さる8月12日に国(国交省関東地方整備局)が公表した八ッ場ダムの5度目の計画変更案(事業費の再増額)について、八ッ場ダムの負担金を支出する利根川流域1都5県の議員からなる「八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会」(会長:角倉邦良群馬県議、事務局長:入江晶子千葉県議)は公開質問書を作成しました。
 同会より、質問書への千葉県の回答をご提供いただきましたので、公表させていただきます。

以下の青い文字列をクリックすると、公開質問書と回答の全文を掲載したデータをダウンロードできます。
 ➡八ッ場ダムについての議員の会の質問と回答

 回答の中で注目されるのは、八ッ場ダム本体の基礎岩盤の掘削量が約60万立方メートルから約84万立方メートルへと、約4割も増えることです。これは基礎岩盤の掘削で想定外の脆弱な地層に遭遇したことによるものです。

 この回答は千葉県から出されたものですが、1都5県はこの計画変更案について合同で国と交渉を行い、再増額に同意するという意思統一を行っていますので、開会中の議会では議員の質問に対して同様の答弁を行っていると考えられます。

 回答は全体として、国の説明を伝える内容が中心となっており、これまで公表された国交省関東地方整備局の資料以外の情報は僅かです。1都5県は事業費の6割を負担しながら、事業費の再増額を求められた今回の計画変更でも表面的な手続きに終始し、事業の内容に立ち入らない姿勢を貫いています。また、回答の中には、質問に答えていなかったり、数字が不正確である箇所が多くみられます。

 以下、「議員の会」の質問と千葉県の回答に当会のコメントを添えて掲載します。

前文
キャプチャ

1. 計画変更について

 以下の回答文によれば、国は2013年の前回の計画変更(第四回)の際、「総事業費は変更しない」と説明したということですが、今回提示された4600億円から5320億円への増額との整合性のなさについては説明していません。
 回答にある「八ッ場ダム事業に係る調査報告書」によれば、今回の事業費増額案が1都5県に初めて提示されたのは、本年4月28日です。国と1都5県は最初から事業推進で一致しており、そのためには増額やむなしという結論ありきで交渉を進め、議会対策として「調査報告書」を作成しました。
 「調査報告書」を読むと、関係都県は国の説明を聞くのみで、「調査」をしたというアリバイ作りに終わっていることがわかります。

 「八ッ場ダム事業に係る調査報告書」のデータと解説は、こちらに掲載しています。
 ➡http://yamba-net.org/?p=17784
キャプチャ 質問1キャプチャ質問1回答キャプチャ質問①つづきキャプチャ1-4~キャプチャ答え

2. 地すべり等安全対策による増額について

 八ッ場ダム事業では、ダム湖予定地が多くの住宅に囲まれるという難しい条件下にあり、これからダム湛水に向けて、地すべり等の安全対策が最も重要な課題となります。関東地方整備局はこれまで地すべり対策費をわずか6億円弱と見積もっていましたが、今回の計画変更で約96億円の増額となります。
 この問題についての以下の回答は、国の説明、そして、その説明について「国が適切に対応しているものと考えている」という県の見解を繰り返すことで終わっています。
 国交省内部の専門家の意見を聴いた結果という国の説明は、客観性が担保されたとは到底言えませんが、1都5県が国に丸投げであることがよくわかる回答です。

 
キャプチャ質問2キャプチャ質問②回答キャプチャ質問2-2キャプチャ質問2-3キャプチャ質問2-4キャプチャ2-5キャプチャ2-5答えキャプチャ2-6

3. 本体関係の増額について

 質問では、本体関係工事費を尋ねていますが、なぜか回答ではダム費の金額を答えています。ダム費にはダム湖周辺の地すべり対策費や護岸工事費が含まれます。

キャプチャ質問3

 本体関係工事費の項目ごとの増加金額についての質問について、ダム費と本体関係以外の工事費の表を示しており、質問にまともに答えていません。

キャプチャ3-2キャプチャ3-2表キャプチャ3-3キャプチャ3-4キャプチャ3-5

 以下の回答では、今回の計画変更案でダム本体の基礎岩盤の掘削量が約70万立方メートルから約84万立方メートルになったとしていますが、本体工事の入札公告時の設計値は約60万立方メートルで、約70万立方メートルではありません。

キャプチャ3-6

 以下の回答では、国が「基礎掘削工事が概ね9割が完了」と説明しているとしていますが、基礎掘削工事の9割の進捗率は、掘削量が現計画の約60万立方メートルの場合の数字です。掘削量が約84万立方メートルに増加する計画変更により、進捗率は当然ながら大幅に下がります。
 4割も掘削量が増えるのですから、それに伴って本体工事の工期が伸びるのが普通です。国は本体工事の工期もダム事業の工期も伸びないと説明しているそうですが、こんないい加減な説明を鵜呑みにする人はいないでしょう。

キャプチャ3-7キャプチャ3-8

4. 減電補償について

 以下の回答によれば、八ッ場ダム事業における今後の重要な増額要因である東京電力への減電補償について、国は1都5県に何の説明もせず、都県の方でも追及する気がないようです。

キャプチャ減電

5. 代替地の造成費用と安全対策について

 八ッ場ダム事業では、ダム湖予定地の周辺に水没五地区の各地区ごとに、大規模な人工造成の代替地をつくってきました。しかし、代替地の造成費用はダム事業費には含まれません。
 以下の回答によれば、国は「分譲収入を考慮する」としていますが、代替地の造成費用は分譲収入を大幅に上回ることは確実です。八ッ場ダム事業の更なる増額要因として、ダム建設完了後の代替地の造成費用の上乗せは必至と考えられます。

キャプチャ代替地
2キャプチャ代替地

6. 八ッ場ダム事業の目的の一つ、「吾妻川の流量維持」について

 東京電力松谷発電所の水利権更新時期は2012年度でした。すでに4年たっているにも関わらず、国交省関東地方整備局が手続きを進めないのは、水利権の更新により、八ッ場ダム事業の計画変更を必要とすることになるからです。しかし、1都5県はこうした問題に立ち入ろうとしないことが回答からわかります。

吾妻川の流量維持キャプチャ

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