8月に国交省が公表した八ッ場ダム基本計画の五度目の変更案(事業費の再増額)について、ダム予定地を抱える群馬県の大沢知事は昨日13日、県議会議会運営委員会に対して増額に同意する議案を20日開会の県議会に提示することを正式に表明しました。今回の計画変更への同意表明は、茨城県に続いて群馬県が二県目です。
 一方、群馬県では県債残高が本年度末に過去最高になるとの見通しが報道されています。

 1960~70年代、ダム計画に猛反発した川原湯温泉を核とした地元の反対期成同盟に対して、建設省の手先となって切り崩しを行ったのは、群馬県と自民党群馬県連でした。孤立した地元の反対運動は力を失い、1985年には長野原町が群馬県が提示した生活再建案を条件に、実質的にダムを受け入れました。それ以来、ダム事業による地元民の「生活再建」について、責任ある立場の群馬県としては、再度の増額といっても、今さら拒否はできないということなのでしょう。
 大沢知事は、「ダム周辺の住民の生活再建を優先するには、増額を受け入れてでも早期完成を目指すべきだと判断した」と述べたと報道されています。しかし、「増額」を受け入れたからと言って、ダムが早期に完成するわけではありません。今回の計画変更案にはあまりにも多くの問題があり、更なる増額と工期延長は必至の情勢です。

 9月12日の定例記者会見「平成28年度9月補正予算案知事記者会見要旨」より、八ッ場ダム関連個所
 http://www.pref.gunma.jp/chiji/z9000151.html

 ○八ッ場ダム建設基本計画の変更について

(記者)
 今議会ということでお尋ねします。国が八ッ場ダムの人件費の高騰などを理由にですね、全体予算を増額して、流域の自治体一都五県にも負担増を求めるような形になっていて、先日も、議会側にご説明があったと思うのですが、こちらについての群馬県の姿勢がどうなったか、もし容認であれば、その議案の提出というのは、今議会前半なのか、後半なのか、いつの時点での議案提出を考えているのか、知事にお伺いしたいと思います。

(知事)
 まず、明日、議会運営委員会で議案を内示したいと思っております。群馬県としても、これ以上の工事費の増額は認めないという思いで取り組んできました。それでこの度、720億という大きな額の工事費の増額が示されたわけであります。群馬県としては、他の(都)県にはない、一つの大きな問題があるわけであります。治水、利水の面だけであれば、東京、埼玉、千葉、茨城、栃木と同じ状況でありますけど、群馬県はダムの所在地でありまして、今まで、将来に不安をもった住民の方々がいるわけであり、一日も早く生活再建をすることは、群馬県としてやらなければならないことだと思っておりまして、しっかりと検討して意見を出していきたいと思っています。 

(記者)
 確認ですが、これ以上の増額は認めないという基本的なスタンスは引き継ぎつつ、住民の生活再建というものを迅速に進めていかなければいけないという姿勢の中でですね、今回の増額負担を求める動きについては、容認するという姿勢で議会にその旨の議案を明日内示したいということでよろしいですか。

(知事)
 概ね…。明日、内示します。

 
 関連記事を転載します。

◆2016年9月14日 朝日新聞群馬版
 http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20160914100580001.html
ー八ツ場ダム費用 知事が増額容認ー

 大沢正明知事は13日、国土交通省が示した八ツ場ダム建設の事業費増額について「熟慮を重ねた結果、やむを得ないとの判断に至った」とし、同意する意向を議会運営委員会で表明した。事業費は720億円の増額で総額5320億円となる。県負担分は治水、利水合わせて33億8千万円増の249億4千万円。

 議案では、建設コストの徹底した縮減や関係都県との情報共有、ダムの早期完成と生活再建事業の早期完了を求める意見書を付けて同意するとしている。

 議運では9月定例会の会期を9月20日から12月15日までの87日間とすることなどを決めた。

◆2016年9月13日 上毛新聞
ー八ッ場増額を容認 大沢知事 きょう議運に内示ー

 国の八ッ場ダム(長野原町)の総事業費増額方針を受け、大沢正明知事は12日の記者会見で、増額を容認する関連議案を県議会第3回定例会に提出するため、13日の同議会運営委員会に内示する考えを表明した。
 大沢知事は「不安を持った住民がいる。一日も早く生活再建を、県としてもやっていく」と述べた。早期完成を求め、さらなる増額は容認できないなどとする意見を付け、国の計画変更に同意するとみられる。

 国交省は8月、労務単価の上昇などを理由にダム事業費を約720億円増額し、総額約5320億円とする計画変更を公表した。本県の負担分は約33億8千万円増え、約249億4千万円となる見込み。

◆2016年9月13日 東京新聞群馬版
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201609/CK2016091302000174.html
ー県債残高、本年度末に1兆2017億円 過去最高の見通しー

 本年度末の県債残高が九月補正予算案段階で、約一兆二千十七億円と過去最高に膨らむ見通しであることが十二日、分かった。県民一人当たり約六十万円の借金を抱えている計算となる。県が同日公表した九月補正予算案の総額は約百三十億円で、二十日開会する県議会定例会に提案する。

 県によると、昨年度末の県債残高は約一兆千九百六十九億円だった。
 県債残高が膨らむのは、財政難の国が地方交付税を支給できず、後に充当する「臨時財政対策債」(臨財債)の残高が増えるのが主な要因。国は臨財債の返済費用を捻出するため、新たに借金を増やす「自転車操業」の状態にあり、結局は国民の借金として県民に負担が回される。

 約一兆二千十七億円の内訳は、臨財債が約五千二百五十五億円で、臨財債以外の建設事業などに充てる県債が約六千七百六十二億円。本年度末には、臨財債以外の残高は前年度末よりは減る見通し。しかし、九月補正予算案では、単年度の県債発行額は約五十一億円で、二〇〇〇年度以降では最高となる。
 単年度の県債発行額が増えるのは、九月補正予算案で公共事業費を約九十八億八千万円計上し、一九九九年度以降では最高になるのが主な要因だ。公共事業費のうち約八十億円は道路事業に充てる。

 公共事業には、五月に島根県で女子大生が死亡した落石事故を受け、県内の約二十カ所で防止対策をする費用約一億五千万円も含んでいる。
 一方、県は県議会定例会に、国土交通省が八ッ場ダム(長野原町)建設事業費を従来の約四千六百億円から約五千三百二十億円に増額する基本計画の変更を公表したのを受け、大沢正明知事の意見として議会に了承などを求める議案を提案する予定。 (菅原洋)

◆◆2016年9月10日 毎日新聞群馬版
http://mainichi.jp/articles/20160910/ddl/k10/010/117000c
ー八ッ場ダム 計画変更案受け入れへ 知事「増額で早期完成を」 /群馬ー

 長野原町に建設中の八ッ場(やんば)ダムの建設事業費を巡り、国土交通省が約720億円を増額する計画変更案を提示したことに対し、大沢正明知事は9日、変更案を受け入れる方針を明らかにした。自民党県議団への説明の後、報道陣に「ダム周辺の住民の生活再建を優先するには、増額を受け入れてでも早期完成を目指すべきだと判断した」と述べた。20日開会の県議会第3回定例会で同意案を提出する予定。変更は5度目になる。

 県の負担割合は4・69%で、増額によって新たに発生する県負担分は約33億8000万円。事業費全体では約249億円に上る。

 事業費を巡っては、国交省が8月12日、約4600億円から約5320億円へと増額する計画変更案を発表した。資材や人件費の高騰に加え、地滑り対策工事の増加などが盛り込まれた。

 変更には、事業費の一部を負担する1都5県(東京、群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉)の議決や知事の意見を聞く必要があり、各都県の対応が注目されていた。県は国交省に対し、増額分の内訳の説明を求め、今後さらなる増額には応じられないとする旨を伝えた上で、変更案を受け入れる予定。すでに茨城県は同意案を議会に提出している。

 八ッ場ダムの事業費は、1986年の当初の基本計画では約2110億円だった。変更案が決まれば、総事業費は当初の約2・5倍に膨らむ。【鈴木敦子】

*群馬県の負担額という場合は、治水は3割負担の県分のみですが、利水は国庫補助金を含めた額となります。また、藤岡市水道は群馬県とは別に八ッ場ダム建設事業費の一部を負担しています。藤岡市水道の負担額は、現計画では16億円(国費を含めると23億円)です。

 現在の八ッ場ダム基本計画における国と各都県の負担額の表を以下のページに掲載しています。
 http://yamba-net.org/problem/meisou/futan/