*公開質問書で提示した回答〆切を過ぎましたが、国交省関東地方整備局の担当者によれば、上の方から許可が出ないので、まだ回答できないとのことです。(10/4追記)

 当会では本日、国交省関東地方整備局へ八ッ場ダム計画変更案(事業費の再増額)についての公開質問書を送付しました。
 国交省関東地方整備局の回答については、回答の有無を含めて、このホームページでお知らせします。
 
 公開質問書の全文を転載します。

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 2016年9月16日
 国土交通省関東地方整備局 局長 大西 亘 様

 八ッ場あしたの会
 代表世話人 大熊 孝(新潟大学名誉教授)ほか

 八ッ場ダム基本計画変更案(第5回)に関する公開質問書

 去る8月12日に国土交通省関東地方整備局は「八ッ場ダムの建設に関する基本計画」の5回目の変更案を発表しました。これから関係6都県知事が議会の議決を経て変更案に対する意見を述べることになっていますが、この基本計画変更案については多くの疑問点があります。
つきましては、それらの疑問点について質問しますので、文書で真摯にお答えくださるよう、お願いします。本質問書への回答は9月30日(金)までにFAXでお送りください。

 1 更なる工期延長と事業費増額が予想されることについて
 八ッ場ダム基本計画は1986年度に策定された後、次のように工期延長、事業費増額のための変更が繰り返されてきました。

 1986年度策定 事業費2110億円、工期2000年度まで
 2001年度  第1回変更   工期延長    2010年度まで
 2004年度  第2回変更   事業費増額   4600億円へ
 2008年度  第3回変更   工期延長    2015年度まで
 2013年度  第4回変更   工期延長    2019年度まで
 2016年度  第5回変更案  事業費増額案  5320億円

 関東地方整備局は計画変更の度に、これ以上の工期延長はない、事業費増額はないと述べてきたにもかかわらず、その発言を反故にして新たな計画変更を繰り返してきました。
 果たして、今回の計画変更案で事業費増額は終わりになるのでしょうか。また、工期延長がされることはないのでしょうか。後述するように八ッ場ダム事業の実態を見れば、今後、更なる事業費増額と工期延長の可能性が十分にあります。
 関東地方整備局として、更なる事業費増額がないと言い切れるのか、更なる工期延長がないと言い切れるのか、見解を明らかにしてください。

 2 ダム本体工事の見通しについて
 関東地方整備局は昨年9月の現地説明会などで、ダム本体の基礎岩盤の掘削工事を今年4月に終え、6月から本体打設工事に入ると説明してきました。しかし、ダム本体の基礎岩盤の掘削工事は9月段階でもいまだに続けられています。
 6月から本体打設工事に入ったという報道がありましたが、それはダム本体の裾野と言うべき減勢工の部分でコンクリート打設を始めただけであり、本来のダム本体の打設工事である堤体部の打設工事ではありません。6月から本体打設と明言してきたため、打設工事に入ったポーズをとるためのものであったと推測されます。
 それでは本来のダム本体工事の見通しはどうなのでしょうか。このことに関して次の4点の質問にお答えください。

 2-1「除去が必要な弱層部」と「当初想定より硬い岩石」について
 基本計画変更説明資料(関東地方整備局 事業評価監視委員会配布資料 平成28年8月12日)20ページによれば、基礎岩盤が当初想定と違ったことを理由としている増額が約41億円となっています。「除去が必要な弱層部」と「当初想定より硬い岩石の割合が多い」ことによる増額とされていますが、それぞれの要因による増額の金額を明らかにして下さい。
 また、「除去が必要な弱層部」と「当初想定より硬い岩石」とは、それぞれどのような地層を指すのかを明らかにして下さい。

◇関東地方整備局 事業評価監視委員会配布資料(平成28年8月12日)20ページ
キャプチャ 

 2-2「除去が必要な弱層部」と「当初想定より硬い岩石」に対して講ずる工事
 上記「除去が必要な弱層部」と「当初想定より硬い岩石」に対してそれぞれ今後行う工事の内容とそのスケジュールを明らかにしてください。

 2-3 八ッ場ダム本体工事の設計変更について
 関東地方整備局は2007年に八ッ場ダムの基礎岩盤が想定より良好であったという理由で、本体工事の設計変更を行い、八ッ場ダム本体工事の基礎掘削の深さを18メートルから3メートルに、基礎掘削量を149万立方メートルから60万立方メートルへ、コンクリート量を160万立方メートルから90万立方メートルへ減らしました。2014年に行われた本体工事の発注はほぼそれに沿って行われたと聞いています。しかし、上記の通り、基礎岩盤が発注時の想定と違ってきたのですから、本体工事の設計変更が必要となると考えられます。
 本体工事設計変更後の基礎掘削の深さ、基礎掘削量、コンクリート量を明らかにしてください。

 2-4 堤体部の打設開始時期と終了予定時期
 上述の通り、コンクリートの打設に入ったのは、減勢工の部分であり、堤体部、すなわち、本体そのもののではありません。基礎岩盤の掘削で想定外の地質に遭遇したことにより、堤体部については打設に入れない状態になっていると推測されます。それでは「除去が必要な弱層部」と「当初想定より硬い岩石」に対して講ずる工事が終了して、堤体部の打設工事に入るのはいつ頃になるのでしょうか、そして、その打設が終了するのはいつ頃になるのでしょうか、本体打設工事の開始時期と終了時期の見通しを明らかにしてください。

 3 地すべり対策について
 現基本計画は地すべり対策費がわずか5.82億円で、対象も3箇所しかなく、地元住民の安全が軽視されてきました。今回の計画変更案では、「湛水に伴う地すべり等の対策費の増」が約96億円とされました。
 八ッ場ダム湖予定地は多くの地すべり地に囲まれ、しかもダム湖予定地のまわりには多くの住宅があります。このように、他のダムにはない、難しい条件下にある八ッ場ダム事業では、地すべり等の対策費用が5.82億円では到底足りないことは、以前から専門家らが指摘していたことです。
 関東地方整備局は民主党政権下の2011年に行った八ッ場ダムの検証において、地すべり等の対策費を109.7億円と試算しました。この検証では、地すべり等の対象箇所は、現計画の3箇所にさらに3箇所を加えて6箇所とし、新たに5箇所の未固結堆積物層への対策も必要としました。
 ところが、今回の計画変更案における「湛水に伴う地すべり等の対策費の増」(約96億円)は、「八ッ場ダム検証」において対策箇所とされた地すべり地6箇所のうち5箇所、未固結堆積物層5箇所のうち1箇所のみを安全対策の対象とし、それ以外の5箇所は「対策不要」としています。この地すべり対策について以下、質問します。

資料4 関東地方整備局・事業評価監視委員会資料42ページ

 3-1 5箇所を「対策不要」とした理由
 2011年の八ッ場ダム検証時に対策を必要としていた5箇所を「対策不要」とした理由を明らかにしてください。

 3-2 「対策不要」とした5箇所の調査結果
 「対策不要」とした5箇所について八ッ場ダム検証の後、どのような調査を行って不要と判断したのか、調査の内容と結果を具体的に示してください。

 3-3 未固結堆積物が厚く堆積する川原湯地区への懸念
 対策不要とした5箇所のうち、川原湯地区のJR吾妻線「川原湯温泉駅」の下流側は、背後の金鶏山から崩落した崖錐堆積物が厚く堆積し、さらにその下には、約2万4千年前の浅間山の山体崩壊によって流下した応桑岩屑流堆積物が堆積し、地質が脆いことで知られています。ダムに貯水すれば、地下水位の変動で地すべりの危険性が高まることが懸念されており、2011年の八ッ場ダム検証報告では、川原湯地区の未固結堆積物に対して、約20億円の費用をかけて75万立方メートルの押さえ盛土工法で地すべり対策を講じる必要があるとしています。
 川原湯地区の未固結堆積物のある箇所には、湛水域のすぐ上に住宅とJR吾妻線の線路が走っており、安全確保がきわめて重要です。
 川原湯地区を含め、「対策不要」とした5箇所でダム湛水後に地すべりが起きないとする具体的な根拠を示してください。

 3-4 追加的な地すべり対策の事業費増額と工期延長について
 八ッ場ダム事業はこのように地すべり対策が不十分でありますので、試験湛水および完成後の本格運用で深刻な地すべりが発生して、その対策費が上乗せされ、工期が延長される可能性が十分にあります。わが国のダム事業では、次のようにダム完成後の試験湛水で深刻な地すべりが発生して巨額の追加地すべり対策費が必要となり、工期が大幅に延長された事例があります。

 大滝ダム(国交省)  完成時期 2003年度→2012年度  9年延期 
            追加地すべり対策費 308億円
 滝沢ダム(水資源機構) 完成時期 2005年度→2010年度  5年延期 
            追加地すべり対策費 145億円

 八ッ場ダムも大滝ダムや滝沢ダムのようになることがないと言い切れるのか、関東地方整備局の見解を明らかにしてください。

 4 更なる増額要因について
 今回、720億円も増額する計画変更案が示されましたが、計上されていない増額要因があります。これらについて質問します。

 4-1 代替地整備費用の大半の負担
 八ッ場ダム水没住民の移転代替地の整備費用は、現在は事業費の枠外ですが、八ッ場ダム検証報告によれば、2009年度までに約95億円が投じられています。八ッ場ダム事業では谷の大規模な埋め立てや山の斜面への造成など、地形条件の悪い中で代替地を無理をしてつくっていますので、整備費用がきわめて高額になっています。代替地は2009年度以降も造成工事が進められてきましたので、この整備費用がさらに膨らみ、100億円を超える金額になっていることは確実です。
 代替地の整備費用は、本来はその分譲収益で賄うものです。八ッ場ダム事業の代替地は造成費用が高額になっている一方で、代替地への移転者が当初の予定を大きく下回っているため、大幅な赤字になり、赤字分は結局は八ッ場ダム事業費に上乗せせざるを得ません。
 私たちが分譲収益の額を移転者数と分譲価格から試算してみると、30億円程度にとどまりますので、結局、70億円程度は赤字になると予想されます。
この代替地整備費用の赤字額が最終的にどの程度の金額になるのか、関東地方整備局の見通し額を明らかにしてください。また、その高額の赤字分をどのように処理するのかを明らかにしてください。

 4-2 東京電力・水力発電所への減電補償
 吾妻川には上流から下流まで水力発電所がいくつもあって、吾妻川に流れるべき水の大半が水力発電所への送水トンネルの中を流れています。八ッ場ダム予定地付近より下流にある水力発電所は東京電力ホールディングス株式会社(以下、東京電力という)のもので、同社が吾妻川の水利権を所有しています。同社の各発電所で使った水は下流側の発電所に順繰りに送水管で送られていきますので、吾妻川に戻ることがほとんどありません。
 八ッ場ダムに水を貯めるためには、この発電所への送水量を大幅に制限しなければなりません。しかし、水利権は先行のものが優先されますので、発電所への送水量を制限するためには、東京電力に対して発電量の減少分について補償金を支払わなければなりません。八ッ場ダムの貯水による影響は、八ッ場ダム周辺の発電所から利根川合流点の発電所まで及びますから、この減電補償の金額は非常に大きなものになります。
 関東地方整備局は八ッ場ダム検証報告において、八ッ場ダムによる東京電力の発電所の減電量はわずかであると主張しました。しかし、これは減電量が極力小さくなるように、関東地方整備局が恣意的に計算したものであって、東京電力の同意を得たものではなく、意味がありません。
 計算の中身を点検すると、たとえば、八ッ場ダムの補償工事で松谷、原町発電所が休止している期間が約2年間に及ぶ1999~2008年の実績データを使ってダム完成前の発電量を小さくする、あるいは、まったく具体化していない、群馬県営八ッ場発電所から東京電力・原町発電所までの導水管の設置を前提にするなど、様々な恣意的条件設定が行われていることが明らかになりました。
 減電補償額は関東地方整備局と東京電力の協議の下に、基本的にダム完成前の10年間の実績データを使って計算されますが、私たちが試算した結果では、減電補償額は130~200億円以上にもなります。
関東地方整備局はこの減電補償の金額について、今まで東京電力とどのような交渉を行ってきたのか、交渉の経緯と内容を明らかにしてください。

 5 八ッ場ダムの目的の一つ「吾妻川の流量維持」の喪失について
 「吾妻川の流量維持」は2004年の八ッ場ダム基本計画変更で追加された目的で、ダムから2.4㎥/秒を放流して吾妻渓谷の流況を改善することになっています。現在、吾妻渓谷の流量が乏しいことが多いのは、東京電力・松谷発電所が吾妻川の水を取り尽くしているからですが、この発電所の水利権の更新がまもなく行われます。従前の水利権は2012年3月末までで、現在は東京電力の水利権更新許可申請書を関東地方整備局が審査中です。
 近年はガイドライン「発電水利権の期間更新時における河川維持流量の確保について」により、水利権更新の際に河川維持流量の放流が義務付けられますので、松谷発電所の水利権更新の申請書には八ッ場ダム予定地で2.4㎥/秒を確保することが明記されています。したがって、水利権の更新が完了すれば、八ッ場ダムなしで2.4㎥/秒の流量が維持されますので、八ッ場ダムの「吾妻川の流量維持」の目的は喪失します。
このことについて次の質問にお答えください。

 5-1 東京電力・松谷発電所の水利権更新申請書
 東京電力・松谷発電所の水利権更新申請書は2012年3月までに提出されており、すでに4年半も経過しています。なぜ、水利権更新の許可がこれほど遅れているのか、その理由を明らかにしてください。また、いつ、許可を行う予定であるのかを明らかにしてください。さらに八ッ場ダム事業への影響を避けるために、更新の許可を遅らせているかどうかも明らかにしてください。

 5-2 「吾妻川流量維持」の目的喪失に伴う八ッ場ダムの基本計画の変更
 上述の通り、八ッ場ダムの目的の一つ「吾妻川の流量維持」がなくなることは確実です。その負担額は現計画では97億円(今回の計画変更が行われれば112億円)で、国が7割、群馬県が3割負担しています。この目的が喪失すれば、ダムの規模縮小の計画変更を行うか、それが難しければ、宙に浮いた97億円(112億円)を国や関係都県が負担しなければなりません。
 「吾妻川の流量維持」の目的喪失に伴って、その負担額をどのように処理する考えであるのか、関東地方整備局の見解を明らかにしてください。

                                  以上