2013年2月2日   

 当会では、八ッ場ダム事業の見直しには、ダム中止後の地元民の生活再建を支援する法整備が必要であると訴えてきました。けれどもこのたび政府は、ダム中止後の生活再建支援法案を国会に再提出しない方針を固めたということです。 
 公共事業の推進を前面に掲げる安倍政権によるこの方針は、予想されたことではありますが、まことに残念です。  

 民主党政権でも、ダム事業の見直しに道を開く法整備に対しては、国交省が消極的でした。しかし、民主党内の国会議員らが「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」を結成し、2011年に生活再建支援法の原案を作りました。こうした動きに押され、2011年12月、野田政権は八ッ場ダム事業の継続を表明したものの、それと同時にダム中止後の法整備に取り組むこととなり、2012年、議連による法案をもとに国交省が作業を開始し、3月に国会に法案が提出されました。しかしこの法案は、棚ざらしにされた挙句、昨年の衆議院解散により廃案とされてしまいました。

 また、昨年12月の総選挙では、ダム中止後の法案作りに熱心に取り組んだ民主党の議連会長の川内博史氏(鹿児島1区)、初鹿明博氏(東京16区)、宮崎岳志氏(群馬1区)らが落選し、国会内でこの法案の実現を目指す勢力は激減しました。 
 自民党は昨年12月の衆院選の際、当会が実施した公開アンケートに対して、新たにダム中止後の法整備に取り組むと回答しましたが、国交省の意向もあってか、今回の決定となりました。  

 八ッ場ダムをはじめとして、高度成長期に立案されたダム計画により、長年多大な犠牲を強いられてきたダム予定地域では、地域経済も生活再建も、ダム事業による地域振興事業や補償制度に依存しているのが実状です。わが国ではダム事業を推進するための仕組みは法律で保障されているのですが、ダム事業を中止した時、地元を対象とした法律がありません。このため、ダム事業が中止になった新潟県、湯沢町の清津川ダム予定地では、ダム中止後も地域の衰退に歯止めがかからないなど、各地で厳しい状況が見られます。ダム事業は一旦始まると、どのような障害があろうとも、社会状況が変わろうとも、中止されることが想定されていません。ダムという迷惑施設を受け入れざるをえなくなった地域は、いわば退路を断った形で、ダム事業と運命を共にすることになります。

 八ッ場ダム予定地でダム事業の推進が掲げられるのも、こうした背景があるからです。客観的に見れば、八ッ場ダム事業は地域を衰退させる一方で、ダム湖観光による地域振興という国と群馬県の青写真も、実現の可能性はほとんどありません。それでも、ダム予定地域に残る人々の多くは、ダムを前提に生活設計を立てているため、ダム事業による地域振興に望みを託さざるをえません。

 民主党政権で国会に提出された法案は、不十分な点は多少あるにせよ、ダム中止後の地元の生活再建を図るために画期的な法案でした。それだけに、今回の政府の決定は、河川行政の更なる後退を印象づけるものです。

◆2013年2月1日 共同通信(河北新報、福井新聞、四国新聞、中日新聞などが掲載)
http://www.47news.jp/CN/201302/CN2013020101002123.html  

 ーダム中止時の生活再建法案見送り  自民党の公共事業推進でー  

 政府は1日、ダム建設が中止となった場合に大きな影響を受ける水没予定地の生活再建を支援する法案を、今国会に再提出しない方針を固めた。大型公共事業に否定的だった民主党政権が昨年の通常国会に提出し、廃案となっていた。 現政権の公共事業推進の方向性に合わないと判断したとみられる。  

 ダムによらない洪水対策を求める市民団体などからは「無駄なダム事業が続くことになる」と批判の声が上がりそうだ。  

 ダム計画の水没予定地では、いずれ住民が移転するため道路などの公共施設が老朽化しても放置される。計画が中止されれば、移転後の地域振興策もストップ、住民は計画中止を受け入れにくくなる。  

 —転載終わり—  

★民主党政権によるダム中止後の法案について、こちらに解説と資料を掲載しています。ご参照ください。  
http://yamba-net.org/modules/saisei/index.php?content_id=7