9月8日に行われる茨城県知事選を前に、八ッ場ダムや霞ヶ浦などの問題に取り組む「茨城県の水問題を考える市民連絡会」が候補者に対して実施したアンケート結果が届きました。
 全文を転載します。

     茨城県知事選アンケート結果

橋本昌候補(現職)回答せず。「公職選挙法の利益誘導に抵触する恐れがあるから」?
 8月13日、茨城県の水問題を考える市民連絡会は、茨城県知事選の立候補予定者(以下候補)である橋本まさる(現職・無所属)、田中しげひろ(明るい民主県政をつくる会)両氏にアンケートを実施しました。 目的は以下の項目に対する両候補の所信を知ることにありました。

① 八ッ場ダム基本計画の変更(工期延長)方針が示され、9月県議会に諮られること。
② 霞ヶ浦導水事業、思川開発が検証検討の場にかけられていること。
③ 霞ヶ浦の浄化と再生ために、常陸川水門の柔軟運用に踏み切れるか否か。
④ 水も土も放射能に汚染された茨城で、県内の東海第2原発を廃炉にするか再稼働するか。

 どれもが、水問題に取り組む市民ならずとも見過ごせない問題です。両候補の考えを確認し、投票の参考にするためのものでした。
 締め切りの翌日にあたる8月21日、回答の無い橋本候補の事務所に問合せたところ「マスコミ以外の団体等からのアンケートは、公職選挙法の利益誘導にあたる恐れがあるため回答は控えたい」との回答がありました。早速、茨城県選挙委員会に問合せたところ、選管は問合せがあったことを認めた上で「総務省の通達に、アンケートを実施する団体に有利にはたらくものは利益誘導にあたる」との項があるとのこと。利益を受けるのは誰か、我々か? アンケート自体が法に触れるのか? と問い直したところ、「そうではない」と。つまるところ、回答者が不利益になると思われるアンケートには答える必要はないということか? と重ねて問うと「そうだ」。我々は「無回答も含め『回答』とする」としている、回答を強要しているわけではない。これまでも我々のアンケートに無回答の候補者はあった。要するに自己の判断でいいということか。と念を押すと「その通りだ」との返答がありました。
※橋本候補の事務所、茨城選管とのやりとりは電話です。出来る限りありのままを記しました。

田中重博候補、八ッ場ダム、霞ヶ浦導水は中止を言明。 
アンケート回答のすべてを紹介します。

質問1 八ッ場ダムについてお訊ねします。
(1)八ッ場ダムの基本計画は当初2000年完成、事業費2110億円としていました。その後2001年に完成年度を2010年に、2004年には事業費を4600億円に、2008年には完成年度を2015年に、それぞれ基本計画を変更してきました。そして今また完成年度を2019年とする4回目の変更が各都県に諮られています。

事業計画の変更にいかに対処されますか?
A八ッ場ダムは必要だから工期を延長してもつくるべきだ。
○B八ッ場ダムは最早不用だから、工期延長の拒否はもちろん今すぐに中止すべきだ。
 ご意見:茨城県は水道用保有水源として125万トンを確保しています。09年度の利用実績は101万トンです。これに水道用水に転用可能な工業用水(57万トン)を加えれば、すでに大量の余剰水を抱えています。人口と水需要が減少する今後の趨勢を考えれば八ッ場ダムその他の水源開発はまったく必要ありません。

(2)今回の事業計画変更では事業費の増額はありません。しかし2001年の工期延長の後、追うように2004年には事業費の増額がありました。また、これまで国土交通省はコスト削減分の21.7億円を差し引きながら182.8億円の増額が必要としてきました。

事業費の増額についていかにお考えになりますか?
A今後事業費の増額はないと思う。
○B事業費の増額は避けられない。その意味でも今回の基本計画の変更は無責任だ。
 ご意見:質問1の(1)と同じ。

質問2 水需給計画・水源開発についてお訊ねします。
茨城県が参画する水源開発の内、湯西川ダムは完成され、八ッ場ダムは本体工事に入ろうとし、霞ヶ浦導水と思川開発は検証検討の場に上げられています。一方で平成24年度茨城県総合計画は、2020年度県人口を前計画より12万人少ない285万人とし、2035年には245~255万人に減少するとしています。

人口の急激な減少を前にして水需要・水源開発をどのようにお考えですか? 
A人口は急減しても水需要は減らない。だから全ての水源開発は推進する。
○B将来に亘って水需要は減り続ける。だから全ての水源開発から撤退する。
 ご意見:質問1の(1)と同じ

質問3 霞ヶ浦導水事業について伺います。
霞ヶ浦導水事業は、新規都市用水開発、既得用水の補完、水質浄化の3つの目的のために行われます。最近の調査から、これらの目的が有効に機能しないことが明らかになってきました。そこで伺います。
A霞ヶ浦導水事業を継続実施する。 
○B霞ヶ浦導水事業を中止する。
ご意見:質問1の(1)と同じ

質問4 霞ヶ浦の浄化と再生についてお訊ねします。
1978年の常陸川水門の完成・閉鎖により霞ヶ浦は海との繋がりが断たれ、水質の悪化による生態系の破壊は覆うべくもありません。ことにニホンウナギの激減は、環境省をして絶滅危惧種に指定する方向にあると聞いています。霞ヶ浦の再生は海との繋がりを取り戻すことにつきるかと思います。そのため私たちは常陸川水門の柔軟運用を求めてきました。
 いかがお考えでしょう?
○A 常陸川水門を柔軟に運用し、霞ヶ浦の再生による漁業・観光の振興を図る。
B 常陸川水門の運用は現状のまま見直す必要はない。
ご意見:これまでの対策は「水質改善」対策が中心でした。流入負荷対策は引き続き強化するにしても、湖内対策…植生帯の再生、生態系の再生などに格段の取組みが必要です。常陸川水門の柔軟運用は画期的な方策であると考えます。

質問5 水問題の視点から東海第2原発についてお訊ねします。
福島原発の事故による霞ヶ浦の放射能汚染は解決の糸口すら見つかっていません。一方事故の大本である福島原発は汚染水の流出などが続き収束とはほど遠い状況にあります。過酷事故は免れたとはいえ県内には東海原発を抱えています。

 お訊ねします。東海第2原発は廃炉すべきですか?
○A 廃炉にすべきだ。   
B 安全基準を満たした上で再稼働すべきだ。
 ご意見:原発を推進してきた自公政権になりましたが、「再稼働反対」「脱原発」の国民世論は揺るがぬ多数派です。茨城から「原発ゼロ」を発信していきましょう。

アンケートを終えて
 この夏の参院選のアンケートの結果から、保守系候補の回答は期待できないものと予想はしていたものの、橋本昌候補からの無回答は残念だった。当連絡会には八ッ場ダムをストップさせる茨城の会、霞ヶ浦導水事業を考える県民会議、アサザ基金が参加しているが、八ッ場ダムは基本計画の変更に対し9月県議会を経て回答する運びにあり、霞ヶ浦導水事業は検証検討の場にあがっている。霞ヶ浦の浄化・再生問題ではアサザ基金がかねてより常陸川水門の柔軟運用を提案し多くの賛同を得ている。多分立場を異にしているものと思うが、それだけになお所信を明らかにして欲しかった。むしろ説得する機会として利用して欲しかった。
田中重博候補は、どの問いかけにも明快に答えてくれた。意見の欄にはこちらの想像以上に水問題への造詣の深さを伺わせるものがあった。
私たちは、今回のアンケート結果に対して論評はしない。ただ回答をそのまま公表する。判断は見る人に任せたい。願いはある。このアンケートから何を得るにせよ投票に行って欲しい。

2013年8月23日
茨城県の水問題を考える市民連絡会
代表:古沢喜幸 事務局長:神原禮二
NPOアサザ基金、霞ヶ浦導水事業を考える県民会議、利根川の水と自然を守る取手連絡会、新しいつくばを創る市民の会、水道問題を考える土浦市民の会、八ッ場ダムをストップさせる茨城の会、農民運動茨城県連合会、つくばほっとネット(順不同)