八ッ場ダムの事業者である国交省関東地方整備局は、現在、吾妻渓谷の景観改善に関する下記アンケートを実施しています。
 これは、アンケートに書かれた文面によれば、「電話帳から無作為に抽出した3500世帯」に送られているもので、投稿期限は今月18日となっています。(以下の画像をクリックするとアンケートの全ページがご覧いただけます。)
  キャプチャ
 

 アンケート内容は、八ッ場ダムから放流することで吾妻渓谷の景観改善にどの程度の効果があるかを問うものです。同様のアンケートはこれまでに何度も実施されてきました、その都度、アンケート結果は、八ッ場ダム事業の再評価の際、「吾妻川の流量維持」の費用対効果の「効果」をCVM(仮想的市場評価法)で算出するために使われてきました。

 八ッ場ダム事業は国の名勝・吾妻渓谷の中にダム本体のコンクリートの壁を造ることになっています。吾妻渓谷は八ッ場ダムによってその美しい自然景観を破壊され、最も観光客に親しまれている渓谷上流部の瀧見橋、八ッ場大橋周辺が湖底に沈んでしまうだけでなく、ダム下流も含めて渓谷全体に致命的な影響を与えることは必至です。けれども、関東地方整備局が実施してきたアンケートでは、八ッ場ダムによって景観が改善されるというブラックユーモアのような結果が導き出され、八ッ場ダム事業の効果は事業費の何倍もあるという事業評価をつくりだすために利用されてきました。
 八ッ場ダム事業の前回の再評価は平成23年8月11日に実施されました。直轄事業の再評価は現在、3年おきに行われていますので、実施中のアンケートは来年度に再評価を行うための資料として行われているものと考えられます。

 八ッ場大橋縮小
           八ッ場ダムによって水没する名勝・吾妻渓谷「八ッ場大橋」付近
 
 「吾妻川の流量維持」という付随目的が八ッ場ダム事業に組み込まれたのは2004(平成16)年のことです。これは、八ッ場ダムからの放流により、吾妻川の流量が維持されるというものです。けれども、「吾妻川の流量維持」は八ッ場ダムが完成する前に目的そのものを喪失します。
 吾妻川の流量が少ないのは、八ッ場ダムがないからではなく、東京電力が水力発電のために吾妻川の水利権のかなりの部分をもっているからです。しかし、1988年に通産省と建設省が通達した「発電ガイドライン」によって、それ以降、水利権を更新する場合、電力会社はこれまでのように川の水を”根こそぎ取水”できなくなり、一定の水量を川に戻さなければならなくなりました。
 八ッ場ダム予定地直下では東京電力・松谷発電所が水利権の更新時期を迎えているため、八ッ場ダムから放流するとされる流量は八ッ場ダムが無くとも八ッ場ダム完成前に吾妻川に流れるようになります。

 吾妻渓谷の景観改善に関するアンケートについて、前々回の事業評価の際、問題点をまとめて記者発表した内容をこちらに掲載していますので、ご参考になさってください。
 http://yamba-net.org/old/modules/news/index.php?page=article&storyid=567
 2009年4月9日 「八ッ場ダムによる吾妻渓谷の景観改善(事業評価の問題点)」

 「吾妻川の流量維持」についての説明は、こちらをご覧ください。
 http://yamba-net.org/problem/mokuteki/ryuryo/