八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム交付金で吾妻渓谷に猿橋建設

 八ッ場ダム事業では、ダム予定地を抱える長野原町だけでなく、長野原町の下流の東吾妻町でも国道・県道の付け替え、JR線路の付け替えなどの工事が行われてきました。このため、48世帯の住民が移転するなど、最上流の吾妻渓谷を含む地域はダム事業の影響下にあります。八ッ場ダム事業では、これら「水源地域」の衰退に歯止めをかけ、地域振興を図るために長野原町とともに東吾妻町にも交付金が支払われています。

 地域振興を実現するための資金は、「水源地域対策特別措置法の事業」(997億円)として予算が組まれ、八ッ場ダム事業により水道用水などの供給を受ける利根川流域一都四県)がそれぞれの負担割合に応じて資金を出すことになっています。
 https://yamba-net.org/wp/problem/meisou/futan/

猿橋整備 ◆群馬県公式サイトより 
 http://www.pref.gunma.jp/07/h5210022.html
 八ッ場ダム建設事業に係わる水源地域整備計画事業について

 今朝の上毛新聞一面に、吾妻渓谷の東吾妻町側に、今夏にも猿橋が完成する見通しとの記事が掲載されています。猿橋の建設は「水源地域整備事業」の一つです。(写真右=吾妻渓谷の猿橋工事現場 2015年4月23日撮影)
 
 長野原町と東吾妻町の町境は、国の名勝・吾妻渓谷の中にあります。かつて渓谷内の国道を利用した人なら、町境にあった熊の茶屋の賑わいや道端に並んでいた熊の檻を覚えている方もいるでしょう。

 現在、渓谷の長野原町側では八ッ場ダムの本体工事が行われており、立ち入り禁止措置がとられています。これまでは渓谷の観光は長野原町の川原湯温泉が主体となって渓谷と温泉街との繋がりをアピールしていましたが、渓谷から徒歩圏内だったJR川原湯温泉駅も代替地へ移転し、川原湯温泉と吾妻渓谷は八ッ場ダム建設によって分断されてしまいました。代わって渓谷観光に力を入れることになったのが東吾妻町です。
 吾妻渓谷は国の名勝に指定されているため、渓谷内に橋を建設する場合でも文化庁の許可が必要とされ、計画から建設まで時間がかかっています。

吾妻渓谷内の「八ッ場ダム建設予定地」、「長野原町と東吾妻町の町境」、「猿橋建設予定地」の位置関係
(国交省・吾妻渓谷散策マップより作成)
キャプチャ地図

◆2016年1月27日 上毛新聞(紙面記事より転載)
 http://www.jomo-news.co.jp/ns/9714538579679235/news.html
ー吾妻渓谷に人道橋 東吾妻町 誘客へ遊歩道も 八ツ場交付金活用 ー

 群馬県東吾妻町は、国の名勝に指定されている吾妻渓谷に人道橋を建設する。江戸-大正期に実在した橋と同じ「猿橋」と名付けて、渓谷内を展望できる新たな見どころを作り、観光客を呼び込む狙い。今年夏の完成を目指す。

 橋の南側にある十二沢パーキングと橋を結ぶ遊歩道も整備し、利便性の向上にもつなげる。

 猿橋は八ッ場ダム建設予定地の下流約1.2キロ、渓谷パーキングの上流約600メートルの地点に設置予定で、白絹の滝をはじめ渓谷内の眺めを現在より楽しめるようになる。

 長さ43メートル、幅3.8メートルの鉄骨造りだが、景観に配慮し、欄干や橋桁などの表面部分に木材を使い、木造のような外観に仕上げる。橋台工事の一部が始まっており、2月中に橋桁の整備に取りかかる。

 町建設課によると、猿橋は1700年代から大正時代まで渓谷内に実在した橋で、現在の鹿飛橋の近くにあったとされる。同課は「史料を基に当時の建築構造を調べ、新橋の設計に活用した」としている。

 他にも橋南側の高台にある十二沢パーキングはアスファルト舗装し、同パーキングから橋に続く約220メートルの遊歩道を2017年春をめどに整備する。総事業費は約3億7千万円で、八ッ場ダム水源地域整備事業交付金を活用する。

 吾妻渓谷は現在、八ッ場ダム(長野原町)の本体工事の影響で渓谷パーキングより西側の車両通行が規制されている。ダムが完成する19年度までは徒歩による観光が中心となるため、町は7年ほど前から渓谷内に新たな見どころを創出しようと検討してきた。

—転載終わり—
(写真=猿橋工事現場 2015年4月23日撮影)
猿橋整備の看板.jpgs

◆2016年2月19日 毎日新聞(共同通信配信)
 http://mainichi.jp/articles/20160220/k00/00m/040/011000c
 -群馬・吾妻渓谷 橋建設で新眺望 八ッ場ダム建設受けー

 群馬県東吾妻町が新緑や紅葉の名所として知られる景勝地「吾妻渓谷」に、新たな橋「猿橋」の建設を進めている。渓谷の一部が水没する八ッ場ダム建設の影響で、周辺は車両通行を規制。観光への影響を懸念する町は散策できる橋で新たな眺望を提供し、見物客を呼び込みたい考えだ。ことし夏の完成を目指す。

 吾妻渓谷は長野県境から流れる吾妻川の上流に位置する。川幅が狭く、深い谷の両岸には木々が生い茂る。最も狭い名所「八丁暗がり」付近は「吾妻峡」として、国の名勝にも指定。歌人、若山牧水も愛し、絶賛する短歌を残している。

 建設の是非をめぐり議論になった八ッ場ダムは昨年から本体工事が始まり、2019年度に完成予定。ダム湖に沈むのは隣町の流域だが、絶景の一部が失われてしまうことに地元住民らが危機感を持っていた。

 そこで東吾妻町が着目したのが江戸から大正時代に実在した木橋「猿橋」の存在だ。計画ではダム建設予定地から約1キロ下流に、長さ43メートル、幅4メートル足らずの鉄骨造りの橋を建設。同じ名前で、橋桁や欄干を木材で覆い木造風とすることで、レトロな印象を強調する。白絹の滝なども、より近くでみられるという。

 周辺の遊歩道などもあわせて整備する。東吾妻町の担当者は「当時の資料を調べて、設計を進めてきた。多くの観光客に訪れてもらいたい」と期待している。(共同)