国土交通省関東地方整備局は今日、「八ッ場ダムの建設に関する基本計画」の変更の手続きを開始することを発表しました。
 今回の変更案は工期を平成27(2015)年度から31(2019)年度に4年間延長するというものです。

 八ッ場ダム事業ではこれまでにダム計画の変更が三度行われており、そのうち工期の延長が二回、事業費の増額が一回行われました。今回の工期延長が決まれば、当初の完成予定年度2000年度から実に19年遅れということになりますが、19年度に八ッ場ダムが完成するかどうかも不透明です。
 事業費増額は2004年に当初の2110億円から4600億円に倍増されました。八ッ場ダムを実際には必要としてない関係都県は、工期の延長より事業費の増額に拒否反応を示す傾向があります。関係都県民が税金の無駄遣いと批判するからです。八ッ場ダム事業では事業費の増額も必至な情勢ですが、今回は簡単に関係都県の同意が得られそうもない事業費の増額は出さず、工期の延長のみを提示しました。いずれ、5回目の計画変更が必要になるでしょう。

 関東地方整備局の発表は、同局のサイトで公表されています。
 http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000099.html

 国土交通省関東地方整備局では、洪水被害の軽減や都市用水の確保等のために、八ッ場ダム建設事業を進めております。
 今般、八ッ場ダム建設事業について、特定多目的ダム法第4条の基本計画を変更することとし、本日、同第4条第4項に基づき、関係都県知事及び関係利水者の意見をお聴きする手続を開始します。

 ○工期:平成27年度→平成31年度
 ○事業費:約4,600億円→変更なし
 ○八ッ場ダムの検証における洪水調節方式の見直しを反映します。

===転載終わり===

 地元では工期延長はダム事業による「生活再建」の遅れを意味しますので、事業費増額より反発があります。今回、関東地方整備局は工期延長を民主党政権によるダム中止のためと説明し、多くのマスコミがこの説明をそのまま流しているようです。
 けれども、民主党政権下で中止されたのは未着手の本体工事だけでした。事業費の9割以上を占めるダム関連事業は一度も止まることなく続けられてきたのです。民主党政権は3年余続きましたので、八ッ場ダム事業の実態を知らなければ、4年の工期延長は民主党のせいという関東地方整備局の説明に騙されてしまうかもしれませんが、これは欺瞞に満ちた責任転嫁と言わざるをえません。
 実際、本体工事の予定地には、今もJR吾妻線が走っており、このままでは本格的な本体工事は行えません。鉄道の付け替えは2010年度に完了する筈で、民主党政権下でも付け替え工事は進められてきましたが、今も完了していません。来年度、鉄道の付け替えが完了するとすれば、2010年度から4年遅れということになります。

 いずれにしても、事業の実態からすれば、4年の工期延長も決して余裕のある年数ではありません。関東地方整備局は来年度には本体工事に着手する予定ですが、そのためには今年度中に工期延長手続きを済ませなければなりません。逆算すると、関係都県の9月議会、遅くとも年明けの議会で工期延長が承認される必要があります。
 現在の工期は2015年度までしかなく、本体工事を2年間で終わらせるのは不可能です。本体工事の工程を示すことができなければ、財務省は本体工事に予算を付けられません。今回の工期延長の発表は、こうした関東地方整備局の切迫した事情から出されたものです。
 
 実質的な本体工事の一部を「本体関連工事」と称して始めようとしているのも、こうした事情によるものです。
 これに関して、当会で入札公告の中止を要請した件については、こちらに情報を載せています。
 http://yamba-net.org/?p=5371

 事業の遅延、事業費の増額は、いずれも八ッ場ダム事業の行き詰まりを示すものです。国交省関東地方整備局は今回も、ダム事業の実態を知られないよう、計画変更手続きを行おうとしていますが、行き詰まりはいずれは誰の目にも明らかになるでしょう。更なる計画変更が必要であることについては、以下に解説を載せています。
 事業費の増額 http://yamba-net.org/problem/meisou/zougaku/
 工期の延長 http://yamba-net.org/problem/meisou/kouki/

 関連記事を転載します。今回の計画変更について、誤った報道が多く流れる中、以下の記事は事実を正確に伝えています。
 
 ■2013年8月6日 時事通信
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130806-00000118-jij-pol

 -八ツ場ダム、完成は19年度=4年延期、基本計画を変更―国交省ー

 国土交通省関東地方整備局は6日、八ツ場ダム(群馬県長野原町)建設に関する基本計画を変更し、完成時期を2015年度から19年度に4年延期すると発表した。1986年に告示された基本計画の変更は今回が4回目。事業費約4600億円は現時点で変更しない。
 八ツ場ダムをめぐっては、民主党政権が事業を一時凍結したが、地元自治体の要請などを受けて2011年末に建設継続に転換。安倍政権もこの方針を踏襲している。ただ、現在は、工事用道路造成など関連工事の手続きを進めている段階で本体建設着手には至っておらず、地元などから完成時期の見直しを求める声が上がっていた。
 国交省は今後、ダム貯水池周辺の地質調査を実施し、地滑り対策などが新たに必要かどうかを検討する予定。これにより追加費用が発生する可能性もあるが、同整備局は「事業全体のコスト縮減を図り、現事業費の範囲で収まるよう努力する」と説明している。