八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

吾妻渓谷無惨

 名勝・吾妻渓谷では、八ッ場ダムの本体工事が今年1月から始まりました。

キャプチャ ダムサイト予定地は吾妻渓谷の上流部にあります。昨年12月より、吾妻渓谷は下流部も含めて吾妻川の左岸を走る国道、右岸の山中にある遊歩道いずれも閉鎖されていましたが、4月3日より、渓谷遊歩道の冬期閉鎖が終了して開放されたのと同時に、国道の東吾妻町区間も歩行者のみ通行が可能となりました。
(長野原町に属する国道の上流区間は、ダム本体工事のため、昨年11月18日に廃線となりました。)

キャプチャ.PNG2 長野原町と東吾妻町の公式サイトに説明資料が掲載されています。(図をクリックすると拡大します。)
「現国道145号通⾏規制⼀部解除のお知らせ」(右上)
「吾妻渓谷遊歩道・通行規制解除のお知らせ」(右下)

山ツツジ.jpgt 吾妻渓谷では、新緑の美しい季節を迎えています。
 初夏のような陽気のせいか、紫色のミツバツツジからオレンジ色のヤマツツジへ、季節の移ろいが早く感じられます。
 鳥たちのさえずりも賑やかです。国道から渓谷を見下ろすと、緑の葉に溶け込むようにしてオオルリが枝に止まっているのが見えました。(写真右下)

オオルリ.jpgトリミング 渓谷を散策するには、最下流部にある渓谷遊歩道入口(十二沢パーキング脇)からスタートするか、吾妻川沿いに国道を上流に向かって歩き、途中、鹿飛橋に降りて遊歩道に入ります。
 ダム本体工事が始まるまでは、渓谷上流端にある八ッ場大橋や滝見橋で対岸に渡って周遊できたのですが、ダム本体工事によってこれらの橋は閉鎖されてしまいました。下流部は相変わらずみごとな新緑に彩られているものの、観光客はまばらです。

猿橋整備の看板.jpgs 現在、鹿飛橋の下流に新たに猿橋という名の橋を建設中です。猿橋の整備により、渓谷の周遊が今より便利になり観光に資すると、下流の東吾妻町では期待されています。
●「猿橋整備」の工事看板
 工事場所 吾妻郡東吾妻町大字松谷地内
 請負金額 2,030万円
 工事期間 平成27年2月24日~平成27年7月31日

チゴユリ.jpgs これからの季節、渓谷左岸の国道沿いでよく見かけるのが卯の花(ウツギ)と山吹です。藤の花も間もなく開花します。
 吾妻渓谷の右岸側につくられている遊歩道は、アップダウンの激しい山道です。渓谷左岸の山中には、急峻な道陸神峠を越える昔道がところどころ残っていますが、昔の峠道は現在の遊歩道よりさらに険しい山道でした。
 林床では冬の眠りからさめたヒトリシズカやチゴユリ(写真右)が可憐な姿を見せています。

発破の看板.jpgt 遊歩道の突き当たりは、小蓬莱の山頂にある見晴らし台です。見晴らし台の手前には、八ッ場ダム本体工事の発破作業を知らせる看板が設置されています。

 絶景を眺められた標高555メートルの見晴らし台の直下に、八ッ場ダムの本体工事現場があります。吾妻川の河床が干上がり、樹木が伐採され、両岸の山頂で掘削作業が進められています。川筋の付き当たりに見えるのは、吾妻川の流れを遮っている仮締切の小ダムです。
 右手の山が発破作業で崩され、国道や鉄道の走っていたところに土砂が落ちてたまっているのが見えます。

小蓬莱からダムサイト予定地の眺望 (2).jpgs

 以前は、見晴らし台の下からさらに遊歩道を上流に遡り、滝見橋や川原湯温泉駅まで行かれたのですが、上流に向かう遊歩道は大きな看板で締め切られています。(写真下)見晴らし台から撮影した写真の左側の山の斜面に昨秋まで遊歩道がありました。この先の遊歩道は、周囲の自然林も含め、八ッ場ダムの工事で消されています。
 左側の緑色の遮蔽物は、代替地の川原湯温泉に向かう山道を塞いでいます。この山道は、川原湯温泉と吾妻渓谷を繋ぐルートとして整備されましたが、いつ開放されるかは不明です。
渓谷遊歩道立ち入り禁止の看板.jpgt

ゼネコン事務所と山木館.jpgt 川原湯温泉の代替地には、本体工事を受注したゼネコンのプレハブ事務所が建っています。工事業者は地元民と親睦をはかるため、川原湯神社の春祭りに参加したり、バーベキュー大会を開催するなどしているとのことです。最盛期には400人にもなるといわれる工事業者は、これからしばらく川原湯地区の主役となるのでしょうが、それもダム本体工事が終わるまでの数年のことです。

 発破作業が行われている吾妻渓谷左岸の作業ヤード前には、本体工事の看板が新たに掲げられました。
 右側の6枚の工事現場の写真の中に、「右岸上部掘削・造成工事」の写真があります。この工事は本体準備工事としてすでに昨年中に完了の予定でしたが、入札不調により工事が行えず、結局、本体工事として行われることになったようです。
本体工事の看板.jpgt