さる5月17日、八ッ場ダム本体関連工事の入札公告が行われました。「本体関連工事」と言っても、実際には本体工事の一部です。国交省が「本体関連工事」とした背景について報じた記事を転載します。

◆2013年5月27日 日本経済新聞 地域総合面

-列島追跡 八ッ場ダム、関連工事開始へ 本体着工になお課題ー

国土交通省が八ッ場ダム(群馬県長野原町)の本体関連工事の契約手続きを始めた。巨大公共工事の象徴として民主党政権が中止の方針を打ち出してから3年8カ月。地元は歓迎しているものの、本体着工にはまだ課題が残っている。
「ようやく先が見えてきた」。長野原町の高山欣也町長は感慨深げに話す。国交省は17日、ダムに使うコンクリートを作る作業用地の造成など3工事の入札を公告した。いずれもダム本体の建設に必要な工事で、今夏に着工する。

この裏には国交省の周到な準備があった。公共事業では早期に着工するため予算成立前に入札手続きを始める例もあるが、今回は「国会軽視」との批判が出ないようこれを控え、予算成立予定の15日に照準を合わせた。大型連休中も作業を進め、民主党政権時に本体着工の条件とされた河川整備計画を同日に策定。関連工事の手続き開始を翌16日に発表した。

八ッ場ダムの工事は大きく「本体」と「生活再建」に分かれる。生活再建は付け替え道路など周辺住民の生活を補償するための事業で、これまでも継続していた。しかし、本体は政権交代後も着工していない。

では、「本体関連」とは何なのか。国交省の内部からも「厳密には何を示すのかわからない」との声が出る。八ッ場ダムは民主党政権になる前に1度、入札手続きを始めたが、この時は今回、公告した作業用地の造成を本体工事の一環として扱っている。

「関連工事」という言い方は、民主党政権時に反対派に配慮した「方便」ともいえる。自民党政権になってもこの言い回しを踏襲。参院選をにらみ、政府与党は巨大公共事業への批判に配慮する形で、今年度の予算では本体工事を見送り、関連だけを計上した。

関連工事の手続き開始により、本体着工に向け大きく一歩を踏み出したといえるが、問題は残る。八ッ場ダムの目的や事業費などを定めた基本計画では、完成時期を2015年度としている。工期は7年必要との試算もあり、関係者からも「とても無理」との声が漏れる。群馬県の大沢正明知事は「基本計画変更のテう続きに着手すべきだ」とのコメントを出している。

計画の見直しにこだわるには訳がある。背景には大型公共工事に特有の予算の計上方法がある。完成まで何年もかかる大型事業の場合、次年度以降にいくら予算を計上するかを明示する。これを「債務負担行為」と呼ぶ。「15年度完成の計画のままでは、財務省は長期の債務負担を認めないのでは」と同県の担当者。基本計画はこれまでも見直されており、前回は改訂に9カ月を要した。同じ程度かかるのなら14年度の予算編成に間に合わない。

批判にも配慮し慎重に進めてきた政府自民党。参院選後に本体着工に向けたウルトラCが出るのか。それとも地元はまだ振り回されるのか。(前橋支局長 鈴木禎央)

◆2013年5月21日 日本経済新聞BPニュースセレクト
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2102B_R20C13A5000000/

-八ツ場ダムが本体着工へ 「中止表明」以降、初の工事公告ー

群馬県長野原市に建設される八ツ場(やんば)ダムの本体工事に用いる作業ヤードの造成など3件の工事の入札が公告された。ダム本体の関連工事の契約手続きを始めるのは、2009年に当時の前原誠司国交相が事業中止の方針を表明して以来、初めて。公告は、国土交通省関東地方整備局が2013年5月17日に行った。

公告したのは、(1)「八ツ場ダム本体左岸上部掘削工事」と(2)「骨材プラントヤード造成工事」、(3)「盛土造成地線改良工事」の3件。(1)は本体の工事に必要な作業ヤードをダムの左岸に造成する工事で、(2)は堤体(ていたい)のコンクリートに使用する骨材の製造プラントを設置するヤードの造成。(3)の工事で、コンクリートのプラントまで骨材を運ぶ道路の一部を整備する。

工期は、(1)の工事が2014年9月30日まで、(2)と(3)が14年3月31日まで。工事費は、それぞれ2億円から3億円未満になる見込みだ。

入札への参加申し込みは、いずれも2013年5月31日まで。同7月31日に開札する。価格に加えて簡易な施工計画の提案を求める総合評価落札方式で落札者を決定する。

入札への参加資格は、本店や支店、営業所のいずれかが群馬県内にある建設会社で、関東地方整備局の格付けでC等級の建設会社であること。(1)の工事については、B等級の建設会社の参加も可能となっている。

関東地方整備局は2013年度予算に、八ツ場ダム建設事業として87億5200万円を計上。2013年5月15日に予算が成立したのを受けて3件の工事を公告した。計上した八ツ場ダムの建設事業費のうち、関連工事の費用として盛り込んだのは約18億円。

公告した3件の工事のほか、2013年度は吾妻川を仮締め切りして仮排水トンネルに転流する工事などを発注する。「残る約70億円の事業費は付け替え道路の整備や用地補償など、主に地元の生活再建に向けて確保した」(同整備局)。

(フリーライター 山崎一邦)