東京新聞に掲載された記事を転載します。

◆2014年1月14日 東京新聞特報面

 民主党政権時代に「無駄な公共事業の象徴」とされた八ッ場ダム(群馬県長野原町)を覚えているだろうか。2014年度の国の予算案には、本体工事費が5年ぶりに計上され、8日には入札契約手続きも始まった。本当に造っていいのか。(篠ケ瀬祐司)

 JR吾妻線の川原湯温泉駅に降りると、橋脚の高さ約七十㍍もの巨大な橋が眼前に迫ってくる。ダム完成時の湖面橋(八ッ場大橋)だ。山腹に造成された水没予定集落の代替地を結ぶ。
 民主党政権は〇九年に八ッ場ダムの本体工事の手続きを中断し、ダムの必要性や、建設根拠である利根川の最大流量(基本高水)計算方法などを検証した。その間も関連工事は続行。ダム建設も事業継続とされ、一一年十二月に当時の前田武志国土交通相(民主)が工事再開を決めた。
 一三年十一月に工期延長などの基本計画の変更が行われ、十二月には国交省関東地方整備局の事業評価監視委員会が「事業継続が妥当」とのお墨付きを与えた。本体工事の入札期限は八月。早ければ一四年中に工事が始まる。

地滑り対策費 追加せず
 建設に反対する市民たちは追及の声を強めている。
 問題点の一つが変更された基本計画のずさんさだ。関東地方整備局は一一年、地滑り対策や集落代替地の安全対策費として計百五十億円の追加費用が必要と試算した。これが基本計画変更で盛り込まれなかったのだ。
 関東地方整備局の担当者は、地滑り対策費などが追加されていない理由について「地質調査中だからだ。建設費用削減により(地滑り対策をしても)総事業費内で収まる可能性もある」と説明している。
 「八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会」の嶋津暉之代表は、着工ありきの国の姿勢を批判する。「地滑り対策費を足した総事業費を示さないのは、追加負担を嫌う関係都県の反発を避けるためではないか。建設予定地周辺は地盤が弱く、追加費用はさらにかかるはずだ」
 住民の安全対策にも疑問符が付く。ダム湖予定地域周辺には、二十カ所以上も地滑りの可能性が指摘されている。八ッ場ダム差し止め住民訴訟の群馬控訴審(東京高裁)では、原告側申請の地質専門家が、国が想定する盛り土による対策について「長期的には盛り土の効果は薄れるし、大規模な盛り土は排水性を低下させて、かえって危険だ」と主張した。

国名勝・吾妻渓谷の破壊
 最近では、カヤックで川下りを楽しむ人たちの間で、ダム建設による国名勝・吾妻渓谷の破壊を懸念する声も高まっている。
 カヤック上で撮った吾妻渓谷の映像をネット上に公開している坂本昭一さん(高崎市)は「吾妻渓谷の岩肌の美しさや躍動感は日本有数だ。この『生きている』川もダムができると死んでしまう。下流は岩がこけむし、水もにおい誰も訪れなくなる」と気をもむ。
 市民団体「八ッ場あしたの会」では「負の遺産になることが明らかなダム建設のために、自然環境と文化遺産を壊しては将来世代に顔向けできない」と本体工事中止を求める署名活動を始めた。予算審議が始まる一月末に一次集約する予定だ。

~~~転載終わり~~~

 記事で取り上げられている、カヤッカーの動画はこちらでご覧になれます。
http://yamba-net.org/?p=6266

 八ッ場ダム本体工事の中止を求めるネット署名はこちらのページで行えます。
 http://yamba-net.org/shomei/