太田国交大臣が八ッ場ダムの完成予定年度が遅れることをようやく認めました。
 国交省関東地方整備局は民主党政権下、八ッ場ダムの本体工事着手からダム完成まで7年かかるという検証結果を示しましたが、本体工事にはいまだ着手しておらず、現計画の2015年度完成は随分前から無理だとわかっていたことです。今になって遅れを認めたのは、参院選が終わり、工期延長に必要なダム計画変更手続きをいよいよ具体化するための布石です。

 民主党政権下では、関係都県はダムの工期延長に反対し続けました。2010年から2011年にかけて行われた八ッ場ダムの検証では、ダム計画の根本に係るこうした問題こそ検証すべきでしたが、検証主体の関東地方整備局は、問題をうやむやにしたまま八ッ場ダム建設妥当との結論を出し、民主党政権はこれに抵抗できませんでした。

 自公政権復活後の今年2月、群馬県知事が現在の完成年度は現実的ではないとして工期延長を国に求めたのも、関東地方整備局が描いたシナリオに依拠していると言われます。
 八ッ場ダム事業の遅れは肥大化したダム関連事業によるものであり、ダム本体工事予定地を走っているJR吾妻線の付け替えが終わらなければ本体工事に入れないことは明らかですが、推進側は事業の遅れを民主党政権のダム検証のせいだとし、責任問題をすり替えています。
 現地の有力者らは国交省、群馬県の現地事務所と繋がりがあり、報道される発言も関東地方整備局の意向に沿ったものとなっています。
 
 八ッ場ダムの起業者である国交省関東地方整備局がダム基本計画の変更を行うためには、共同事業者である利根川流域1都5県がダム計画変更手続きに同意するという手順を踏まなければなりません。今秋以降、関係都県議会に関連議案が提出されると予想されます。

 民主党政権がマニフェストに八ッ場ダム中止を掲げたことで、一般の国民に知られるようになった八ッ場ダム。それだけに、関東地方整備局は八ッ場ダム計画という失策の責任を追及されずに計画変更手続きをすませるために、過去三回の計画変更の際より慎重を期してきたようです。計画変更こそは、八ッ場ダム計画の迷走ぶりを如実に示すものだからです。
 関東地方整備局は八ッ場ダム事業の実態を示さず、計画が行き詰るたびに、その場しのぎの計画変更で辻褄を合せてきました。問題は先送りされ、矛盾は膨れ上がる一方です。
 太田大臣は事業費増額は曖昧にしたままですが、工期延長、事業費増額は共に必至な情勢です。以下にそれぞれの解説を載せています。
 
 工期の延長 http://yamba-net.org/problem/meisou/kouki/
 事業費の増額 http://yamba-net.org/problem/meisou/zougaku/

■2013年8月1日 朝日新聞群馬版
 http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20130801100580001.html

 -八ッ場ダム「15年度完成、不可能」 国交相 計画変更の意向ー

  八ツ場ダム(長野原町)の建設問題で、太田昭宏国土交通相は7月30日、「2015年度完成」とする基本計画の達成は不可能と認め、基本計画の変更を関係自治体などに提案する考えを初めて示した。これを受け、大沢正明知事は31日、「計画の見直しを1日でも早くして、工程を出していただきたい」と求めた。

 八ツ場ダムの基本計画は特定多目的ダム法に基づき1986年7月に策定。総事業費2110億円、工期は00年度までとしたが、08年までの3度の計画変更を経て、現行計画では総事業費4600億円、工期は15年度までとなっている。計画上の工期終了まで2年を切り、準備工事の進み具合や入札手続きの必要期間などから、すでに実現不可能な状況となっている。

 太田国交相は30日の記者会見で、基本計画の工期について「15年には事実上できない」と認め、「よく議論をして精査して、改めて提起し直さないといけない。今、準備をやっている」と、国として基本計画の変更を提案する考えを示した。工期の具体的な延長期間や変更の提案時期は明言しなかった。

 また、総事業費について「従来の予算からそれほど上がるとは思っていないが、再び精査をしていくことが大事だ」と述べた。国が基本計画を変更するには事業費の一部を負担する群馬など6都県の議会の同意が必要で、総事業費の増額は負担増となる自治体側の反発を招く可能性がある。

 この大臣発言を受け、大沢知事は31日の記者会見で「(見直しは)当然だと思っている」と述べ、「計画変更なくして本体工事の入札執行はできない」と早期の計画変更を求めた。会見時点では国交省の説明を受けておらず、「(今後も説明が)なければ私の方から行く」とし、国交相に「現地を視察された方がよろしいのでは」と求めた。

 また、地元の高山欣也・長野原町長は取材に、「民主党政権で3年半中断したので遅れはやむを得ない」とした一方、「地元住民の生活再建を早めるため、工事期間を短縮するために努力する姿を見せてほしい」と国に求めた。さらに知事同様、「現地の状況を一度ぜひ見てほしいと思っている」と国交相の現地視察を求めた。(伊藤弘毅、泉野尚彦)

■2013年7月31日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20130730-OYT8T01484.htm

ー八ッ場「15年度完成」見直しー

 太田国土交通相は30日の閣議後の記者会見で、八ッ場ダム(長野原町)の2015年度完成を目指す現行の基本計画について、「事実上不可能。よく議論、精査して(完成が)何年ということを提起し直さないといけない」と述べ、見直す方針を明らかにした。ただ、見直しを終える時期や、完成時期の見通しについては言及しなかった。

 八ッ場ダムは工事用道路の整備など関連工事の手続きが始まったばかりで、本体工事着工のめどは立っていない。本体着工から完成までに7年が必要との見方もある。県関係者らは、現行の基本計画の期間内での完成は不可能とみて、国に対し「基本計画変更の手続きに早急に着手すべきだ」(大沢知事)と求めていた。

 ダムの基本計画は1986年に告示され、3回にわたって見直されてきた。3回目の2008年の見直しでは、完成時期が15年度に延長された。計画見直しは次で4回目となる。

 太田国交相の見直し表明について、地元は冷静に受け止めている。
 長野原町の高山欣也町長は「誰が見ても今の計画通りの完成は間に合わず、見直しはやむを得ない。遅れを取り戻すよう工期短縮などに努め、早期完成を望む」と語った。八ッ場ダム水没関係5地区連合対策委員会の篠原憲一事務局長は「いつまでもダラダラと工事が続くようでは困る。地元の声を新計画に反映してほしい」と訴えた。

 また太田国交相は記者会見で、基本計画で約4600億円とされている総事業費について「それほど増加するとは思っていないが、精査が必要だ」と述べた。

 総事業費は工事遅延による人件費の増加や、新たな地滑り対策工事などで、増額が避けられないとみられている。国交省が11年度に行った検証では、増額は約183億円と試算し、建設に反対する市民団体「八ッ場あしたの会」は、500億~600億円規模の増額が必要になるとの試算を公表している。

■2013年7月30日 産経新聞(共同通信配信)
 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130730/fnc13073014570015-n1.htm

 -太田国交相、八ツ場ダムは「2015年度完成は困難」ー

 太田昭宏国土交通相は30日の記者会見で、2015年度としている八ツ場ダム(群馬県)の完成時期に関して「事実上できない」と述べ、ずれ込む見通しを示した。
遅れに伴う事業費についても「それほど増加するとは思わないが精査が必要だ」とした。

 八ツ場ダムは、民主党政権で事業が凍結されたため本体工事に着手できておらず、基本計画で示された15年度完成は難しいとの見方が出ていた。