八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム本体工事・基礎掘削に関する記事

 今朝の上毛新聞社会面に、八ッ場ダム本体工事に関する記事がカラー写真と共に掲載されています。
 八ッ場ダム事業では、ダム本体工事の最初の段階である「基礎掘削」が今年1月22日に開始されたと発表されました。開始当日は、吾妻川の左岸にある川原畑地区の作業ヤードにおいて、発破作業の火薬で白い煙が上がる様子がテレビで放映されました。

◆2015年6月9日 上毛新聞社会面
http://www.jomo-news.co.jp/ns/2814337783063139/news.html
ー八ツ場「掘削は順調」  ダム「頂部」発破ー

 本体工事の基礎掘削が進む八ツ場ダム(長野原町)について、国土交通省八ツ場ダム工事事務所は8日、ダム左岸の最上部にあたる「頂部」の発破作業を完了した。今月末にもダム本体が岩盤に接する「堤敷(ていじき)」部分の発破に着手する。右岸側の基礎掘削も5月に始まり、工事を担当する共同企業体(JV)は「掘削は順調。このままなら予定通り来年6月にコンクリート打設に入る」と強調した。
—転載終わり—
 
 ネット記事は上記のリード文のみです。
 日本ダム協会の用語事典によれば、基礎掘削とは「ダムの基礎地盤を露出するため、河床や堤体側面を掘削し、弱い岩盤やゴミ・泥などを取りのぞく」こととされます。
 http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/JitenKM.cgi?id=302

 八ッ場ダム事業では基礎掘削が1月に始まったことになっていますが、掘削は上記の記事にもあるように、河床や堤体側面ではなく、両岸の頂部のみで行われてきました。八ッ場ダム事業では昨年度、本体工事の予算が計上されましたが、これまでの発破作業は本体工事というより、本体工事の準備工事(左岸作業ヤードの掘削工事)といえそうです。

 川の左岸、右岸という呼び名は、上流から見た時の位置です。名勝・吾妻渓谷のダム本体工事現場の位置図です。↓
キャプチャ

 今朝の上毛新聞の紙面では、ネットにあるリード文と共に、以下の本文があり、ネット記事に掲載されている写真の説明が載っています。
 写真の番号(①,②、③)は、ネット記事に掲載されている上から順番になっています。上記のダム本体工事現場位置図の「①左岸作業ヤード」が写真①の場所です。写真②は、ダム本体工事現場の位置図で②とある吾妻川の河床だった場所から上流側を見た写真です。このページの一番下に、同じ場所を吾妻渓谷の小蓬莱の頂上(見晴らし台)から撮った写真を載せましたので、ご覧になってみて下さい。

—転載始め—

写真① 八ッ場ダム左岸で行われている工事(手前)。左端に見えるのが右岸

写真① 八ッ場ダム左岸で行われている工事(手前)。左端に見えるのが右岸

 ダム建設地で同日、同事務所とJVが上毛新聞の取材に応じた。工事現場が報道機関に公開されるのは、基礎掘削が始まった1月下旬以来。
 左岸頂部ののり面から現場を望む(写真①)と、頂部(手前)では発破した岩盤を重機がさらに細かく砕き、河床に落としていた。燃料などを運ぶケーブルの奥(左奥)に見える右岸でも工事が進む。同日は計700キロの爆薬を使った。

写真② ダム底部から見た左岸と右岸。中央が吾妻川で、左岸の工事現場から出た土砂がたまっている。

写真② ダム底部から見た左岸と右岸。中央が吾妻川で、左岸の工事現場から出た土砂がたまっている。

 ダムの底部から両岸を見渡す(写真②)と、頂部で砕かれた岩盤が続々と落ちてきた。本年度内にも河床部分の発破作業に入る。来年5月までかかる本体工事の基礎掘削で、計約60万立方メートルの土砂が搬出される予定だ。

大柏木トンネルの内部ではベルトコンベヤーの設置が進む

大柏木トンネルの内部ではベルトコンベヤーの設置が進む

 ダム本体のコンクリートに必要な骨材は、9キロ離れた東吾妻町との境にあるプラントで製造している。運搬ルートとなる大柏木トンネル(3キロ、写真③)ではベルトコンベヤーの設置が着々と進む。トンネルは今は工事関係者しか通れない。
 同事務所は本年度、ダムの詳細なデザインも決めていく方針。
—転載終わり—

 上記の記事によれば、「今月末にもダム本体が岩盤に接する堤敷部の部分に着手する」とのことですので、本格的な基礎掘削工事(本体工事の最初の段階)がいよいよ始まることになりますが、基礎掘削で出る「計約60万立方メートルの土砂」の搬出ルートはどうするのでしょうか。
 昨年11月、水没予定地住民の反対を無視して国道を廃線化した際、国交省と群馬県は、基礎掘削で出る土砂の搬出ルートとして国道を利用しなければならないので、1月の本体工事に間に合うよう、国道を廃線化し、拡幅工事を行う必要があると説明しました。実際、地元で配布された以下の資料では、廃線になった国道が赤い点線で示され、右上の凡例で「本体基礎掘削土運搬・・→25トンダンプトラック」と説明されています。しかし、廃線になった国道の拡幅工事はまだ行われていません。昨年11月の説明は、住民に圧力を加えるための偽りであったのか、タイムスケジュールが予定より遅れているのでしょうか。

 キャプチャルート図
 
 記事中の②の場所を、下流側の小蓬莱の頂上(見晴らし台)から撮った写真です。下流側から見ると川の左右岸が逆になりますので、右手の山の上に写真①の左岸作業ヤードがあり、ここで「頂部」の発破作業が行われてきました。
 ダム本体工事のために吾妻川の水は仮締切工事によって仮排水トンネルを流れており、河床は干し上げられ、両岸の頂部の発破作業によって落ちてきた土砂がたまっています。吾妻川の左岸側には、川と並行して国道と吾妻線が走っていたのですが、土砂に埋もれて見る影もありません。
 吾妻渓谷の下流側の遊歩道を辿ると、この見晴らし台へ登ってダム本体工事現場を見下ろすことができます。

見晴らし台より (2)s