八ッ場ダムの本体工事費の計上が2013年度の予算では見送られました。その理由は、参院選対策を優先する与党の思惑によるものだと指摘する記事がありました。
 八ッ場ダム事業には20世紀の遺物というイメージがつきまといます。利根川流域関係都県は国交省と共に推進一辺倒ですが、与党はほとんどの国民が、八ッ場ダムに否定的であることをよく承知しているようです。実際、八ッ場ダム事業は1960年代から90年代にかけて、地元選出の福田、中曽根、小渕元首相らが政治的思惑で推進したことが群馬県内ではよく知られています。
 八ッ場ダムは完成すれば水力発電量が減少し、地すべりの危険性を抱えるなどのマイナスの情報がもっと広く知られるようになれば、さらに国民の批判は高まるでしょう。それでも、参院選さえ終わってしまえば批判を恐れる必要もなくなる、ということのようです。

◆2013年2月2日 日本経済新聞 北関東経済

 -八ッ場ダム本体工事費見送り 参院選へ思惑見え隠れ 「古い自民」批判を懸念ー

 政府の2013年度予算案に民主党政権が中止した八ッ場ダム(群馬県長野原町)の本体工事費の計上が見送られた。公共事業全体が12年度当初比15%増と大盤振る舞いだったんにもかかわらず、外れたのはなぜか。そこには今夏の参院選に向けた政府与党の思惑が見え隠れする。

 前政権時代、当時の官房長官裁定で八ッ場ダムの本体着工の条件となった「利根川・江戸川河川整備計画」。関東地方整備局は1日、東京都や群馬県など関係6都県を集めて同計画の原案を説明した。

 原案には70~80年に一度以上起こりうる災害に備えるために八ッ場ダムの建設推進が盛り込まれており、6都県はおおむね了承した。3月2日まで広く意見を募集し、2月下旬に公聴会を開く予定だ。

 計画に反対意見もあり今後の曲折も予想されるが、太田昭宏国土交通相は1月29日、裁定には「縛られるものではない」と言及。改めて建設推進の方針を示した。

 ではなぜ13年度予算案には関連費用のみで本体工事費が盛り込まれなかったのか。国交省は「作業場の整備など本体関連の工事が1年以上かかり、13年度中に本体工事に入れない」と説明するが、額面通り受け止める関係者は多くはない。

 キーワードは安部晋三首相の発言にあるという。「無駄な公共投資を増やし、古い自民党に戻るとの批判があるが、そうではない」。昨年末の衆院選から再三、強調している。ある自治体関係者は「政府与党内には八ッ場ダムは古い自民党の象徴との見方がある。参院選を意識し、今回の予算案では八ッ場を目立たせなくしようとする力学が働いていたと聞いている」と明かす。

 国民には巨大公共事業は無駄遣いという抵抗感がなお根強い。群馬県選出のある自民党の国会議員は「本体工事を計上すれば、『コンクリートから人』ではなく、『人からコンクリート』に戻ったと批判される」と漏らす。

 地元、長野原町では「ダム湖畔が見える温泉街」としての再生を狙っており、高山欣也町長は「完成が遅れれば生活再建も1年遅れる」と強調する。民主党政権の3年間で振り回された同ダムの周辺住民。政権交代後も振り回され続ける。(前橋支局長 鈴木禎央)