2月12日に開かれた群馬県公共事業再評価委員会で県営・増田川ダムの中止が決まりました。
 群馬県では近年、水資源機構の戸倉ダム(利根郡片品村)県営倉渕ダム(高崎市)が中止され、増田川ダム(安中市)の中止は三例目となります。
 これら三つのダムは、八ッ場ダム同様、治水(洪水調節)と利水(水道用水の供給)を目的として立案されましたが、八ッ場ダムと違い、山奥のダムで故郷を追われる水没住民はいません。倉渕ダム、増田川ダムでは、2000年代に入ってから環境破壊や財政負担を問題視する市民らの反対運動がありましたが、八ッ場ダムほど多くの人々が反対したわけではありません。
 いずれも事業は進められており、倉渕ダムでは付け替え道路などが完成していますが、ダム建設に入る前に中止が決定されました。戸倉ダム、倉渕ダムの見直しは、八ッ場ダムの事業費が全国一の4,600億円(ダム建設事業のみの金額)に倍増された時期と重なることもあって、八ッ場ダムの負担を補うために止まったという見方もあります。
 増田川ダムについても、反対の声はあったものの、事業主体の群馬県みずからが見直しを進めたといえます。現在も他県では、長崎県の石木ダム、山形県の最上小国川ダムにみられるように、県が多くの反対を押し切って県営ダムを推進しようとしていますが、群馬県の場合は事業費が全国一の八ッ場ダムがあるために、利権を求める推進の力が他のダムにそれほど向かわないのかもしれません。

 いずれのダム事業も、中止の際には、八ッ場ダム事業では事業者(国交省関東地方整備局と関係都県)が問題として取り上げない社会状況の変化による水需要の減少や環境破壊などがクローズアップされます。これら群馬県内のダム事業を取り巻く状況を俯瞰するかぎり、現在のダム建設は治水、利水などの建設目的は大義名分にすぎず、真の目的は税金を事業関係者に配分することであるといえそうです。

◆2015年2月18日 朝日新聞群馬版
http://digital.asahi.com/articles/ASH2K5T45H2KUHNB00P.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASH2K5T45H2KUHNB00P
ー群馬)増田川ダム中止、県が正式決定ー

 県は17日、増田川ダム(安中市松井田町)事業の中止を正式に決定した。県公共事業再評価委員会が12日に中止を答申したことを受けたもので、県は今後、国土交通省の了承を得たうえで、増田川ダムに代わる利水、治水の対策をそれぞれ検討する。

 増田川ダムの事業は、流域の水源を確保する利水と洪水対策の治水を目的に、1996年度から進められていた。国交省の求めに応じて進めた再検証では、利水、治水とも増田川ダム以外の方法がコスト面などで優れていることが示され、中止の判断材料になった。

 関係する安中、高崎両市も中止を受け入れ、治水対応を定める「河川整備計画」の早期策定を県に要請している。安中市は引き続き工場誘致のための利水が必要だとして、日量5千トンの水確保を求めている。

 県は今後、この再検証の結果を示した報告書を国交省に提出し、是非の判断を待ってダムに代わる対策に取りかかる。ただ、河川整備計画の策定作業には未着手で、再検証の過程で案として示した貯水池による水確保にも用地選定で課題がある。県河川課は「広く検討し、次の一歩を早く進めたい」としている。

 県建設企画課によると、公共事業再評価委は、これまでに県と市町村の事業計573件を対象として審議を進め、県8件、市町村4件の事業中止を答申している。(井上怜)

◆2015年2月13日 東京新聞群馬版
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20150213/CK2015021302000188.html
ー県営増田川ダム計画 投入事業費29億円ー

有識者らによる県の公共事業再評価委員会が十二日、県庁で開かれた。県は県営増田川ダム(安中市松井田町)の計画を白紙にすることを提案し、委員の了承を得て、建設中止が正式に決まった。ただ、県の説明資料で、一九九一年度の計画着手から既に投資した事業費が二十九億三千万円と分かり、出席した八人の委員から白紙決定の遅れを指摘する厳しい声が上がった。 (菅原洋)
 「結果的に数十億円という多額の投資になった。もっと早く計画を白紙にしておけば、こんなに必要なかったのではないか」。前橋工科大の湯沢昭教授(都市計画)が指摘した。
 計画では当初、安中市が求める利水量は一日二万四千立方メートルだったが、最終的には同五千立方メートルにまで減り、白紙への大きな要因となった。
 県は今後、白紙の決定を国に報告し、市の利水量に対応するため、代替案として約十五億円かかる貯水池の建設などを検討するが、湯沢教授は「市の利水需要が落ちた理由が分からない。水の需要に対する当初の予測が過大だったのではないか。現在の市の利水量も本当に必要なのか」とただした。
 他の委員からも「どうして計画の検証にこんなに時間がかかったのか。市は工業用水が必要と言うが、工業団地は必要ないのでは」との意見が出た。
 これに対し、安中市の担当者は「事業の開始後に湧水が出て、利用できるようになった。その後の人口減少も加わり、利水量が減った」と説明。茂木英子市長も「企業から工業用地への進出の打診があり、水は将来の地域発展のために必要」と理解を求めた。
 県によると、一月十日に開いた地元住民への説明会でも「今までにダム事業にいくら使ったのか」などの質問が出た。
 また、県が昨年末から一月末まで計画の白紙についてパブリックコメント(意見公募)をした結果、寄せられた七件全てで白紙に賛成していたが、市が求める利水量を疑問視する意見が多かった。
 計画の白紙をめぐっては、地元住民による「増田川ダムを考える会」も市の利水量を疑問視し、「白紙の効果を損なう」として貯水池の建設に反対する質問書を県に提出している。
 計画の白紙により、ダムの建設案よりも、代替案の方が、治水と利水の両面で計三百億円以上の事業費が削減される。

◆2015年2月6日 毎日新聞群馬版
 http://mainichi.jp/area/gunma/news/20150206ddlk10010191000c.html
 ー県営増田川ダム:建設中止原案、了承 安中、高崎両市が検討会議で /群馬ー

 県営増田川ダム(安中市)建設計画の検討会議が5日、県庁で開かれ、安中市と高崎市が県のダム建設中止とする原案を了承した。今後、県公共事業再評価委員会を経て県が建設中止を国土交通省に報告する。
 増田川ダムは治水と利水を目的に1996年度に事業化され、当初計画では総事業費378億円で2013年度完成予定だった。

 安中市は日量2万4000トン、富岡市は2000トンが必要としていた。しかし、水需要の減少により09年に富岡市が「別の方法でまかなえる」として事業からの撤退を表明。09年12月には国交省が八ッ場ダムとともに再検証の対象にしていた。

 5日の検討会議で安中市と高崎市は、治水対策として碓氷川圏域河川整備計画の早期策定や、安中市の水源開発への県の協力を改めて求めた。【角田直哉】

◆2015年1月20日 東京新聞群馬版
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20150120/CK2015012002000180.html
ー県営増田川ダム計画 白紙に賛同相次ぐー
 
 県が計画を白紙にした安中市松井田町の県営増田川ダムをテーマに、河川を改修して貯水池を設ける代替案に対して有識者の意見を聞く会合が十九日、県庁で開かれた。有識者からは利水や環境などの面から計画の白紙に賛同する意見が相次いだ。
 会合はこの日開いた県河川整備計画審査会の終了後にあり、出席した各分野の有識者十一人に意見を聞いた。
 群馬高専の青井透特命教授は「ダムの計画が続いてきたのは、安中市が一日五千立方メートルの利水量を求めたからという。しかし、人口減少社会の中でそれほどの水は本当に必要なのか。工業用水で必要としても、今の企業は水を有効に活用する技術を持っている」と指摘した。
 県漁業協同組合連合会の吉沢和具(かずとも)さんは「増田川は流量が少なく、ダムを造ると魚がダメージを受けると危惧していた」と語った。
 野鳥研究者の卯木(うき)達朗さんは「増田川一帯には(絶滅危惧種の)クマタカなど貴重な生物がいるはずだ」と話した。
 一方、日本大の岡本雅美・元教授は「各地には貯水池に水がたまらなかった失敗事例がいくつかある」とただし、県河川課は「コンクリートなどを使って整備し、水漏れしないようにしたい」と答えた。
 県は三月までをめどに、流域の安中、高崎両市と代替案などを話し合う「検討の場」を開き、今回の意見を報告する。 (菅原洋)