さる7月4日、国交省関東地方整備局は利根川水系の19河川について、想定最大(千年に一度を超える)規模の降雨による洪水浸水想定区域を公表しました。

 〇国交省関東地方整備局の公式サイトより 記者発表資料 平成29年7月4日
 http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000332.html
 利根川水系の19河川(国管理河川)について、想定最大規模降雨による洪水浸水想定区域を公表します。

国交省関東地方整備局サイトより 利根川水系利根川洪水浸水想定区域図(想定最大規模)
キャプチャ

 利根川水系では、首都圏を守るという名目で、上流に大規模なダムが次々と建設されてきました。関東地方整備局によれば、建設中の八ッ場ダムは、利根川流域に200年に一度の規模の大雨が降った時に洪水を軽減するための施設です。しかし、2015年9月の利根川支流の鬼怒川水害で明らかになったように、堤防が未整備な箇所があり、数十年に一度の規模の大雨でも内水氾濫による水害が発生しています。

 「千年に1度」の大雨を想定した、今回の浸水域の公表は、水防法の改正によるものです。これまでの経過は以下の通りです。

 国交省は平成27年、「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」を次のように公表しました。
 「温暖化の進行により危惧されているような 極端な雨の降り方が現実に起きており、明らかに雨の降り方が変化している」、「いつ大規模噴火が起こってもおかしくない」という状況を、「新たなステージ」と捉え、「危機感をもって防災・減災対策に取り組んでいく必要がある。」としたのです。

 〇国交省サイト「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」 平成27年1月20日
 http://www.mlit.go.jp/saigai/newstage.html

 この方針に基づいて、上記公表の一か月後、「水防法等の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。

 〇国交省サイト 報道発表資料「水防法等の一部を改正する法律案について」 平成27年2月20日
 http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo03_hh_000868.html

 この中で、「想定し得る最大規模の洪水・内水・高潮への対策 」として、「現行の洪水に係る浸水想定区域について、想定し得る最大規模の降雨を前提とした区域に拡充するとともに、新たに、いわゆる内水及び高潮に係る浸水想定区域制度を設ける」こととしました。
 こうして平成27年7月19日、「水防法等の一部を改正する法律」一部施行され、想定し得る最大規模の洪水、内水、高潮への対応が始まりました。

 〇国交省サイト 報道発表資料「最大規模の洪水、内水、高潮への対応を開始」 平成27年7月19日
 http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo04_hh_000006.html

 〇国交省サイト 「水防法」
 http://www.mlit.go.jp/river/suibou/suibouhou.html
 「水防法等の一部を改正する法律」が施行されました
 「水防法等の一部を改正する法律」が、平成27年5月20日に公布、7月19日に一部施行、11月19日に完全施行されました。

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 しかし、「千年に一度」の大雨が降ると、ここまで水に浸かるといわれても、住民は対応のしようがありません。
 
 実際の河川ははるかに低い治水安全度を目標にして治水対策が進められています。
 利根川・江戸川本川の河川整備計画は、1/70~1/80、つまり70~80年に一度の規模の洪水に対応することを目標としています。現状は1/30~1/40です。
 利根川の代表的な支流である渡良瀬川の直轄区間は、1/30~1/40を目標とした河川整備計画が策定されようとしています。
 利根川支川の河川整備計画の目標は、群馬県管理区間では1/10程度です。埼玉県の下水道普及地域の雨水排水計画は、1/5程度のところが多いようです。

 このように見てくると、今回の浸水域の公表は現実の治水計画とかけ離れた大雨を想定しており、現実性がないことがわかります。仮に未曾有の豪雨があって浸水被害があった場合に、あらかじめ警告しておいたことだと、行政の責任回避のために、公表されたようにも思われます。
 むしろ、行政が取り組むべきことは、仮に想定外の雨が降った場合にも、壊滅的な被害を受けないように、最大限の防止策を講じていくことです。その一つとして、越水があっても破堤しにくい耐越水堤防の整備を進めることが必要ですが、国交省は拒絶反応を示しています。

◆2017年7月5日 朝日新聞群馬版
http://www.asahi.com/articles/ASK745TNWK74UHNB00F.html
ー利根川や渡良瀬川などで洪水浸水区域を発表ー

 国土交通省は4日、国が管理する利根川水系の19河川について、最大規模の降雨があった場合の洪水浸水想定区域を公表した。東毛地区が中心で、桐生市内や板倉町内では浸水の深さが最大で10メートル以上に及ぶ恐れがあるという。

 それぞれの河川について国交省が想定しうる最大の雨量があり、多数の箇所で堤防が決壊したと想定した。

 利根川では、国が管理する伊勢崎市と玉村町より下流が公表された。72時間で491ミリの雨が降るとの想定で、県内は太田市や館林市など3市6町で浸水する見込み。深さは、板倉町飯野地区で10・2メートル、東武日光線板倉東洋大前駅周辺で6・6メートル、板倉町役場で4・5メートル、明和町役場で4・2メートルに及ぶ恐れがある。

 また、浸水の深さが50センチ以上の状態が続く浸水継続時間は、板倉町ではほとんどの地点で、4週間にわたる可能性がある。利根川と渡良瀬川に挟まれており、水が引くのに時間がかかるためだという。

 渡良瀬川は、みどり市から下流で利根川に合流するまでが対象。72時間で812ミリの雨が降るとの想定で、桐生市など4市5町で浸水する。桐生市相生町で11・4メートル、東武日光線板倉東洋大前駅付近で5・5メートル、桐生市役所で2・1メートル、となっている。

 区域図は国交省の各河川事務所やホームページで見ることができ、家屋が倒壊する氾濫(はんらん)区域なども記されている。また、利根川の上流部分については、7月下旬に管理する県から公表予定という。

◆2017年7月5日 上毛新聞
ー利根川水系19河川 最大の浸水域公表 国交省「千年に1度」想定ー

 国管理の利根川水系19河川について、国土交通省関東地方整備局は4日、想定される最大規模の降雨を前提に、新たな洪水浸水想定区域を公表した。従来は「10~100年に1度」としていた洪水の前提を「千年に1度を超える」規模に引き上げて算出。本県を含む浸水範囲は利根川が約1700平方㌔から1800平方㌔に広がり、渡良瀬川は約420平方㌔とした。

 利根川の浸水想定区域約1800平方㌔は本県など1都5県の74市区町に及び、伊勢崎、太田、館林、玉村、板倉、明和、千代田、大泉、邑楽の9市町が含まれる。

 利根川の降雨の前提は、八斗島(伊勢崎市)より上流域での72時間総雨量491㍉。最大規模の洪水があった場合の最大浸水深は、茨城県古河市前林付近で12・8㍍に達するとした。板倉町役場は従来の4.3㍍から4.5㍍に、明和町役場は3.3㍍から4.2㍍に上昇する。

 渡良瀬川は桐生、太田、館林、みどり、板倉、明和、千代田、大泉、邑楽の9市町など4県18市町が浸水想定区域となる。浸水深は桐生市役所周辺で2.1㍍、東武日光線板倉東洋大前駅(板倉町)周辺で5.5㍍になるとしている。

 各自治体は今後、公表された想定区域を基に「洪水ハザードマップ」を改定。浸水範囲の拡大に伴い、多くの自治体で避難場所や避難経路の再考が必要となる見通しだ。桐生市は「適切な避難所の検討を進めたい」としている。

 利根川、渡良瀬川以外に公表された17歌仙で想定区域に県内が関係するのは広瀬川、小山川、早川、桐生川、旗川、秋山川、矢場川、多々良川。2015年の水防法改正を受けた見直しで、近年多発するゲリラ豪雨などに対応することを目的とする。県は6月、県管理の18河川についての浸水想定区域を公表。利根川の県管理区間の新たな想定区域を近く公表する方針。

◆2017年7月10日 東京新聞群馬版
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201707/CK2017071002000162.html
ー国交省が洪水浸水想定区域図を公表 利根川下流・渡良瀬川など対象ー

 国土交通省関東地方整備局と各河川事務所は、県内で管理する伊勢崎市と玉村町より下流の利根川、渡良瀬川など洪水の恐れがある河川を対象に、想定最大規模など新たな洪水浸水想定区域図をホームページなどで公表した。

 同区域図は河川が氾濫した場合の浸水が想定される区域や水深などを示す図。国交省は従来、十~百年に一回程度の洪水を想定していたが、各地で集中豪雨が相次ぐため、千年に一回を超える「想定最大規模」などの区域図を作成した。

 想定最大規模として利根川沿いは伊勢崎、太田、館林市と玉村、板倉、明和、千代田、大泉、邑楽町に浸水し、最大の水深は板倉町飯野の一部で約一〇・二メートルと予測。他の地点の水深は板倉町役場で約四・五メートル、明和町役場で約四・二メートル、東武日光線板倉東洋大前駅で約六・六メートルと見込んだ。

 渡良瀬川沿いでは、桐生、太田、館林、みどり市と板倉、明和、千代田、大泉、邑楽町に浸水し、最大の水深は桐生市相生町の一部で約一一・四メートルと推測。水深は同市役所で約二・一メートル、板倉東洋大前駅で約五・五メートルとみている。
 県内ではこの他、広瀬川(伊勢崎、太田市)、早川(同)、桐生川(桐生市)、矢場川(館林市と板倉、邑楽町)、多々良川(同)なども公表した。

 各河川では、想定最大規模の他に、浸水継続時間、家屋倒壊等氾濫想定区域などの区域図も公表した。
 利根川の上流については、県が近く公表する予定。 (菅原洋)