(株)大同特殊鋼渋川工場の有害スラグについて、国交省関東地方整備局と群馬県、渋川市はさる11月13日に連絡会議を開き、対応方針と取り組み状況についての話し合いが行われました。有害スラグは八ッ場ダム事業でも大量に使用されたことが明らかになっています。
 連絡会議は昨年11月26日、今年1月28日に第一回、第二回が開かれ、今回は約10か月の間をおいて三度目の開催となりました。
 この間、9月には群馬県が大同など三社を廃棄物処理法違反容疑で刑事告発し、群馬県警が強制捜査に乗り出しており、今回の連絡会議でどのような方向性が示されるのか、注目されました。

キャプチャ記者発表 国交省のホームページに記者発表が掲載されています。
 http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/kikaku_00000349.html
 「第3回鉄鋼スラグに関する連絡会議の開催について」
(右の画像をクリックすると、「記者発表資料」が開きます。)

 群馬県のホームページには、第3回連絡会議のページが設けられ、会議資料も公開されています。
https://www.pref.gunma.jp/06/h8000259.html 群馬県 第3回連絡会議
http://www.pref.gunma.jp/06/h8000260.html 会議資料

 連絡会議は一般には公開されていませんが、マスコミには公開されました。
 翌日、連絡会議の様子を報じた各紙のタイトルにもあるように、国と群馬県、渋川市の三者は、大同特殊鋼に処理費用を全額負担要求することで一致した、ということです。処理費用を税金でなく、有害スラグを排出した大同特殊鋼が負担するとの決定が下されたことは一歩前進と言えます。

 しかし、処理の中身は、報道を見る限り問題山積です。
 有害スラグ問題について、最初から詳しく報道してきた毎日新聞の群馬版は、連絡会議で決定した今後の対応方針を次のように伝えています。

(1)「環境基準を超過」かつ「民有地など管理が困難」なら撤去
(2)「環境基準値を超過」または「口に入ったり触ったりする危険のある小中学校など」なら盛り土やアスファルトで覆う
(3)放置する場合も県環境部局が地下水の常時監視を続ける  

 環境基準値を超過している小中学校の敷地内までも、有害スラグを撤去せずに、盛り土やアスファルトで覆う、という対応は、将来に禍根を残すことは必至です。大同特殊鋼渋川工場から排出されたスラグは、フッ素や六価クロムなどの有害物質を含むだけでなく、膨潤する性質があるため、アスファルトで覆っても時間がたてばヒビが入り、表面が凸凹になります。臭いものにフタをするような対応では、当座をしのぐことしかできません。

 八ッ場ダム予定地住民の移転代替地において、住民に分譲された土地は(1)の規定によって対応することとなります。しかし、「環境基準を超過」しているかどうかは、調査をしなければわかりません。国交省八ッ場ダム工事事務所は、民有地を調査対象から除外してきました。(毎日新聞9/30付け 「記者の目 鉄鋼スラグ 有害物質問題 行政は環境守る気概を」→ http://yamba-net.org/?p=12402

国道わきスラグ これまでに八ッ場ダム代替地で国交省が調査を実施したのは、地表に有害スラグが露出していることを毎日新聞が国交省八ッ場ダム工事事務所に指摘した場所や、温泉配湯管等の埋め戻し材に使用したことを業者が報告した場所など、広大な八ッ場ダム代替地のごく一部に限られています。八ッ場ダム代替地では、今も地表に露出したスラグがあちこちに転がっている状態ですが、国交省八ッ場ダム工事事務所は今年8月には、有害スラグの撤去作業を終了したとの文書を住民に配布しています。

 たとえ、民有地に環境基準を超えるスラグがあったとしても、調査をしなければスラグの有無はわかりません。また、30~50メートルに達する高盛り土も調査対象から外れており、スラグの有無は不明です。

キャプチャ 川原湯温泉の新駅周辺では擁壁工事の裏込砕石にスラグが使用されたといわれますが、国交省は当会の公開質問に対して、「工事に使用する材料の納入業者については、工事の受注者と材料の納入業者との間の契約によるものであり国土交通省は関与するものではなく、お答えは差し控えさせて項きます」と回答するのみで、調査を行っていません。→ http://yamba-net.org/?p=9141
(写真右=JR川原湯温泉駅プラットフォーム脇の道路に転がっているスラグ)

 18日付の日経コンストラクションの記事にあるように、「露出していない箇所については、どこまで無断使用があるのか、知る由もない。」「無断使用の実態は不明」です。このままでは、将来にわたってダム湖周辺は有害スラグ問題を抱え続けることになります。
 

◆2015年11月14日 毎日新聞群馬版 
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20151114ddlk10040009000c.html
ー鉄鋼スラグ問題:処理費用、大同特殊鋼に全額負担要求へ 渋川市など /群馬ー

 大同特殊鋼渋川工場から出た鉄鋼スラグを巡り、国土交通省関東地方整備局と県、渋川市は13日、スラグの撤去や被覆にかかる費用を大同に全額負担させる方針を確認した。

 県庁で開いた3者の連絡会議で意見が一致。渋川市は、9カ所でスラグを撤去し、36カ所でむき出しのスラグを被覆すると発表。「優先順位を付けて対応を進めたい」と説明した。

 連絡会議は対応方針として(1)「環境基準を超過」かつ「民有地など管理が困難」なら撤去(2)「環境基準値を超過」または「口に入ったり触ったりする危険のある小中学校など」なら盛り土やアスファルトで覆う(3)放置する場合も県環境部局が地下水の常時監視を続ける−−と決めた。

 国交省は環境基準を超えるスラグが見つかった27カ所のうち、10カ所で撤去、9カ所で被覆を進める。残る8カ所は既に舗装で埋まっている。長野原町の八ッ場ダム移転代替地では全4カ所で撤去作業を完了したという。

 渋川市は、スラグが見つかった72カ所のうち49カ所で基準値を超過しており、9カ所でスラグを撤去し、32カ所を被覆する。残る8カ所は舗装などでスラグが埋まっているとして放置する。古巻小、橘北小、渋川中、赤城北中の敷き砂利の駐車場は、スラグがむき出しのまま。基準値未満だが、市は舗装工事でスラグを覆うと決めた。

 県の倉嶋敬明・県土整備部長は「他市町村も連絡会議の方針に準拠してほしい」と述べた。県廃棄物・リサイクル課は、複数の市町村からスラグ使用が疑われる工事があったと報告を受けており、使用された現場は9月に県が集計した計225カ所にとどまらないとみられる。【尾崎修二】

◆2015年11月18日 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO94103860X11C15A1000000/?dg=1
ー発覚から2年半 ようやく対応決まる鉄鋼スラグ問題ー

 大同特殊鋼渋川工場(群馬県渋川市)が出荷した有害物質を含む鉄鋼スラグが群馬県内の公共工事で使用された問題で、国や自治体の対応方針が決まった。八ツ場ダムの移転代替地など行政側が管理できない民有地では撤去するが、道路の盛り土など、それ以外の施工箇所では表面を被覆するだけにとどめる。撤去などの費用は全額、大同特殊鋼に求める。国土交通省、群馬県、渋川市の3者が2015年11月13日に開いた連絡会議で対応方針を決定した。

 環境基準を満たしている箇所では、特に対処はしない。ただし、小中学校など児童や生徒が接触するリスクの高い箇所では、必要に応じて被覆するものとした。また、鉄鋼スラグを撤去しない箇所では、地下水の水質を常時監視するなどして環境への影響を引き続きチェックしていく。
キャプチャ

 国交省は、撤去対象の10カ所のうち、既に5カ所で撤去を終えている。残りの5カ所の撤去や9カ所で予定している表面被覆についても、2015年度中に完了させる考えだ。一方、渋川市は9カ所で撤去、32カ所で表面被覆をする予定だが、現時点で全く着手していない。人が触れる可能性の高い箇所など優先順位を付けて対処していく方針だが、完了する時期は未定だ。

■最初に発覚したのは2013年6月

 鉄鋼スラグ問題が発覚したのは、2013年6月に渋川市の遊園地「渋川スカイランドパーク」の駐車場で、六価クロムやフッ素が基準値を超えることが分かったのがきっかけだ。国交省と群馬県、渋川市が、大同特殊鋼の鉄鋼スラグを使用した記録のある工事を調べたところ、いくつかの箇所で基準を超えていることが明らかになった。

 さらに国交省の調査によって、使用記録のない工事でも、無断で同社の鉄鋼スラグが使われていることが判明した。これらの問題を受け、国と県、市は2014年11月に連絡会議を設立し、対応方針などを検討してきた。

2015年9月11日に、群馬県が大同特殊鋼の鉄鋼スラグを「廃棄物」と認定する調査結果を発表した。管理費などの名目で、販売代金を超える金額を販売先に支払う「逆有償取引」が確認されたことが理由だ。この取引の実態から、同社の鉄鋼スラグには商品としての価値が無いと判断し、廃棄物であると認定した。県の判断が出たことを受けて、連絡会議が対応方針を決定した。

国交省は、撤去や表面被覆の費用について、大同特殊鋼が全額負担することで同社と合意している。群馬県と渋川市では、これから同社と協議し、費用の全額負担を求める方針だ。

■元請け会社の責任は?

 国交省の工事には、大手舗装会社も元請けとして関わっている。元請け会社は、鉄鋼スラグに有害物質が含まれているとの認識はなく、無断使用された工事についても、材料にスラグが混入しているとは知らなかったとしている。

 11月13日の連絡会議後の質疑で、関東地整の担当者は「公共工事で瑕疵があった時には、契約書に基づいて(元請けに)瑕疵担保を求めることはあり得る」としながらも、「今回は、大同特殊鋼が自ら責任を認めて費用の負担を申し入れてきた。国の場合はそれで収まっている」と発言した。特に元請けの責任は問われない見通しだ。

 対応方針が決まったことで、大同特殊鋼の鉄鋼スラグ問題は、最初の発覚から約2年半でようやく収拾のめどがついた。しかし、これですべてが解決するとは言い難い。

 国交省の工事で発覚した鉄鋼スラグの無断使用は、露出している箇所を同省が現地で調べて判明したものだ。露出していない箇所については、どこまで無断使用があるのか、知る由もない。また、県や市では踏み込んだ調査をせず、鉄鋼スラグの使用記録が残っている工事だけを調べるにとどまっている。無断使用の実態は不明だ。

 結局、どこで使われたのか分からない鉄鋼スラグによる土壌や地下水の汚染リスクは、依然として残る。

(日経コンストラクション 青野昌行)[ケンプラッツ 2015年11月17日掲載]

◆2015年11月14日 東京新聞群馬版
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201511/CK2015111402000185.html 
ー鉄鋼スラグ5カ所撤去 有害物質検出で国交省 八ッ場ダム代替地などー

 大同特殊鋼渋川工場(渋川市)で精製時に排出された有害物質を含む副産物「鉄鋼スラグ」の処理問題で、スラグを利用した国土交通省関東地方整備局、県、渋川市の連絡会議が十三日、県庁で開かれた。

 国交省は、八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の代替地や水没地で環境基準を超える有害物質が検出された四カ所を含む計五カ所について、スラグを撤去したことを報告した。

 国交省は有害物質が環境基準を超えた他の民有地など五カ所も撤去を進めている。他に環境基準を超えた九カ所のスラグは路盤材などに利用され、今後舗装や盛り土をする。

 渋川市は環境基準を超えた場所のうち、これから九カ所を撤去し、三十二カ所は舗装などを進める。小中学校四校の駐車場などは環境基準を超えていないが、スラグが露出しているため、早急に舗装する。

 撤去などの費用は、問題の責任を認めている大同特殊鋼が負担する方針を既に示している。 (菅原洋)

◆2015年11月13日 NHK前橋支局
http://www3.nhk.or.jp/lnews/maebashi/1063329711.html?t=1447399011
ースラグ処理費用を大同に請求へー

 大手鉄鋼メーカー、大同特殊鋼の群馬県渋川市の工場が、有害物質を含む廃棄物の「鉄鋼スラグ」を建設現場の資材として違法に処理していた疑いがあるとされている事件を受けて、13日、そのスラグが使われた公共工事について、国や県などが会議を開き、撤去などにかかる処理費用をメーカー側に全額請求していくことを決めました。

 大手鉄鋼メーカー、大同特殊鋼の渋川市の工場が出荷した「鉄鋼スラグ」は、群馬県長野原町にある八ッ場ダムの住宅代替工事の整地など県内225か所の国や県などの公共工事の現場で使われ、その一部では環境基準を超えるフッ素や六価クロムが検出されています。
警察は「大同特殊鋼」が許可を持たない取引業者に廃棄物である「鉄鋼スラグ」の処理を依頼したとして、ことし9月に廃棄物処理法違反の疑いで工場などを捜索しました。

 13日は、国や県などの担当者が県庁で会議を開き、公共工事で使われた「鉄鋼スラグ」の撤去や処理にかかる費用について金額は明らかにしていませんが、全額請求していくことを決めました。
 そして、「鉄鋼スラグ」が環境基準を上回っている場合、撤去するか、表面を覆うとともに地下水への影響などを県が常時監視することにしたほか、環境基準を満たしていても、学校で使われている場合は、表面を覆うことにしました。

◆2015年11月14日 朝日新聞群馬版
http://digital.asahi.com/articles/ASHCF5DGJHCFUHNB008.html?rm=383
ースラグ、23カ所撤去へ 国など、費用全額請求ー

 大同特殊鋼(本社・名古屋市)の渋川工場から有害物質を含む鉄鋼スラグが出荷され、県内の公共工事で使われていた問題で、国と県、渋川市による連絡会議が13日、県庁であった。環境基準を上回るフッ素などが検出された工事を中心に23カ所でスラグや周辺の土壌を撤去し、62カ所で盛り土や舗装で覆う対策を取ることを決めた。費用は大同側に全額負担を求めることも確認した。

 会議では、国土交通省に大同側から費用を負担する申し出があったことが明かされた。県と市も「全額負担を請求する」としており、3者が足並みをそろえた。

 鉄鋼スラグは道路や駐車場の路盤材などに使われた。対策は①有害物質が環境基準を上回った現場のうち、民間からの借地などのものは撤去②それ以外の場所は盛り土やアスファルト舗装で表面を覆う③基準値を下回っても小・中学校の敷地で露出している場合などは工事を施す――が柱。

 国・県・市は今後、対策工事を急ぐとともに、大同側と費用負担をめぐる協議に入る。他の自治体の公共工事でも有害のスラグが使われていた場合、同様の対応をすることになる。

 渋川市では72カ所の工事でスラグが使われ、うち49カ所で有害物質が基準値を超えた。路面が波打って危険な市道など9カ所で撤去し、露出した32カ所は盛り土や舗装で覆う。

 市内4校の小・中学校の駐車場などでも使われていた。基準値は下回ったが、子どもの口に入る恐れもあり、舗装して表面を覆う。

 国交省関東地方整備局関連では、65カ所中27カ所で基準値を超えた。うち10カ所は撤去する方針で、すでに八ツ場ダムの代替地など5カ所で作業が完了。スラグが露出した状態の9カ所は舗装などの対策を取る。

 県の事業は、58カ所のうち基準値を上回ったのは1カ所だけで、舗装工事を終えた。基準値を下回る仮設道路4カ所は、本工事完了に伴って撤去される。

 大同特殊鋼は朝日新聞の取材に「会議の結果が公表されておらず、現時点でのコメントは差し控えたい」としている。(土屋弘)

◆2015年11月14日 読売新聞群馬版
 ー大同特殊鋼に全額請求 鉄鋼スラグ 基準超の民有地では撤去ー

 鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」の渋川工場から出た鉄鋼スラグを巡る問題で、国と県、渋川市は13日、県庁で連絡会議を開き、公共工事で使われたスラグの撤去や安全対策にかかる費用について、同社に全額請求する方針を決めた。
 会議では、スラグが建設資材として使われた施工箇所の対応を協議。①環境基準を超える有害物質が検出された箇所は、民有地などで将来にわたって管理できない場合は撤去する。それ以外は表面を覆うなどの安全対策を講じる②基準値御南も箇所でも、小中学校などは必要に応じて舗装などを行う③現状のままにしておくスラグについては、県が地下水の常時監視など環境への影響を調べる――ことを決めた。
 撤去や安全対策の費用については、国が「大同特殊鋼から費用負担の申し入れがあった。合意の上で、大同特殊鋼が負担することになった」と説明。県と渋川市も今後、「費用負担を求めていく」との方針で一致した。
 それぞれの取り組み状況も報告された。国は65か所のうち27か所の工事で基準を超えるスラグを確認。このうち撤去予定は10か所あり、10月末時点で八ッ場ダムの代替地を含む5か所の撤去を完了した。残る5か所についても今年度中に撤去する方針だ。県は58か所のうち1か所で基準を超えたが、すでに舗装した。基準値未満だがスラグが露出している仮設道路が4ヵ所あり、年度内に撤去を終える予定という。
 渋川市は72か所のうち49か所で基準を超え、9か所を撤去する方針だが、完了時期については「まだわからない」とした。また、基準値未満ではあるものの、市内の4小中学校の駐車場でスラグが露出していると説明し、担当者は「県の助言を得ながら必要に応じて舗装する」と述べた。

—転載終わり—

 有害スラグ問題を追及してきた市民オンブズマン群馬による、連絡会議についてのブログ記事
 http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1799.html
 「大同スラグ問題を斬れるのか!…第3回鉄鋼スラグ連絡会議の討議内容から見えてくる行政側の思惑」