2013年5月20日

 去る5月17日、国交省関東地方整備局が八ッ場ダムの本体関連工事の入札を公告したのに合わせて、上毛新聞では「八ッ場のあした 動き出す本体工事」という連載が始まりました。
 一昨日は、一面トップを使い、川原湯地区の打越代替地に川原湯温泉の旅館第一号が再開というテーマで連載第一回がスタートしました。二日目からは社会面に移りましたが、やはり大きな扱いで、カラー写真が添えられています。
 上毛新聞はダム予定地を抱える地元の新聞だけに、ダム計画が動き出してから何度も連載記事が掲載されてきました。地元がダムを受け入れる以前、1960~70年代の記事は、ダムに反対する地元民の声が内容のほとんどを占めていたため、ダム事業に対して批判的な姿勢でしたが、地元がダム計画を受け入れた1980年代以降、ダム事業へのあからさまな批判は影を潜め、ダムと共存する未来に希望を見出そうとする住民の願いが報じられるようになりました。
 今回も、来年度にも着工するとされる本体工事によって2020年代には出現するとされるダム湖と共存する地域に未来を見出そうとする住民の声を取り上げています。実際には地元にも、行政主導の地域振興計画が”絵に描いた餅”に終わってしまうことを危惧する厳しい見方もあるのですが、そういった声はめったに表に出てきません。しかしそのような中でも、ダム事業による地域の犠牲は明らかで、記事では多くの住民が流出し、地元小学校の全児童数が14名に減少したことに触れています。
 実際に現地を訪れれば、大きな沢を大規模に埋め立てて造成されたクラインガルテン用地が観光農園としてきわめて厳しい立地条件にあり、対岸の川原湯の代替地と同様、観光による”活性化”がこの上なく難しいことを目の当たりにすることになります。

 川原畑地区のクラインガルテンについては、2年前にも上毛新聞が取り上げています。その時の記事とコメントをこちらに掲載していますので、ご参照ください。↓
 http://yamba-net.org/old/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=1526

◆2013年5月20日 上毛新聞社会面

 -八ッ場のあした 動き出す本体工事 にぎわい創出 滞在型農園で活性化ー

 きれいに区画整理された畑地が、吾妻川を見下ろす長野原町川原畑地区の代替地に広がる。来年秋に湖面1号橋でつながる対岸は再建が進む川原湯地区の温泉街。この畑には滞在型市民農園「クラインガルテン」が建設され、来年4月開園する。ダム問題で水没地区は人口流出が続く。事業は、都市から住民を呼び込み、交流人口を増やして活性化につなげることが期待されている。
 「地区のにぎわいを取り戻すだけでなく、吾妻郡全体の発展につなげたい」。川原畑地区八ッ場ダム対策委員会の野口貞夫委員長(69)はそう展望を描く。
 クラインガルテンは小面積の農地を都市住民らに貸し出し、野菜や花を栽培してもらう市民農園だ。簡易宿泊施設を備え、田舎暮らしや定年退職後の楽しみとして、別荘やセカンドハウス感覚で借りる人も多い。

 地区の人口はことし4月末時点で59人(20世帯)と、2002年4月末の226人(89世帯)から激減。町と住民は協議し、にぎわいを取り戻すには都市との交流による地域づくりが不可欠との結論に達した。
 町は本年度予算に関連経費約5億円を計上。約3800平方㍍の敷地に10区画を整備し、それぞれに畠と簡易宿泊施設を備える。共用の農機具倉庫や、あずまやを設けた眺望のいい交流スペースも設ける。
 課題は利用者と地元住民の関わり方だ。住民が農業を教えたり、苗を販売するといった交流が想定される。川原畑地区の農業、中島寛さん(66)は「農業を教えるぐらいならすぐに協力できる」と歓迎する。
 ただ、野口委員長は交流を根付かせ、発展させるには利用者に地区の祭や行事へも参加してほしいと考える。「クラインガルテンができたからといって、にぎわう訳ではない。地区の魅力を伝えられるよう関わっていく必要がある」

 町は町民の流出食い止めにも動いている。主に水没地区の子どもが通う長野原一小の児童は1991年度の100人から14人にまで減った。地域の核となる学校を維持するため、町は同校がある林地区の町営住宅(10戸)で、小学生以下の子どもを持つ世帯に家賃を減免する対策を09年から取り入れている。