熊本県が2014年に完成させた県営・路木ダムをめぐる裁判。
 一審の熊本地裁はダム建設を違法としましたが、昨日25日、福岡高裁は住民側逆転敗訴の判決。判決理由で裁判長は、「既にダムは完成し、支出差し止め請求には訴えの利益がない」と指摘しました。熊本地裁は、路木ダム計画の根拠となっている1982年豪雨の浸水被害は捏造と認定しましたが、高裁判決は、客観的資料がなくても洪水被害が存在しないとは言えないと判断しました。
 ダム建設の根拠がなくとも、すでにダムはできてしまっているのだからあきらめろ、と言っているようなものです。これでは司法の役割を放棄しているも同然です。

 路木ダムは「駆け込み本体工事」が行われたダムです。
 2009年、民主党政権が全国のダム事業見直しを掲げて発足した際、国交省は多くの国民が期待したように全国のダム事業を一旦止めることはせず、「各ダムの事業段階から先に進めない」というルールを作りました。ダム事業は調査→関連工事→本体工事と段階を踏んで進みます。路木ダムは当時、関連工事を行っていましたが、熊本県は駆け込みで本体工事に着手してしまいました。「駆け込み本体工事」によって完成したダムは、他にも「香川県・小豆島の内海ダム、長野県の浅川ダムなどがあります。

◆2016年4月26日 毎日新聞熊本版
 http://mainichi.jp/articles/20160426/ddl/k43/040/359000c
 ー敗訴にも闘志新た 原告団長の植村さん「再評価委の矛盾追及」 福岡高裁判決 /熊本ー
 
1審が認めた治水面での違法性も否定する住民側全面敗訴となった25日の路木ダム訴訟福岡高裁判決。原告団長の植村振作さん(79)は「はははは、完敗です。でもこのままでは引き下がれん」と闘志を新たにする。

 「もうできてしまったから、市民運動としては完全な負けですもんね。なのに闘い続けるのは、こんな税金の無駄遣いを黙認するわけにいかんからです」
高裁判決の半月前、現地を案内してくれた植村さんは運用中の路木ダムの前で語った。

 1936年本渡市生まれ。九大理学部卒業後、30年以上も大阪大の高分子物理学講座で研究しながら、農薬やゴミ焼却時に発生するダイオキシン問題などに警鐘を鳴らし、学者として市民運動を支え続けた。今も「農薬空中散布反対全国ネットワーク」の代表を務める。

 「したいことしとったけん、ずっと助手。阪大を追いだそうと、ある国立大の教授にと言われたこともあるけど、断ったよ。助手のままでいたかったのに、最後の最後に外堀埋められて助教授にされてしまって」と笑う。

 そんな闘士が定年退職後、帰郷して出合ったのが路木ダム問題。調べると、起きてもいない浸水被害を洪水調節の必要性の根拠とするなど、おかしなことばかり。そうした事実を積み上げて引き出した1審の違法判決を2審はひっくり返した。

 「このままだと、行政が選んだ委員が行政が用意した資料のみに基づいて検討する再評価委員会に妥当と言わせれば、住民は手も足もでなくなる。その矛盾を追及し、訴えていきます」【福岡賢正】

◆2016年4月26日 朝日新聞
 http://www.asahi.com/articles/ASJ4T56B1J4TTIPE02Y.html
 -路木ダム訴訟、住民側が逆転敗訴 福岡高裁判決ー

 熊本県天草市の県営路木ダム建設に公金を支出したのは違法だとして、住民らが蒲島郁夫知事に約20億円の返還などを求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁(大工強裁判長)は25日、公金支出は違法だと認めた一審・熊本地裁判決の県が敗訴した部分を取り消し、住民側の請求を退ける判決を言い渡した。
ダムの整備計画に瑕疵(かし)は認められないと判断した。

 2014年2月の熊本地裁判決は、県側の「1982年の豪雨で浸水被害があり、ダムが必要だった」とする主張を、この洪水で浸水被害はなかったとして退けるなど、ダム建設は治水面では違法と認定し、公金支出の差し止めを命じた。
 一方、蒲島知事が整備計画の違法性を認識するのは困難だったとして、事業費の返還請求は退けた。

 高裁判決は、客観的資料がなくても、82年の洪水による浸水被害が存在しないとは言えないとして、一審判決を一部取り消した。

 原告団代表の植村振作さんは「強い憤りを感じる。税金の無駄遣いをなくすために、引き続き行政の責任をただすつもりだ」とのコメントを発表し、上告する方向で検討する意向を明らかにした。
 蒲島知事は「私どもの主張が認められたと受け止めている」とコメントを出した。(張守男、渡辺松雄)

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