生態系ピラミッドの頂点に位置するイヌワシ・クマタカは、地域の生態系の豊かさをはかる指標種とされており、ダム事業ではこれら猛禽類の調査が行われています。
 当会では八ッ場ダム事業によるイヌワシ・クマタカ等の生息状況に関する調査報告書を情報公開手続きによって入手し、専門家の分析結果をこのほど学習会で報告していただきました。

東京新聞群馬版より

東京新聞群馬版より


 花輪伸一氏(元WWF)による報告は、1.日本のイヌワシ・クマタカの現状 2.環境アセスにおける猛禽類の調査方法 3.八ッ場ダム猛禽類調査報告書の問題点について伝えるものでした。
 イヌワシの推定生息数は日本全国で400~650羽(1997~2001年)とされ、開発事業による環境悪化、営巣妨害により繁殖成功率は年々減少しています。クマタカも約2,000羽にまで減少しています。
 花輪氏は学習会において、以下の問題を指摘しました。
・八ッ場ダム事業による調査報告書では、重要な部分で黒塗りが多く、情報公開度が低いため、第三者の検証を不可能にしていること。
・ダム事業の継続を前提としているため、イヌワシ・クマタカの生態を無視して、繁殖率の低下を過小評価したり、粗雑な予測によって保全措置をとらなくとも繁殖活動は維持されるとの結論に導いていること。
 
 さらに、八ッ場ダム予定地において、イヌワシはこの数年繁殖活動が行われておらず、明らかに危機的な状況にあるホットスポットとして保護対策が必要である、
 クマタカは繁殖活動が維持されていることが確認されているものの、一般的に猛禽類は土地執着性が強く、工事が行われても、いわば我慢してその場に留まることがあり、ストレスを抱えたままの生息状況が続くならば、将来の繁殖活動に影響が現れてくることが懸念されるとしました。

★分析が行われた情報開示資料についての情報は、こちらのページに掲載しています。
 http://yamba-net.org/problem/wazawai/hakai/seisoku/

 関連記事を転載します。

◆2014年6月2日 毎日新聞群馬版
 http://mainichi.jp/area/gunma/news/20140602ddlk10010069000c.html
ー八ッ場ダム建設:生息脅かされるイヌワシ、クマタカ 国の対策「信用できず」 環境調査報告書で学習会ー

長野原町の八ッ場ダム建設で猛きん類のイヌワシやクマタカの生息が脅かされている可能性があるとして、ダム建設に反対する市民団体「八ッ場あしたの会」が1日、前橋市内で学習会を開いた。

 学習会には約40人が参加。自然保護団体のNPO法人「ラムサール・ネットワーク日本」共同代表の花輪伸一さん(64)が、あしたの会が情報公開請求で入手した国の環境調査報告書をもとに、クマタカへの影響を分析した。

 環境省などによると、イヌワシの国内推定生息数は約400〜650羽、クマタカは約2000羽でいずれも国の絶滅危惧種に指定されている。県内では八ッ場ダム建設予定地周辺を含む北部の森林地帯で生息が確認されている。

 報告書によると、建設予定地周辺にはクマタカが最大で7つがい生息。このうち5つがいの繁殖テリトリー内で工事が実施される。騒音などの影響で工事期間中に繁殖成功率が低下する可能性があると指摘する一方、騒音や振動の抑制、工事期間の配慮などで「負荷を最小限にとどめることができる」としている。また、クマタカが主に利用する「コアエリア」について、4つがいのエリアが工事によって一部改変されると予測。しかし、改変後も狩り場や営巣に適した場所は広く残るため、繁殖活動は維持されると結論づけている。

 花輪さんは、「報告書は肝心な部分が黒塗りされ、第三者が結果の妥当性を評価することが不可能だ」と批判し「(報告書に記された)環境保全対策は抽象的で信用できない」と述べた。また工事によるコアエリアの改変について「狩り場や餌が減少することは確実。猛きん類は土地執着性が強く環境が悪化してもストレスを抱えたままその場にとどまり、将来の繁殖に影響する可能性もある」と指摘した。

 八ッ場ダムを巡っては国が2019年度までの完成を目指し、今年8月に本体工事の入札を実施し、10月の本体着工を予定している。一方、ダム建設に反対する県内の住民が県の事業費支出差し止めを求めた訴訟は、東京高裁が5月14日、差し止めを認めない1審判決を支持し原告側の控訴を棄却、原告側は最高裁に上告した。【塩田彩】

◆2014年6月2日 東京新聞群馬版
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20140602/CK2014060202000160.html

ー「八ッ場」周辺のイヌワシ、クマタカ 繁殖・巣立ちの減少 原因きちんと解明をー

八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の建設予定地周辺で、絶滅のおそれがあるイヌワシ(天然記念物)やクマタカが生息している現状を考える学習会が1日、前橋市の県庁昭和庁舎で開かれた。 (伊藤弘喜)

 市民団体「八ッ場あしたの会」の主催。自然保護組織「NPO法人ラムサールネットワーク日本」の花輪伸一共同代表が講師を務め、四十人が参加した。

 花輪さんは、あしたの会の情報公開請求を受けて国土交通省が開示した猛禽(もうきん)類の調査報告書(二〇一二年)の問題点を追及。ダム予定地周辺でみられるイヌワシやクマタカに関して、「繁殖や巣立ちが近年うまくいっていない原因を調べていない。黒塗りが多く、正しい調査がなされたかもわからない」と苦言を呈した。

 イヌワシは一九九四年以降、巣立ちが二シーズンのみしか確認されていないことを挙げ、「原因をきちんと解明して、保護対策を実行しないと」と花輪さん。
 クマタカも二〇〇九年以降、巣立ち率が大幅に減少していると指摘し、「報告書は意識的に問題点を隠している」と批判した。

 土地に執着する猛禽類の習性に触れ、「工事が行われてもストレスを抱えながら残り、将来の繁殖に影響が表れる可能性がある」とも話した。

◆2014年6月2日 上毛新聞
ー猛禽類調査報告書 八ッ場ダム反対市民団体学習会

 長野原町の八ッ場ダム建設に反対する市民グループ「八ッ場あしたの会」は1日、県庁昭和庁舎で「八ッ場ダム予定地の自然破壊 ~イヌワシ・クマタカを中心に」をテーマに学習会を開いた。
 NPO法人ラムサールネットワーク日本共同代表の花輪伸一さんが「猛禽類調査報告書の問題点」をテーマに、ダム水源地環境整備センターなどが実施した調査概要と結果を説明した。
 一部に墨が塗られた公開資料を示し、「第三者による妥当性の評価を不可能にしている」と指摘。「環境アセスメント(環境影響評価)は科学性と民主性が大切。第三者が見てもよくわからないのでは情報公開としてどうか」と問題提起した。
 このほか、同会事務局の渡辺洋子さんと運営委員の嶋津暉之さんが発表し、写真展も同時開催した。