションを整備し万一に備えている。流域自治体だけでは利根川全体の治水に備えるには不十分であることは言うまでもない。
 利水についてー加須市は市域面積133平方キロメートルの半分が農地であり、その農地の85%が水田である。加須市で栽培される多くの品種の中でも、特に北川辺産、輪中のコシヒカリはブランド米として高く評価されている。市の基幹産業である農業では稲作の水源のほぼすべてを利根川に依存している。上水道においても全配水量の7割を利根川から取水する県水に頼っている。このように利根川は治水・利水の両面から私達の生活に密着し、大きな恩恵をもたらしてくれる重要な河川である。
 そうした中で八ッ場ダムは重要な役割を担うものであり、利根川全体への大きな効果が期待されている。本市住民のみならず、流域住民、首都・東京など下流域の全住民にとって、一日も早い完成が望まれている。また、これまでにコストや安全性、実現可能性などの多角的検証が(関東地方整備局により)実施され、八ッ場ダムが他の対策にくらべ優れているという結果も出されていると聞いている。加えて、かなりの事業進捗も図られている。以上を踏まえ、一日も早い完成を望むものである。 最後に、八ッ場ダムの整備にあたり、地権者など関係の方々の長年にわたってのご苦労を痛感するとともに、下流域の私達の為に上流域の皆様にご協力いただけることに心より御礼を申し上げる。八ッ場ダムにより移転を余儀なくされた方々の生活再建等についても、早急に解決するようお願いするものである。

深澤さんs●公述人12:深澤洋子(30分)
 東京都民の立場から、意見を述べる。八ッ場ダム事業は公益性がなく、地すべり等の災害、とりかえしのつかない自然破壊、歴史文化の破壊をもたらす愚かしい事業。事業の続行および水没予定地に住む人々の土地の強制収用に反対する。
 八ッ場ダムの利水上の必要性がないことは明白。東京都の水供給の実績値は減少しているが、水需要予測は常に右肩上がり。実績値と水需要予測の激しい乖離を見れば、東京都は新たな水源を必要としていないことは明らか。先ほど、加須市副市長が必要性を述べたが、埼玉県も同様である。節水機器の普及等により水需要が減っている中、人口減少時代を迎え、この傾向は一層加速する。最近、国交省は異常気象で渇水が起こると言っているが、すでに十分な余裕水源がある中で、それでもとんでもない日照りに備えて、財政的に無理な事業を進め、自然を破壊し、巨大な構造物を造ることはばかげている。緊急に必要な時は、地域間の融通など様々な手段を組み合わせる、柔軟性のあるシステムを構築することが必要。

東京都水道の一日最大給水量の実績と予測

東京都水道の一日最大給水量の実績と予測

八ッ場ダム事業に参画するに当たり、各都県は身近な水源である地下水の利用を削減しようとしている。特に東京都は地盤沈下や汚染の恐れがあるとして、地下水40万立方メートル/日を保有水源にカウントしていない。東京都が八ッ場ダムに求めている水利権は50万立方メートル/日。地下水をカウントすれば、かなりの水量をカバーできる。現在使われている地下水をカウントしないことは、八ッ場ダム事業に東京都が参画する為の大きなごまかし。これまで地下水利用を抑制してきたことにより地盤沈下は沈静化しており、現在の地下水使用量を維持することに問題ないことは、東京都環境局も認めている。2011年の福島原発事故の際には、河川水が広く放射能に汚染されたので、代わりに地下水が活用され、地下水の安全性、重要性が再認識された。大地の浄化作用によって河川水よりはるかに安全で美味しくなる地下水を適切に管理しつつ活用することが水行政に求められている。
 このように八ッ場ダムの利水上の必要性は、過大な水需要予測と保有水源の過小評価によって造り出された。ダムが完成したとたん、水需要予測が現状維持、右肩下がりになることが多くの自治体で見られる。その時には必要のないダムの水を購入する為に、高い水道代、ダムの維持管理費が重くのしかかる。将来世代を苦しませないために、八ッ場ダムの建設を中止し、強制収用により新たな不幸を生み出さないようにする決断が必要。

質疑応答
深澤:八ッ場ダム検証の際、関東地方整備局は関係都県による過大な水需要予測の是正を求めなかった。事業の利水分については、厚労省から補助金がつき、国費が投入される。右肩上がりの予測を科学的と考えているのか? 財政的な見地から、水需要予測の是正を求めなかったことは正しかったと思っているか?
:起業者である国土交通省としては、八ッ場ダム事業の検証に係る検討においては、各利水参画者にダム事業参画継続の意思があるか、開発量として何トン必要か、水需給計画の点検・確認を行うよう要請し、その上で検討主体(関東地方整備局)において必要量の算出が妥当であることを確認し、各水道事業者の必要量は水道施設設計指針などに沿って算出されていること、水道事業認可等の法的手続きを経ていること、利水事業においても再評価においても事業は継続との評価を受けていることを確認するとともに、学識者にもその結果を確認いただいている。
深澤:各自治体の水需要予測は正しいと判断したということか? 
:各地域の安定的な水供給を考え・・・関係都県に対して、予測に是正を求めたり、根拠を問い質す必要はなかったと考えている。
深澤:科学的な見地から検討はしなかったということだと理解する。

 関係都県の中で唯一地下水をカウントしなかった東京都に対して、その誤りを指摘しなかったのか? 水循環基本法に公共性の高いものとして位置付けられた地下水を水行政の中で恒常的に利用せず、遠くのダムに水源を求めることは大変いびつな自治体の姿。
:一都四県が必要とする水道水源に関するお尋ねについては、各都県が説明すべきと考える。東京都の地下水については、東京都土木技術支援・人材育成センターが平成21年に公表した地盤沈下報告書によれば、揚水規制による地下水の上昇がほぼ頭打ちの状況にあり、地域によって地盤沈下の進行が予測される。また平成18年度に東京都環境局が公表した「東京都の地盤沈下と地下水の現況検証について」によれば、平成11年度の地下水管理ガイドライン策定調査報告書において、設定水量を維持しても全く地盤沈下が起こらないとは言い切れず、今後も揚水規制の継続が必要としている。
深澤:(質問した)水循環基本法との関係に答えていないが、八ッ場ダム検証の際は、地下水をカウントしない東京都の言い訳を認めたということだと理解する。

 八ッ場ダムを建設するには吾妻川の中和事業を継続する必要があるが、半世紀前に始まった中和事業による品木ダムには大量のヒ素がたまっている。ヒ素の解決策がない限り、八ッ場ダムは”トイレのないマンション”と同じ。そもそも八ッ場ダムは上流の草津などの観光地や嬬恋などの農場から富栄養素が沢山流入する。これに中和事業の影響も加われば、ダム湖観光に期待する地元への裏切りとなる。八ッ場ダムを建設することによるマイナス面はいくらでもあるが、これも大きな懸念材料の一つ。
 吾妻川上流総合開発事業として平成21,22年度に草津にプラントを建設して行った実験の結果はどうだったのか? 品木ダムのヒ素混じりの脱水ケーキをコンクリートとして再利用する計画は、どこまで進んだのか? 実現の可能性はあるのか? 八ッ場ダムからヒ素混じりの中和生成物を浚渫しなければならなくなった時、どこにどのように処理するのか? 浚渫処分費用は年間いくらになるのか?
:これまでの調査において、酸性水の中和処理については、プラント方式による中和処理の有効性、実現性が確認できている。また、中和生成物をセメント材料として利用できることが確認できている。吾妻川上流における遅沢川などの支川は、依然として酸性が強い状況にあることから、品木ダムによる中和対策を継続するとともに、新たな中和対策の調査および検討を進めることとしている。なお、中和処理の過程で生成され、品木ダム貯水池に沈殿した中和生成物は浚渫を行うなど、適切に管理することとしている。このため、これらの中和生成物が品木ダム下流に大量に流出し、八ッ場ダム貯水池に浚渫・処分しなければならないほど堆積することはないと考えている。
深澤:ヒ素混じりの脱水ケーキをセメントにする技術は成功したということだが、いつ頃実際に行われるようになるのか?
:資料を持ち合わせていないため、この場では回答できない。
深澤:国交省の方がご存知ないということは、具体的な青写真がまだないということだと理解する。
 品木ダムの上流に貯砂ダムを造っていると聞く。中和事業は年間10億円かかっており、キリがない事業。品木ダムだけで完結できるということだが、ヒ素混じりの浚渫物は早晩埋めるところがなくなる。八ッ場ダムに流入してくる恐れは十分ある。
 私は2003年に吾妻渓谷にきて、色々な方のお話を聞いて、八ッ場ダムはあまりに問題が多い、造ってはいけないダムだと思った。地元の方からすれば遅きに失したのかもしれない。60年以上前のダム計画だから、地元の方々は本当に苦労された。その間、社会情勢の変化に応じた政治判断が当然なされるべきであった。私達は八ッ場ダムの中止と共に生活再建支援法を作ってほしいと民主党政権に求めたが、実現に至らず残念。地元にあった宝物、川原湯温泉や吾妻渓谷、遺跡ー自然や文化を大事にした再建ができた筈。運動に関わってきた者として、今このようにして八ッ場ダム事業が強制収用の手続きにまで至ったことは本当に残念だが、八ッ場ダムによって更に地すべり等の災害が起こりうることを考えると、私達はあきらめずに八ッ場ダムの中止をこれからも求めていきたい。