八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム予定地の国道通行止め、11/18と地元に周知

 車が多い縮 八ッ場ダム予定地には吾妻川沿いに国道145号線が走っています。(写真・右=吾妻渓谷上流部の水没予定地を走る国道、2014年10月25日撮影)
 国土交通省は国道を本体工事専用道として利用するため、国道を管理する群馬県に廃道化(一般供用廃止)を求めてきました。

 八ッ場ダム事業では、水没する国道の補償事業として、付替え国道が建設されました。しかし付替え国道は開通当初、落石事故が二度発生し、さらに最近になって山側斜面で地すべりの兆候が表れています。ダム事業では国道並みの県道も建設されていますが、工事は完了していません。
 水没予定地の川原湯、川原畑地区には、今も国道を生活道路として利用している住民が暮らしています。
 (通行止めを知らせるチラシに掲載された図↓)

キャプチャ通行止め位置図

 川原畑の町道拡幅縮 国交省八ッ場ダム工事事務所はこの春から、水没予定地住民らに対して、国道廃道化の了承と合わせて、代替地への早期移転を求めてきました。
 水没予定地には国道とは別に、付替え国道につながる町道があることや、現国道が本体工事専用ルートとなった場合、大型車両の通行により住民の利用は危険を伴うことなど理由を並べていますが、要はこの際、水没予定地から住民を早く追い出したいということでしょう。
(写真・右上=国道閉鎖の代替として、申し訳のように拡幅された水没予定地の町道)

 しかし、代替地が今も完成しておらず、地すべりの危険性や有害スラグの問題もあることから、水没予定地で暮らし続ける住民有志らは、国道廃道化は了承できないとして、8月8日、大澤正明・群馬県知事に「国道145号線存続に関する要望書」を提出し、「地域住民の生活道路である国道145号線の廃止並びに通行止めは地域住民の足を奪うだけでなく、心情をも踏みにじる行為であり、到底受け入れることは出来ない」と訴えました。
https://yamba-net.org/wp/?p=8424

 また、当会でも7月9日に「八ッ場ダム予定地の国道利用に関する要請書」を太田国交大臣と大澤県知事に提出しています。吾妻川沿いの国道は地元民の生活道路であると同時に、観光ルートとしても重要な道路です。
 https://yamba-net.org/wp/?p=8311

 群馬県議会では、角倉邦良議員(リベラル群馬)が6月と9月の産経土木委員会でこの問題を取り上げ、群馬県が国道使用継続を求める住民有志らの意見を丁寧に聞くこと、住民らが納得しない中で強引に廃道化の手続きを取らないことなどを求めてきました。
 しかし、群馬県は国交省と一体化しており、自治体の体をなしていません。地元の長野原町も同様です。

草むした歩道shuku 地元では9月から国交省と群馬県の主導により、国道の通行止めを住民が了承するよう誘導する会議が重ねられてきました。
 川原湯、川原畑両地区では、すでに四分の三の世帯が地区外に転出していますが、残る住民の多くはダム湖予定地周辺に造成中の代替地に移転しています。水没予定地の国道を利用することが殆どない代替地の住民にとって、国道廃止は生活に影響を与える問題ではありません。
(写真右上:水没予定地を走る国道、歩道に雑草が生い茂っている。長野原町川原畑地区)

 行政は水没予定地住民を「移転遅延者」と名づけ、ダム事業の妨げとしかみなしていません。「移転遅延者の反対」があることを認めつつ、地元は「了承」したということにして、10月20日に説明を一方的に終了しました。そして翌日には、国交省より群馬県に「国道145号の八ッ場ダム建設工事に伴う利用要請」が形式的にあり、群馬県道路管理課は国道廃道の手続きをとることとなりました。

 すでにこの時には、国交省と群馬県の連名で国道の通行止めを知らせるチラシが国交省八ッ場ダム工事事務所より各地区の役員に渡されており、10月28日、29日に全水没予定の川原湯、川原畑両地区全戸にチラシが配布されました。
 通行止めを予定されているのは、吾妻渓谷のダム本体工事予定地のある川原畑地区八ッ場、長野原町と東吾妻町の町境~林地区久森(くもり)の上湯原橋(道の駅「八ッ場ふるさと館」が橋のたもとにある不動大橋の下の橋、閉鎖されたダムPRのための”やんば館”斜め前)の4キロ近くになる区間です。

 下の図は、通行止めの個所などを示した図として、地元の会議で配布されたものです。
 国道が通行止めになるだけでなく、川原湯温泉街のアーケード入口や、栄橋、上湯原橋など、町道から国道への出口がすべて閉鎖され、さらに川原湯の打越代替地から吾妻渓谷へ下る道、付替え県道から上湯原橋へ下る道なども閉鎖されることがわかります。

キャプチャ町道閉鎖箇所

 国道の廃止手続きを担当する群馬県道路管理課によれば、国道は11月21日よりダム事業専用ルートとして国交省が「排他的に利用する」予定となっており、事前にダム事業者(国交省関東地方整備局)と道路管理者(群馬県)の連名で、関係者(長野原町、東吾妻町、各地区ダム対策委員会、関係県議、町議、警察、消防、観光協会等)に周知することになっています。

 水没予定地の町道は、ダム事業がなければ、車が通り易いように道幅が広げられたでしょうが、道幅がひどく狭い古い道が多く、ダムの工事のために急傾斜、急カーブ、行き止まりとなっている所もあります。
 冬場の雪で路面が凍結した時や、救急車や消防車が必要となった時、また日常生活や仕事に際して、水没予定地の住民はこれまで以上に不便を強いられることになります。
(写真・右上:川原湯地区の町道。)
通行止めの町道

【関連記事】「小渕元大臣のお膝元:八ッ場ダム未移転世帯の生活道路を国と県が通行止め」(Y!ニュース)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/masanoatsuko/20141030-00040391/