八ッ場ダムの本体工事が行われる吾妻渓谷は、四季折々に多くの観光客が訪れる国の名勝です。
 当会では、八ッ場ダムの本体工事によって吾妻渓谷の観光がどのような影響を与えるのかを把握するため、昨年8月に八ッ場ダム事業を進める国交省関東地方整備局に公開質問書を送付したところ、7ヶ月以上たった3月25日にようやく回答が届きました。

 <参照> 公開質問書とその回答
 http://yamba-net.org/?p=7140
 

 この回答には、吾妻渓谷への立ち入り制限について、次のように書いてありました。

「滝見橋を含む吾妻渓谷遊歩道は、仮締切工事の実施に伴い、小蓬莱(見晴台)より上流側の区間を、現在の冬期閉鎖以降も通行止を継続すると管理者からは聞いています。」

 この回答が当会にファックスで送られた当日、同様の説明が地元の長野原町と東吾妻町の公式ホームページにも掲載されました。
 吾妻渓谷は上流側が長野原町、下流側が東吾妻町に属し、渓谷内に町境があります。八ッ場ダムの本体工事は長野原町で行われることとなっており、東吾妻町に属する下流部分は八ッ場ダムができても残されます。
 公開質問書の回答にある渓谷遊歩道の「管理者」は長野原町と東吾妻町を指しますが、両町に閉鎖の指示を出したのは、「聞いております」と書いている国交省関東地方整備局の八ッ場ダム工事事務所です。
 
 国土交通省は八ッ場ダム工事事務所のホームページで「吾妻峡のうちでも最も観光客が訪れる鹿飛橋」付近は、手を加えません。」と説明し、今回の回答でも、「下流に位置する小蓬莱や鹿飛橋を含む八丁暗がり等の吾妻峡の象徴的な景観を形成する要素が存在する区間は改変されることなく、現状のまま保全されます。」としています。
 http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/faq/q0/q0_4.htm
 国土交通省八ッ場ダム工事事務所のホームページ 八ッ場ダムQ&A

 しかし、八ッ場ダムに水没する吾妻渓谷の上流部は、下流部と一体となって吾妻渓谷を形成しており、渓谷の最も上流側にある八ッ場大橋、白糸の滝、滝見橋は、JR吾妻線の川原湯温泉駅から至近距離にあることもあって、多くの人々が訪れる吾妻渓谷有数の観光スポットです。

 吾妻渓谷の山中を散策できるように整備されている遊歩道は、凍結により事故が発生する恐れがあるため、これまでも冬の間は閉鎖され、シーズンの始まるゴールデンウイークの前に開放されてきました。一方、滝見橋は、冬の間も積雪、路面の凍結などがない場合は開放され、今冬も公開質問書の回答が届くまで開放されていました。
 しかし、回答が送られた直後、滝見橋の両岸の入り口に突然、写真にあるようにロープがかけられ、「冬期間閉鎖」の看板が吊るされ、閉鎖されてしまいました。

吾妻渓谷 左岸側(長野原町 川原畑)の滝見橋入り口 

吾妻渓谷 左岸側(長野原町 川原畑)の滝見橋入り口 


吾妻渓谷・右岸側(長野原町川原湯地区)の滝見橋入り口

吾妻渓谷・右岸側(長野原町川原湯地区)の滝見橋入り口

 さらに4月1日からは、滝見橋へ通じる右岸(川原湯地区)側の車道も閉鎖されてしまいました。
 車道の手前に掲げられた看板には、「八ッ場ダム建設に係る工事により全面通行止め 平成26年4月1日より平成32年3月31日まで」と書かれています。
 看板が掲げられている場所は八ッ場ダムの水没予定地です。八ッ場ダムは現在の計画では平成31年度に完成する予定です。看板に書かれている全面通行止めの期間は「平成32年3月31日まで」ですが、正確には、期限はない、つまりこれからずっと閉鎖という意味です。
渓谷への道全面通行止め縮小
全面通行止め縮小

 滝見橋の下流では、八ッ場ダムの本体準備工事とされる仮締切(かりしめきり)工事が始まりました。下の写真は3月22日に撮影したものです。
 仮締切工事シャベルカー1縮小
 

 吾妻渓谷では、まだ北斜面に残雪が見られますが、木々の先は赤みがかってきており、間もなく一年で最も美しい、命みなぎる季節を迎えます。
 下の写真は2008年4月22日に撮ったものです。左下の花は、吾妻渓谷のシンボルとされるムラサキツツジ(ミツバツツジ)です。今年はもうこの風景も見られません。
08年4月22日縮小

 八ッ場ダムの本体準備工事、そしてその先の本体工事は、渓谷の地形を改変し、周辺の様相を一変させてしまうでしょう。
 本体工事が始まれば、吾妻渓谷の上流部は完全に閉鎖され、観光客が散策している国道沿いの遊歩道にも入れなくなってしまいます。

 なお、吾妻渓谷への立ち入り制限については、今のところ以下の報道のみのようです。

◆2014年3月26日 朝日新聞群馬版より

ー吾妻渓谷遊歩道、閉鎖を一部継続 八ツ場ダム工事影響 /群馬県

 八ツ場ダム建設に関係し、東吾妻、長野原両町と国土交通省は25日、吾妻渓谷で冬季閉鎖している遊歩道の一部で通行止めを続けると公表した。通行止めが続くのは小蓬莱(ほうらい)(見晴台)から上流で、小蓬莱〜鹿飛橋間は積雪が減り安全確認を終えたら解除予定。両町と同省は「名勝・吾妻峡の景観は例年通り楽しむことができる」としている。

 八ツ場ダムは今秋に本体工事に着手の予定。通行止めの一部継続について、同省八ツ場ダム工事事務所は「関連工事が本格化しているため」と説明している。

 約900メートルの渓谷で最も川幅が狭まり、観光客に人気のある「八丁暗がり」などは影響を受けない。

 遊歩道は両町が管理しており、将来的なルートなどは国交省と協議中という。