八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

群馬県による大同スラグに関する5月の記者発表と八ッ場ダム事業

 群馬県はさる5月13日、大同特殊鋼から排出され続けた有害な鉄鋼スラグ問題について、新たな記者発表を行いました。

 ★群馬県公式ホームページより
 http://www.pref.gunma.jp/houdou/e1700090.html
 【5月13日】大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する使用箇所の解明等の状況について(廃棄物・リサイクル課)

キャプチャ 群馬県は県警が(株)大同特殊鋼などの強制捜査を開始した昨年9月11日、廃棄物処理法に基づいた調査結果を公表し、大同スラグが使用された県内の公共工事を225ヶ所としましたが、上記の5月13日の発表によれば、新たに100か所の報告があり、これまでに判明した公共工事は325ヶ所に増加したとのことです。また今回の発表では、初めて民間工事48ヶ所での使用が判明したことも公表されています。

 八ッ場ダム事業では、これまでに国交省関東地方整備局による19工事、群馬県による4工事、長野原町による2工事で(株)大同特殊鋼のスラグが使用されたことがすでに公表されており、これらの工事は今回発表された右の大同スラグ使用箇所数を示す表に含まれています。

 しかし、八ッ場ダム事業においてスラグ使用が判明し、撤去などの対策が行われているのは、実際のスラグ使用箇所の一部に過ぎません。八ッ場ダム事業を進める国交省関東地方整備局は、代替地の盛り土材、JR吾妻線の擁壁の裏込め材など、対策を行うとなるとダム事業の支障となる工事については、疑問が投げかけられても現地調査を行わず、地元住民に対して問題ないとの説明を繰り返してきました。

 上毛新聞の報道によれば、群馬県(県土整備部)は、「(撤去など)必要な工事を終えたとしている」とのことですが、八ッ場ダム事業においてスラグ使用が確認された県施工の4工事については、分析試験を行わず、他の事業における県施工の工事箇所でフッ素などの値が環境基準以下であったことを理由に安全宣言を出してしまっています。

 現地では、今もスラグの塊が地表に見られ、主要道路の路面変状などが顕在化してきています。

写真=八ッ場ダム事業で付け替えられたJR吾妻線「川原湯温泉」新駅周辺の擁壁からは、雨が降ると茶褐色の水が流れ、コンクリートの壁面に跡がついている。擁壁の裏込め材には、鉄鋼スラグが使用されたとの情報があるが、国交省は現地調査を行っていない。2016年5月13日撮影 
スラグによる赤い水の跡DSCF7716

写真=八ッ場ダム予定地住民の移転代替地に建設された県道・林岩下線。路面にひびが入り、茶褐色の斑点、縁石の亀裂なども見られ、路盤材に使用された鉄鋼スラグの影響とみられる。2016年5月13日撮影
県道のひび割れと補修DSCF7750

写真=JR川原湯温泉駅の周囲には、新緑の季節になっても草一本生えない場所がある。除草剤を撒いたわけではなく、スラグの影響が疑われているが、何も知らずにお弁当を広げる観光客もいる。2016年5月23日撮影
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関連記事を転載します。

◆2016年5月13日 NHK
ー鉄鋼スラグ問題 新たに148か所の工事で使用ー

 大手鉄鋼メーカー、大同特殊鋼の渋川工場から出荷された鉄鋼スラグに有害物質が含まれていた問題で、新たに県内148か所の工事でこの工場の鉄鋼スラグを含む建設資材が使用されていたことが分かり、県などで環境への影響などを調べることにしています。
 大同特殊鋼の渋川工場が出荷した鉄鋼スラグは、八ッ場ダムの関連工事の現場などで、国の環境基準を超える有害物質を含むスラグが建設資材として使われていたことが明らかになっています。

 その後の国や県などの調査で新たに148か所の公共工事を含む工事現場で渋川工場の鉄鋼スラグを含む建設資材が使われていたことが分かりました。こうした鉄鋼スラグが使用された現場は合わせて373か所となり、県は関係機関や大同特殊鋼と協力して環境への影響を調べることにしています。

 大同特殊鋼の鉄鋼スラグを巡っては、渋川工場から出た有害物質を含む廃棄物の鉄鋼スラグの処分を許可を持たない業者に委託したとして、警察は会社と役員などを廃棄物処理法違反の疑いで書類送検しています。

 *鉄鋼スラグ問題を追及してきた市民オンブズマン群馬のブログに、NHKの放送画面と放送内容についてのコメントが載っています。

 
◆2016年5月14日 上毛新聞
ー大同特殊鋼スラグ使用 新たに148カ所判明 自治体 撤去や舗装で対応ー

 鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」の渋川工場(渋川市)から出た鉄鋼スラグが群馬県内の公共工事で使われ、一部で環境基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出された問題で、県は13日、公共と民間を合わせて計148カ所の工事で新たにスラグの使用が見つかったと発表した。使用された工事は373カ所になった。実施主体の自治体などは、スラグの撤去や、アスファルトで舗装するなど対応に追われている。

 新たに見つかったのは、関東地方整備局、関東森林管理局、北関東防衛局の国の三つの出先機関と、渋川、吉岡、中之条、長野原、昭和、みなかみの8市町村の計100カ所と、民間の計48カ所。
 県などはこれまでに、373カ所のうち259カ所で環境調査を実施した。101カ所のスラグから環境基準値を超える有害物質が検出され、このうち57カ所は周辺の土壌からも検出された。地下水汚染が確認されたところはなかった。渋川市の工事は42カ所で土壌汚染があった。
土壌汚染の箇所数が抜きんでて多い渋川市は、学校や市民体育館など5カ所でアスファルト舗装した。レジャー施設など3カ所で工事に向けて調査中という。

 前橋市は本年度から8カ所でスラグを撤去したり、舗装工事を行う予定だ。27カ所で工事が必要な関東地方整備局は16カ所の工事を終え、残りは順次進める。県と水資源機構は必要な工事を終えたとしている。

 この問題は2013年6月に明るみに出て、県は14年1月~2月、大同特殊鋼や関係者への立ち入り調査を実施し、15年9月に同社などを刑事告発した。県警は4月26日に廃棄物処理法違反の疑いで、同社を含む3社と、その役員ら5人を前橋地検に書類送検した。

◆2016年5月14日 毎日新聞群馬版
 http://mainichi.jp/articles/20160514/ddl/k10/040/063000c
ー大同特殊鋼 有害スラグ問題 新たに148カ所で使用 7町村など環境への影響調査 /群馬ー

 大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の渋川工場から出た鉄鋼スラグに環境基準を超える有害物質が含まれていた問題で、新たに県内148カ所の工事でスラグが使用されていたことが13日、分かった。県が3月末時点の集計を公表した。昨年9月までの発覚分と合わせ、使用箇所は計373カ所に上る。7町村などが環境への影響を調べている。

 昨年9月時点の集計では、国土交通省▽独立行政法人水資源機構▽県▽渋川市▽前橋市−−発注の公共工事だけが対象だったが、今回は別の市町村や民間工事にまで広げた。

 新たに見つかったのは、みなかみ町24カ所▽吉岡町、東吾妻町各17カ所−−など7町村による公共工事など。民間工事では、48カ所での使用が発覚した。宅地より駐車場での使用が多かった。

 新たな判明分のうち、スラグや土壌に基準を超えたフッ素が含まれているかなどの環境調査を終えたのは、公共工事が100カ所中29カ所、民間工事は48カ所中5カ所にとどまる。結果がまとまり次第、県や各町村が公表する予定で、町村は撤去や被覆などの対策工事も検討していく。

 県廃棄物・リサイクル課は「民間工事は、さらに多くの使用が発覚する可能性がある」とみる。【尾崎修二】

◆2015年5月14日 朝日新聞群馬版
ー基準超すスラグ、県内工事101カ所 県集計、土壌は計57カ所ー

 大同特殊鋼の渋川工場が出荷した鉄鋼スラグを巡る問題で県は13日、3月末現在の集計として、県内の公共工事325カ所、民間工事48カ所の計373カ所でスラグの使用が確認されたと発表した。このうち環境基準を超えるスラグは公共・民間工事の合計で101カ所、環境基準を超える土壌は計57カ所になった。

 廃棄物・リサイクル課によると、使用の判明場所のうち環境調査が終わっていない場所が100カ所以上残っており、環境基準を超えるスラグの使用場所が今後、増える可能性もある。
 新たにスラグの使用が判明した工事主体は、林野庁17カ所、防衛省1カ所、みなかみ町24カ所、東吾妻町17カ所など。民間でも渋川市近辺の駐車場や空き地などで使われていた。地下水への影響は認められず、県は「ただちに健康への影響はない」としている。

 ■榛東では六価クロム
 榛東村の公共工事で使われたスラグ砕石の一部から、環境基準を上回る六価クロムが検出されたことが関係者への取材で明らかになった。六価クロムは毒性が強く、村は対策を検討するとともに水質への影響などを調べている。
 4月末までに、キャンプ場などがある村営の「創造の森」の入り口付近から検出された。業者に委託して露出したスラグ砕石を分析した結果、溶出試験で六価クロムの濃度が1リットル当たり0・079ミリグラムと、基準(0・05ミリグラム以下)を超えていた。基準の2倍以上のフッ素も検出された。直下の土壌分析では六価クロムは基準以下だった。同森の入り口付近は何度も整地しており、施工業者やスラグの総量、出荷元などは調査中という。
 このほか、ソフトバンク系の「SBエナジー」が建設した大規模太陽光発電施設(メガソーラー)や村営のメガソーラーなど4カ所の分析結果も出た。敷地内や周辺のスラグ砕石や土壌から、最高で基準の7倍近いフッ素が検出された。六価クロムはいずれも基準以下か検出されなかった。

◆2016年5月14日 読売新聞群馬版
ースラグ使用 新たに148か所 8か所基準値超のフッ素検出ー

 鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」渋川工場から出た鉄鋼スラグを巡る問題で、県は13日、県内148か所で新たにスラグが使われていたことが判明し、このうち8か所で環境基準を上回るフッ素が検出されたと発表した。
 県廃棄物・リサイクル課によると、スラグの使用が判明したのは国と渋川市、みなかみ町など8市町村が発注した公共工事100か所と、同社が調査した民間工事分の48か所。今年3月までに公共工事分6か所、、民間工事分2か所で環境基準超のフッ素が検出された。まだ環境調査が行われていないところが計114か所あり、県は早急な調査実施を各自治体や同社に呼びかけている。
 県は昨年9月までに、県、前橋市、渋川市と国土交通省関東地方整備局、水資源機構の公共工事に関して調査を行い、225か所でスラグの使用が判明。このうち93か所で環境基準を超える有害物質が検出された。その後、県は県内全市町村と、スラグの出荷記録があった林野庁関東森林管理局、防衛省北関東防衛局の工事に対象を広げ、調査を行った。

◆2016年5月15日 東京新聞群馬版
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201605/CK2016051502000169.html
ー大同特殊鋼「スラグ」工事使用 環境基準超え8カ所ー

 鉄鋼メーカーの大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場(渋川市)から有害物質を含む鉄鋼スラグが出荷され、県内工事で使われていた問題で、県は十三日、新たに公共工事で百カ所、民間工事で四十八カ所で使われていたことが判明したと発表した。このうちフッ素などが環境基準を超えていたのは計八カ所だった。 (川田篤志)
 道路や駐車場の舗装工事で主に使われていた。いずれも周辺地下水への汚染は確認されておらず、県の担当者は「すぐに健康に影響を与えるような数値ではない」と説明した。
 公共工事で新たに環境基準を超えるスラグの使用が確認されたのは、渋川市と榛東村、中之条町。県によると、各自治体で大同側と協議し、処理や復旧工事などを進めていく。
 新たな判明分は、県が廃棄物処理法違反の疑いで同社を告発した昨年九月以降、県内市町村などが調査して今年三月末までに結果が出たもの。公共工事で使用が確認されたのは、これで三百二十五カ所となった。
 ただ民間工事も含めて、スラグの使用が確認されたものの環境調査が終了していない場所も多く、県の担当者は「今後も全容解明を進め、速やかに公表したい」と話した。
 この問題を巡り、県警は四月下旬、鉄鋼スラグを不正に処理したとして廃棄物処理法違反の疑いで大同など計三社と、各社の役員ら五人を書類送検している。