20日の夕方、NHK前橋市局からのニュースとして、八ッ場ダム本体工事を来年1月に着工することが報道されました。

 以下の写真は、国の名勝・吾妻渓谷にある八ッ場ダム本体工事予定地です。予定地直下に聳える小蓬莱の頂上(見晴らし台)より11月18日に撮影しました。正面の吾妻川の河床が本体準備工事によって干し上げられ、茶色い地面が上流に向かって伸びています。河床に並行して走っている右側の灰色のラインは、18日に廃道になった国道145号線です。

本体予定地(森さん)shuku

 安倍政権による突然の国会解散で総選挙のニュース一色の中、国交省関東地方整備局はどさくさに紛れて、八ッ場ダムの本体着手の時期を発表しました。満身創痍の八ッ場ダム事業が遅れていることは注目されたくないものの、12月14日に行われれる総選挙の結果がどうなろうと、本体工事に着手するとの国交省関東地方整備局の意思表示かもしれません。

 八ッ場ダムの本体工事は昨年来、今年10月着工と群馬県内でたびたび報道されてきましたが、本体工事が行われる予定の名勝・吾妻渓谷で進められてきた本体準備工事が遅れており、現在も本体着工に至っていません。

 今月17日には、本体着工の時期が遅れていることを朝日新聞が全国版で報じています。今日の発表は、工事の遅れを打ち消す目的で、前倒しで行われたのでしょうか。
 21日の読売新聞群馬版によれば、国交省八ッ場ダム工事事務所では工事が約10カ月遅れていると説明しています。本体準備工事は梅雨の増水の他、契約から工事開始までに時間がかかりました。アベノミクスの下、他の公共事業同様、資材や人員確保が難しいのかもしれません。

 いずれにしても、今年度の予算に八ッ場ダムの本体工事費が含まれていますので、今年度中には本体工事に着手しなければなりませんでした。
 ダム湖予定地周辺の有害な鉄鋼スラグの調査は、まだ結果も対策も明らかにされていません。地すべり調査は行われましたが、ダム湛水前にどのような対策をとり、どれほど費用がかかるかも明らかにされていません。矛盾をすべて先送りしたまま、本体工事に着手すれば、そのツケはすべて次の世代が背負わなければならなくなります。

 現計画では八ッ場ダムの完成は2019年度末の予定です。完成が早まるような書き方をしている記事もありますが、実際はどうなるのか、まだわかりません。受注した清水建設などの共同企業体が514日間(約17か月)の工期短縮を提案していますが、すでに約10か月の遅れが出ているということですから、提案どおりでも7カ月短縮にしかなりません。

◆2014年11月20日17時35分 NHK前橋支局
http://www3.nhk.or.jp/lnews/maebashi/1063270551.html
ー八ッ場ダム本体工事来年1月にー

 長野原町に建設が進められている八ッ場ダムについて、国土交通省は20日現地説明会を開き、ダム本体の工事を来年1月から始めることを明らかにしました。

長野原町に建設が進められている八ッ場ダムは、昭和24年に計画が始まりました。
5年前の民主党への政権交代にともなって一時、建設が中止されましたが、去年5月、方針が転換され、工事が再開されています。
20日は八ッ場ダムで報道関係者などを対象に国土交通省が説明会を開き、はじめに川の流れをせき止めて出来たダムの底になる場所を公開しました。
このあと現地でダム建設に向けた工程表を説明し、これまで時期が示されていなかった本体工事の開始を来年1月から始めることを明らかにしました。
工事は、ダム本体の側面にコンクリートを設置するため岩盤を削るもので、再来年5月まで行う計画です。
その後、平成30年5月までにダム全体にコンクリートを敷設したあと、試験的に水をためるなどします。
八ッ場ダムの工期は、平成31年度としてますが、国土交通省では、早期の完成を目指して工事を進めたいとしています。
国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所では、「ダムを完成させて治水や発電などに役立てられるようできるだけ早く工事を進めたい」としています。

—転載終わり—

上記の記事によれば、八ッ場ダム工事事務所は、ダム完成の目的を「治水や発電」と説明していますが、八ッ場ダムの主目的は「治水(利根川の洪水調節)」と「利水(都市用水の供給)です。
 長い八ッ場ダム計画の歴史の過程で、「発電」が目的に加わったのは2008年のことです。八ッ場ダムの「発電」目的は、水力発電を主目的とした戦後間もなくのダムとは異なり、「従属発電」と呼ばれるものです。
 八ッ場ダム事業が抱える様々な矛盾について、こちらに解説を載せています。ご参照ください。
 http://yamba-net.org/problem/

 21日に各紙に掲載された記事を転載します。

◆2014年11月21日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/local/gunma/news/20141120-OYTNT50479.html
ー八ッ場 1月に基礎掘削 国交省説明会 「工期10か月遅れ」ー

 八ッ場ダム(長野原町)の報道機関向け説明会が20日、現地で行われた。国土交通省八ッ場ダム工事事務所は、ダム本体工事の基礎掘削を来年1月に始めるとの見通しを示した。

 同事務所によると、現在、ダム本体の関連工事として、現地測量と電線などの支障物の撤去作業が行われている。今月中に、吾妻川の水がダム本体の工事現場に入らないように防ぐ工事を終え、12月上旬からダム周辺の樹木の伐採を始める予定。

 基礎掘削の後、2016年6月からダム本体のコンクリート打設に取りかかり、18年5月に終了する。同9月には水門設備の工事を終え、試験的に水を入れた後、19年度中の完成を目指す。

 本体工事では、清水建設(東京都)など共同企業体が今年8月、514日間(約17か月)の工期短縮を提案して契約したが、同事務所の土屋秀樹副所長は「例年より雨が多いなどの影響で、約10か月の遅れが出ている」と話している。

◆2014年11月21日 朝日新聞群馬版
 http://www.asahi.com/articles/CMTW1411211000001.html
ー八ツ場ダム建設工程、基礎掘削は1月からー

 国土交通省関東地方整備局は20日、八ツ場ダムの建設完了までの工程を明らかにした。本体建設の本格的な工事となる基礎掘削を来年1月に始め、2018年9月までに完成予定で、その後、試験的に水をためる作業に入るとしている。

 基礎掘削はダム本体の基礎となる両岸の岩盤を掘る工事で、公表した工程では16年5月に完了する。同6月からコンクリートを流し込み、約2年かけて本体を造る。18年9月までに水門設備を取り付けて完成し、その後、ダム湖に水をためる試験湛(たん)水を始める。

 現在は、当初7月末に完了予定だった川の流れをせき止める仮締め切りの工事中。今月末までに終わるというが、この延長で基礎掘削の開始は想定より約2カ月遅れる。

 だが、より大きな掘削用重機を使い、当初はコンクリートが凍るため打ち込みしない予定だった12~3月にも凍らない工夫をすることで、基本計画通りの19年度中の完成予定に影響はないとしている。

 本体建設に先立ち、すでに今月から旧JR吾妻線のレールや電線などの撤去に取りかかっていて、来月からは樹木の伐採に入る。

 八ツ場ダム工事事務所は10月1日時点の関連事業の進捗(しん・ちょく)状況も公表した。道路は22・8キロのうち96%の付け替えが終わり、用地は456ヘクタールのうち93%を取得した。移転対象のうち97%の456世帯の移転が完了した。

 一方、水没する川原湯、川原畑、林、横壁、長野原の5地区の代替地には84世帯が移転を済ませた。

 この日、本体予定地も報道陣に公開した。現在は川の流れをせき止める小さなダムの建設が進み、川底から29メートルの高さまでできあがっていた。土を盛り、重機で踏み固める作業が続いていて、今月中には終える予定だという。(池畑聡史)

 ■八ツ場ダム本体建設の工程と工事期間

工程             工事期間

基礎掘削      2015年1月~16年5月

コンクリート打設    16年6月~18年5月

水門設備の据え付け   18年9月まで

試験湛水        18年9月以降

◆2014年11月21日 毎日新聞群馬版
 http://mainichi.jp/area/gunma/news/20141121ddlk10010152000c.html
ー八ッ場ダム建設:本体着工、来年1月に 国交省が説明会 /群馬ー

 国土交通省は20日、長野原町の八ッ場ダム建設地で報道機関向けの説明会を開き、本体工事着工が来年1月にずれ込むことを明らかにした。

 建設地では、水没する旧JR吾妻線のレールや電線の撤去工事が進んでいる。工事のために吾妻川をせき止める高さ29メートル、幅65メートルの堤防や、川の水を迂回(うかい)させる工事は11月中に終える見込みで、12月上旬から伐採作業に入る予定。

 国交省八ッ場ダム工事事務所によると、着工がずれ込むのは秋の大雨の影響もあって作業が遅れているため。本体工事を受注したJV(共同企業体)が514日の工期短縮を提案しており、最終的にダム本体は約5カ月早く2018年5月に完成する見込み。
 水門設備の工事終了は18年9月を予定している。

 国交省は本体工事の着工時期を「14年秋」と計画していた。気温が低いとコンクリートの強度や耐久性が低下するため、12月中旬から3カ月間は工事を中断する予定だったが、コンクリートを温めて冬季も作業を進める。
 担当者は「なるべく早く完成できるように努力したい」と話した。【山本有紀】

◆2014年11月21日 産経新聞群馬版
 http://www.sankei.com/region/print/141121/rgn1411210017-c.html
ー八ツ場ダム来年1月から掘削工事 国交省事務所、現場を公開 群馬ー

 国土交通省八ツ場ダム工事事務所(長野原町)は20日、ダム工事の進捗(しんちょく)状況を報道陣に公開した。同事務所は今後のスケジュールも示し、来年1月にダムを作るための掘削工事を行うことや、平成28年6月ごろからコンクリートを流し込む工事にとりかかることなどを明らかにした。

 川の水を迂回(うかい)させるための仮排水トンネルの工事はすでに終了しており、現在はダム本体建設予定地の上流で、川の水をせき止める「仮締切工事」を進めている。11月末までに完成させる予定だ。

 この日報道陣に公開されたせき止め部分の工事現場では、クローラーダンプやブルドーザーが休みなく動いていた。本体工事は31年度までが工期とされているが、同事務所の土屋秀樹副所長は「工法などを工夫して、できるだけ工期を短縮できれば」と話していた。

◆2014年11月21日 上毛新聞 (ネット記事は紙面記事の冒頭のみ)
http://www.jomo-news.co.jp/ns/3314164982018190/news.html
ー八ツ場堤体18年5月完成 基本計画前倒しの公算ー

 国土交通省八ツ場ダム工事事務所は20日、八ツ場ダム(群馬県長野原町)の本体工事の工程を明らかにした。2015年1月に掘削作業、16年6月にコンクリート打設工事を始め、18年5月に高さ116メートルのダム堤体を完成させる。堤体の完成時期が明示されたのは初めて。工事を請け負う共同企業体(JV)が提案した工期短縮案を反映した工程で、予定通り堤体が完成すれば、基本計画で20年3月を期限とするダムの完成が前倒しされる可能性が高い。

 清水建設などのJVは10月16日、ダム建設地で初の作業となる測量を始め、本体工事が事実上始まった。
 同事務所によると、今月から廃線となったJR吾妻線の撤去作業が始まり、12月上旬に樹木の伐採に入る。吾妻川の流れを一時的に変える「仮締め切り工事」は今月中に完了する。

 15年1月には、土砂を取り除き岩盤を露出させるための基礎掘削を始め、本体工事が本格化する。これを16年5月までに完了させ、翌6月からコンクリート工事に入る計画だ。

 JVは、掘削から堤体完成までの標準的な施工日数として国が示した1498日を、514日短縮できると提案。標準日数は品質面などを考慮し冬期(12月~3月)はコンクリート工事を行わないことで算出しているが、JVは独自のノウハウにより冬期も工事を続けることなどで大幅な短縮を実現させるという。

 18年5月にコンクリート工事を終え、同9月までに水門など設備の取り付けを完了させる。その後、ダムに水をためる「試験湛水」などを実施する。

 試験湛水の期間は明らかにしていないが、吾妻川の流域面積が広く、流量が豊かで水をためるのに適しているという。工期を短縮し試験湛水が順調に進めば、20年3月を期限とする基本計画の「19年度完成」は前倒しされる可能性が高い。

 同事務所の担当者は20日、建設地で開いた報道機関向け説明会で、「少なくとも基本計画は守り、その上でできる限り早い完成を目指したい」と強調した。
 10月1日時点の事業の進捗状況も公表した。用地取得(456ヘクタール)は93%、家屋移転(470世帯)は97%が完了し、代替地には84世帯が移転した。付け替えの鉄道(10.4キロ)は100%、国道や県道(22.8キロ)は96%が整備された。

 長野原町の萩原睦男町長は「早期の完成に越したことはない。国や県と協力し、感性を見据えた地域づくりに力を入れたい」と話した。

—転載終わり—

 国土交通省関東地方整備局による現地説明会を受け、各紙が来年1月、八ッ場ダム本体着工と報じる中、先月本体着工と報じた上毛新聞は、今朝の紙面でも、1月本体着工とは書いていません。
 昨秋以来、たびたび今年10月本体着工と大見出しで報じてきましたので、辻褄が合わないことは確かですが、国交省の発表を捻じ曲げてまで事実を伝えない報道姿勢には、首をかしげざるを得ません。工事の遅れを極力伏せたい群馬県の意向を汲んでいるからなのかもしれませんが、これまで八ッ場ダム事業で語られてきた希望的観測はことごとく裏切られています。
 
 国交省関東地方整備局が本体工事を急ぐのは、試験湛水の期間を十分取る必要があるためと考えられます。上記の上毛新聞の記事の書き方では、試験湛水は水が貯められるかどうかを試験するように受け取れますが、試験湛水で主に試されるのは、ダム湖予定地周辺の地すべり対策や代替地やダム本体の安全性です。これらの対策が具体的に何も明らかにされていない現状では、「試験湛水が順調に進む」という希望的観測のみを前提としていたのでは、将来は予測できないはずです。