思川とは利根川支流の渡良瀬川の支流です。思川開発事業の中核となっている南摩ダムは、この思川のさらに支流の南摩川に計画されています。
 思川開発事業の負担金を支払っているのはダム予定地を抱える栃木県だけではありません。以下の表で示されているように、東京都、埼玉県、千葉県、茨城県も、洪水調節、都市用水の供給などを理由に多額の費用を負担しています。(表作成:嶋津暉之、水問題研究家・元・東京都環境科学研究所研究員)

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 思川開発事業の歴史は、東京が「オリンピック渇水」に見舞われた昭和40年代に遡ります。実施計画調査に着手したのが1969度、完成予定は2024年度です。八ッ場ダムの実施計画調査が1967年度、完成予定が2019年度ですから、いずれも長期化しているダム事業の典型といえます。

 思川開発の主目的は「水源開発」ですが、ダムによって開発した水を使う水道用水供給事業が存在しないという根本的な問題を抱えていました。
 以下の報道によれば、新たな水道事業によって、栃木県南部の栃木市、下野市、壬生町の水道は、地下水源を大幅に減らし、表流水の割合を増やすことになります。地元では水質が悪化し、水道料金の値上がりにもつながる水道事業に対して、反対運動が進められています。署名活動も始まりました。

 下記の記事では、新たな水道事業によって地下水の利用を減らし、地盤沈下の問題を解消するとの事業者の説明が書かれています。しかし、地盤沈下はすでに沈静化しています。
 栃木県では、地下水の汲み上げを減らし、地盤沈下の問題を解消することを目的とした県南水道用水供給事業の構想がありました。しかし、農業用地下水の減少などにより、20年前から地盤沈下が沈静化し、水需要の増加がストップしたことにより、構想そのものが一度立ち消えになりました。
 それでも思川開発事業は止まらず、2010年から始まった国交省による思川開発の検証作業によって、栃木県の矛盾(思川開発の水源を使う水道事業が存在しないこと)が露呈してしまいました。これにより、栃木県の県南水道用水供給事業が再浮上してきました。

〈参考ページ〉「思川開発事業(南摩ダム)の抱える矛盾」 2012年7月27日
 http://yamba-net.org/old/modules/news/index.php?page=article&storyid=1689

◆2017年9月30日 日刊建設新聞
http://www.jcpress.co.jp/wp01/?p=19251
ー実現可能な施設計画抽出へ 県南3市町の水道水 南摩ダム再開で調査着手(県生活衛生課)ー

 南摩ダム建設に伴う思川開発事業の再開が決まり、県と栃木・下野・壬生の3市町は、水道施設の整備に向け調査や検討が始まった。7月に県南広域的水道整備事業検討部会が開かれ、施設計画等の基礎的な調査検討に着手。県生活衛生課によると、一級河川思川にある取水堰など既存施設の活用に向けた調査検討や施設配置を検討、今年度末を目途に取水候補地を選定し、実現可能な施設計画を抽出していくとしている。施設計画の抽出に伴う水道施設広域化調査検討業務は、日水コン(東京都新宿区)が担当している。

 南摩ダムに保有する県水は、毎秒0.403立方m。県は思川の取水位置を決め、取水施設や導水施設、浄水場などを整備し、参画の3市町に供給する計画。3市町は現在、全量を地下水で水道水を賄っており、24年度末にまとめた「栃木県南地域における水道水源確保に関する検討報告書」では、野木町を合わせ平成42年度を目標に表流水の比率を35%、日量3万5000立方mまで高めていくとしている。

 地下水の代替水源として表流水の比率を高めていくことは、県南地域における地盤沈下や地下水汚染が危惧されるためで、同報告書では水道水源を地下水のみに依存し続けることは望ましくないとしている。また、異常気象による渇水リスクが高まる中、県南地域には水道水源として水資源開発施設がないことに危機感を示し、水資源開発には相当な期間を必要とすることから、長期的な展望に立って、事前対策を講じていく必要性に言及した。

 今年度の調査では、水道水を供給するに当たって、取水先の思川から3市町のエリアに、活用可能な施設がどこにどのような形で存在しているか、既存施設の資料を収集し把握するとした。具体的には、取水・導水施設、浄水施設、配水施設等その他関連施設としている。

 調査では、資料による把握が可能な範囲内で、新設や既存設備の活用など複合型の可能性を検討し、考えられる組み合わせを整理する。また、組み合わせの中で実現可能な施設計画を3パターン程度抽出するとしている。

 実現可能な施設計画を抽出した上で、30年度以降は最適案を抽出。最適案による施設の概略設計をまとめ、概算事業費を試算するとした。

 思川開発事業は、30年度に導水路工、31年度には南摩ダム本体工を公告。導水路工は取水放流工を含め35年度まで、南摩ダムは基礎掘削や盛立工を経て36年度に試験湛水を行うとしており、計画では37年度にも表流水への転換が可能になる。