2013年5月16日

 昨日、国交省関東地方整備局が八ッ場ダム計画の上位計画である利根川・江戸川河川整備計画を策定しました。1997年の河川法改正以降、今後30年間の河川について国は整備計画を策定することが義務付けられましたが、八ッ場ダム計画はそれ以前に始まっていた計画であるという理由により、この16年間、上位計画のないまま、事業が進められてきました。
 上位計画が国交省関東地方整備局の方針通りに策定されたことで、行政上、八ッ場ダムの本体工事に着手する環境がこれまでより整ったことになります。

 関東地方整備局のホームページに記者発表資料が掲載されています。
 http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000084.html 

 関東地方整備局は4月24日に計画(案)を公表し、関係都県知事の意見を聴きましたが、早くも知事からの意見がそろったということで、計画策定を発表しました。

 関係都県知事の意見も関東地方整備局のサイトに公表されています。
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000078520.pdf

 掲載されている都県知事の意見は次の通りです。(順番は関東地方整備局サイトの掲載順)

●橋本昌茨城県知事
 「特に意見はありません。」

●福田富一栃木県知事
 「利根川・江戸川河川整備計画(案)については、異存なし。」

●大澤正明群馬県知事
 「利根川・江戸川河川整備計画(案)に記載されている内容については特段の異存はありません。群馬県としては、県土の安心安全の向上のため、より高い治水安全度の確保を望むところであり、計画(案)に記載された必要な治水対策事業について事業コスト管理や地元関係者への説明を適切に行いつつ、計画対象期間を前倒して早期完成を図り、利根川の治水安全度の向上に最大限努力されるよう要望します。」

●上田清司埼玉県知事
 「「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(案)」について異存はない。
なお、本県は昭和22年のカスリーン台風の際に破堤地点となり甚大な被害を受けたことを踏まえ、八ッ場ダムの完成も含め、今回策定する河川整備計画を1日も早く実現し、さらにその先の戦後最大のカスリーン台風なみの洪水規模に対応した整備を早急に進めていただきたい。
 あわせて、事業の実施にあたっては事前に関係機関と協議・調整し、地元の意向を反映するよう努めるとともに、引き続きコスト縮減に留意し、効率的・効果的な整備をお願いする。」

●森田健作千葉県知事
 「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画【大臣管理区間】(案)について、本県として異議はありません。なお、県土の安全・安心のため、整備計画の早期の実施に努めていただきたい。」

●猪瀬直樹東京都知事
 「利根川、江戸川の整備の推進については、東京都としてかねてより要望してきたところである。従って、本計画に基づき、利根川、江戸川の整備を早期に進め、治水安全度及び利水安全度の向上などを図ること。なお、今後の実施にあたっては別紙のとおり対応すること。」(別紙は上記サイトの最終ページ)

 知事が意見を表明するに当たっては、都県内の各自治体の意見を踏まえる必要があるため、本来であれば計画案の公表から策定までにもっと時間がかかる筈なのですが、知事、自治体首長とも国交省関東地方整備局の方針に逆らうケースはなかったこともあり、最短時間で利根川の整備計画が策定されることになりました。

 なお、上田埼玉県知事は、「地元の意向を反映するよう努めるとともに、引き続きコスト縮減に留意し」と求めていますが、地元の安全性を確保するためには、八ッ場ダムのコストはさらに膨らませなければなりませんので、この二つの要求は矛盾しています。
 八ッ場ダム事業は2004年の計画変更の際、コスト縮減のために地すべり対策等の費用を縮小しましたが、その後、民主党政権下で改めて安全対策の検証を行い、安全対策の費用として百億円以上が新たに必要と試算されており、早晩、事業費増額のための四度目の計画変更が必要となります。
 八ッ場ダム予定地は地盤がもろく、無理な地形の場所に水没予定地住民の移転代替地を造成しているため、本当に安全を確保するためには、民主党政権下での検証でも不十分であると専門家らは指摘しており、さらなる費用の増大が必要と考えられます。

 利根川流域市民委員会では、5月13日に国交省関東地方整備局に対して、河川整備計画の策定があまりに非民主的であると抗議する文書を提出しています。抗議文には、今回の河川整備計画の問題が整理して指摘されています。↓
 http://yamba-net.org/wp/?p=3304
 

 関連記事を転載します。

◆2013年5月16日 朝日新聞群馬版
http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20130516100580001.html

 -「八ツ場ダム建設」、国が整備計画を策定ー

 国土交通省関東地方整備局は15日、八ツ場ダム建設を含む「利根川・江戸川河川整備計画」を策定した。検討開始から民主党政権の八ツ場ダム中止宣言と撤回を挟み6年半。県や長野原町は「当然」と受け止め、見直し派の学者らは「暴挙」と反発した。

 整備計画は1月公表の原案、4月公表の案と同様、「洪水調節や水道用水などを目的に八ツ場ダムを建設」と明記。洪水の基準地点である伊勢崎市八斗島の目標流量も、毎秒1万7千トンを踏襲した。目標流量は、ダム見直し派が「過大」と批判していた。

 整備局は15日、朝日新聞の取材に「公聴会や関係都県の意見などの手続きを踏まえた策定。八ツ場ダムについても早期の本体着工に向けた取り組みを進めたい」と答えた。

 整備局は2006年12月に有識者会議で検討を始めたが、09年の民主党への政権交代などで中断。再開された昨年9月以降の7回の会合では、主に八ツ場ダムをめぐるスタンスで委員が対立した。

 河川整備計画は、民主党政権が八ツ場ダム本体着工の条件としたものの、自公政権は「条件ではない」としている。国の基本計画上のダム完成は15年度だが、まだ着工されていない。

 県や町は、整備計画はもちろん、ダム本体の早期着工を求めてきた。「策定自体は歓迎。下流の治水が進まないことには、上流の治水が進まない。計画にある事業を急いでほしい」。15日、策定の知らせを受け、県幹部は話した。

 一方、有識者会議の委員を務めた関良基・拓殖大学准教授は「整備局からは『策定した』とメールと電話があっただけ。何の疑問にも答えていない。『流域住民のため』という河川法に反する暴挙」と憤った。(小林誠一、伊藤弘毅)

◆2013年5月16日 上毛新聞

 -八ッ場ダムの必要性示す 関東地方整備局 利根川計画を策定ー

 国土交通省関東地方整備局は15日、利根川・江戸川河川整備計画を策定した。今後30年の治水や利水の方針の中に、長野原町に建設中の八ッ場ダムの機能を盛り込み、ダムの必要性を示した。

 同局が4月下旬に計画案をまとめた後、流域1都5県に対して行った意見聴取で、本県は「より高い治水安全度の確保を望む。計画案に掲載された治水対策事業について、早期完成を図ることを要望する」と回答。埼玉県と東京都も八ッ場ダムの名称を挙げて建設推進を求め、1都5県すべてが計画案に賛同した。

 有識者や地域住民からは「ダムを造るために過大な洪水を想定している」との批判が出ていたが、同局は計画案を大筋で変更しなかった。

 計画は、流域住民の生命や財産を守るため、70~80年に一度の大雨でも洪水被害が出ないようにするため、八ッ場ダム建設が必要だとしている。

 八ッ場ダム建設をめぐって、政府は本年度から資材置き場の整備など関連工事を始め、来年度以降に本体着工する方針。

◆2013年5月16日 下野新聞
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20130515/1044886

 -八ツ場、南摩ダム整備 計画に盛り込むー

 国土交通省関東地方整備局は15日、利根川と江戸川の治水や環境保全などの方針を示した「利根川・江戸川河川整備計画」を策定し、群馬県の八ツ場ダム整備を盛り込んだ。

 70~80年に一度の大雨でも洪水被害が出ないようにするためとしている。同ダムに反対する住民らは、1月に示された同計画原案に対し反対の意見を寄せていたが、大筋で変更はされなかった。

 八ツ場ダムについては、本県も整備費10億4千万円を負担している。鹿沼市の思川開発事業(南摩ダム)も同様の理由で、計画内に位置付けられた。整備期間の目標は、今後30年と定められた。

 大雨時の最大流量については、群馬県伊勢崎市八斗島地点で、1秒当たり1万7千立方メートルと設定。両ダムの建設などで、同1万4千立方メートル程度に低下させることができ、洪水被害の防止や軽減が図れるとした。

 一方、八ツ場ダム建設に反対する市民団体などは「(最大流量は)科学的根拠が希薄で過大な設定。強引に八ツ場ダムを計画に位置づけようとしている」と批判している。

 同計画では河川環境の保全策として、2012年にラムサール条約湿地に登録された渡良瀬遊水地について、湿地の再生などに努める方針も盛り込んだ。